論理と集合1
「集合」は数学の共通語!集合の基礎知識

論理と集合
論理と集合

数学における集合はざっくり言えば「モノの集まり」のことで,数学では最も基本的な概念のひとつです.

とはいえ,高校数学の中では集合の重要さが分かりにくいのも事実で,そのためあまり目立たない分野かもしれません.

しかし,高校数学において集合は論理を扱うために用いられることが多く,集合の考え方を用いて

  • 対偶を用いた証明
  • 背理法

といった証明手法を学びます(詳しくはのちの記事で説明しています).

この記事では

  • 集合とは何か?
  • 集合の表し方
  • 2つの集合の関係

を順に説明します.

集合とは何か?

高校数学において,集合は以下のように定義します.

数学的な対象の集まりを集合という.

たとえば,

  • $3$以上$10$以下の整数全部の集合

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  • $6$の正の約数全部の集合

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  • 正多角形全部の集合

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など集合には様々なものが考えられます.

集合の表し方

例えば,集合$A$を「6の正の約数全部の集合」とするとき,$A$は

    \begin{align*}1,\ 2,\ 3,\ 6\end{align*}

からできていることになります.

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このような集合を構成する対象を次のようにいいます.

集合を構成する1つ1つの対象を要素(またはげん)という.

また,集合$A$が要素$a$をもつとき,$a$は$A$に属するといい$a\in A$と表す.また,$b$が$A$に属さないときは$b\not\in A$と表す.

つまり,$6$の正の約数の集合$A$の要素は$1$, $2$, $3$, $6$で,例えば$1\in A$や$3\in A$と表すわけですね.

さて,集合は次の2つの表し方があります.

集合の表し方1

ひとつめは単に集合に属する要素を書き並べて表す方法で,例えば$6$の正の約数の集合$A$は

    \begin{align*}A=\{1,2,3,6\}\end{align*}

と表します.つまり,中括弧$\{\qquad\}$で要素を括ることで表します.

集合の表し方2

ふたつめは集合に属する要素の性質を書いて表す方法で,例えば$6$の正の約数の集合$A$は

$\{n|n$は6の正の約数$\}$

と表します.もう少し詳しく説明すると

  1. 前の“$\{n|$”の部分で「この集合は$n$全部の集合である」と宣言
  2. 後ろの“|$n$は6の正の約数$\}$”の部分で「$n$は6の正の約数である」と宣言

する表し方です.併せて「6の正の約数$n$全部の集合である」ということになります

「集合の表し方1」のように要素を書き並べて表す方法を外延的記法といい,「集合の表し方1」のように要素の性質で集合を表す方法を内包的記法といいます(が,どちらも覚えなくても構いません).

表し方の具体例

具体的に集合を表してみましょう.

次のそれぞれの集合を,要素を並べて表す方法と要素の性質で表す方法の2通りで表せ.

  1. 3以上10以下の整数全部の集合$A$
  2. 100以下の負でない偶数全部の集合$B$

(1) 3以上10以下の整数全部の集合$A$は

  • $A=\{3,4,5,6,7,8,9,10\}$
  • $A=\{n|n$は正の整数かつ$3\leqq n\leqq10\}$

と表せる.

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(2) 100以下の負でない偶数全部の集合$B$は

  • $B=\{0,2,4,6,\dots,98,100\}$
  • $B=\{n|n\leqq100$かつ$n$は負でない偶数$\}$

と表せる.

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性質を用いて表す方法(内包的記法)による表し方はさまざま考えられます.例えば,(2)の集合$B$は$B=\{n|0\leqq n\leqq100$かつ$n$は偶数$\}$と表素こともできます.

では,次の問題はどうでしょうか?

$-2$以上1未満の実数全部の集合$I$を,要素の性質で表す方法で表せ.

$-2$以上1以下の実数全部の集合$I$は

    \begin{align*}I=\{x|-2\leqq n<1\}\end{align*}

と表せる.

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この問題の集合$I$は数直線上にべったりと張り付いている集合なので,要素を書き並べる方法で表すのは難しいです.

要素を書き並べて表す方法はどのような要素が属しているか分かり易いのですが,このように書き表すのが難しいことも少なくありません.

このようなときのために,要素の性質で表す方法にも慣れておきましょう.

2つの集合の関係

最後に,2つの集合の関係について説明します.

部分集合

集合が2つあるとき,一方が他方にすっぽり含まれている場合があります.このようなときは次のようにいいます.

集合$A$の要素が全て集合$B$の要素でもあるとき,$A$を$B$の部分集合(または$B$は$A$を含む)といい$A\subset B$と表す.また,$A$が$B$の部分集合でないとき,$A\not\subset B$と書く.

たとえば,

  • $A=\{\dots,-12,-6,0,6,12,\dots\}$ ($6$の倍数の集合)
  • $B=\{\dots,-6,-3,0,3,6,\dots\}$ ($3$の倍数の集合)

とするとき,$A$の要素は全てBの要素なので$A\subset B$となります.

集合$A$の要素が全て集合$A$の要素ですから,どんな集合$A$に対しても$A\subset A$はいつでも成り立つことに注意しましょう.

つまり,記号$\subset$はすっぽり含まれていることを意味するような形をしていますが,同じ集合であっても$\subset$を用いるわけですね.

集合の相等

このことに注意して,次のように「集合が等しい」ということを定義します.

集合$A$, $B$が$A\subset B$かつ$B\subset A$を満たすとき,$A$, $B$は等しいといい$A=B$と表す.

例えば,次のようになりますね.

集合$A$, $B$を

  • $A=\{n|n$は2の倍数かつ3の倍数$\}$
  • $B=\{n|n$は6の倍数$\}$

で定めるとき,$A=B$であることを示せ.

きちんと定義に従って,$A\subset B$かつ$B\subset A$を示せば良いですね.

[1]$A\subset B$を示す.このためには,$A$の要素が全て$B$に属していることを示せばよい.

$A$の任意の要素$n$は2の倍数だから,$n=2k$ ($k$は整数)と表すことができる.

ここで,もし$k$が3の倍数でなければ$n$は3の倍数になり得ないから,$k$は3の倍数である.よって,$k=3\ell$($\ell$は整数)と表すことができる.

これより$n=6\ell$となり$n$は6の倍数だから$B$に属する.これで$A\subset B$が示された.

[2]$B\subset A$を示す.このためには,$B$の要素が全て$A$に属していることを示せばよい.

$B$の任意の要素$n$は6の倍数だから,$n=6k$ ($k$は整数)と表すことができる.

よって,$n=2\times 3k$だから$n$は2の倍数であり,$n=3\times 2k$だから$n$は3の倍数である.

これより$n$は$A$に属するから,これで$A\subset B$が示された.

[1][2]より$A=B$が従う.

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