漸化式の基本1|漸化式とは?漸化式の考え方を例から解説!

数列

「漸化式」は数列の知識をある程度前提とする内容のため,数列が苦手な人にとってはとても辛い分野かも知れません.

しかし,「数列」とそれに続く「漸化式」は数学のあらゆる場面に登場するため,必ずモノにしたい分野です.

高校数学で出題される「漸化式」は「解く」ことが出来るものが多く,次の記事で扱う

  • 等差数列の漸化式
  • 等比数列の漸化式

を中心とした「解ける漸化式」は空気を吸うように解けるようになっていたいところです.

とはいっても,「公式を使えるだけで理解していない」というのではよくありませんから,まずはこの記事で「漸化式」の考え方をしっかり理解してください.

漸化式

たとえば,数列$\{a_n\}$は次を満たすとします.

  1. $a_1=1$
  2. 任意の正整数$n$に対して,$a_{n+1}=a_{n}+2$

2に関して,関係式$a_{n+1}=a_{n}+2$を$n=1,2,3,\dots$でひとつひとつ実際に書き下すと,

  • $n=1$のとき$a_2=a_1+2$
  • $n=2$のとき$a_3=a_2+2$
  • $n=3$のとき$a_4=a_3+2$
  • ……

となりますね.

いま,$a_1=1$だったので,関係式$a_{n+1}=a_n+2$を使うことで$a_2$, $a_3$,……が順に決まっていくことが分かります.実際に計算すると

  • $a_2=a_1+2=1+2=3$
  • $a_3=a_2+2=3+2=5$
  • $a_4=a_3+2=5+2=7$
  • ……

となりますね.

数列$\{a_{n}\}$に関する関係式$a_{n+1}=a_{n}+2$のように,順に$a_{n}$の値が決まっていくようないくつかの項の間に成り立つ関係式を漸化式ぜんかしきといいます.

「漸化式$a_{n+1}=a_{n}+2$」と書かれるとあたかも,1つだけの式のように思えてしまうかも知れませんが,実際には$n=1,2,3,\dots$などいくつもの$n$で成り立つので,

  • $n=1$のとき$a_2=a_1+2$
  • $n=2$のとき$a_3=a_2+2$
  • $n=3$のとき$a_4=a_3+2$
  • ……

をまとめて書くと漸化式$a_{n+1}=a_{n}+2$になる,と考えてください.

このように,漸化式はいくつもの式をまとめて書いたものだという意識は是非持っておいてください.

数列$\{a_n\}$の項の間に成り立つ関係式を漸化式という.

漸化式を解く

一般には漸化式から数列の一般項$a_n$を求めることを漸化式を解くといいます.

以下で,「解ける」漸化式を考えましょう.

次の漸化式を解け.

  1. $a_1=1$, $a_{n+1}=a_{n}+2$
  2. $b_1=2$, $b_{n+1}=3b_{n}$
  3. $c_1=4$, $c_{n+1}={c_{n}}^3$

例1

上で考えた漸化式$a_1=1$, $a_{n+1}=a_{n}+2$で,$n=1,2,3$の場合を考えると,

    \begin{align*} &a_2=a_{1}+2=1+2=3, \\&a_3=a_{2}+2=3+2=5, \\&a_4=a_{3}+2=5+2=7 \end{align*}

となります.

このことから,漸化式$a_1=1$, $a_{n+1}=a_{n}+2$で与えられる数列$\{a_n\}$は初項1,公差2の等差数列$a_n=2n-1$であろうと予想できます.

実際,漸化式$a_{n+1}=a_{n}+2$は

    \begin{align*} a_{n+1}-a_{n}=2 \end{align*}

と変形でき,$n$によらず常に$a_{n+1}$と$a_{n}$の差は2であることが分かり,これは数列$\{a_n\}$が公差2の等差数列であることに他なりませんね.

よって,数列$\{a_n\}$は初項1,公差2の等差数列なので,

    \begin{align*} a_n=2(n-1)+1=2n-1 \end{align*}

が得られます.

例2

漸化式$b_1=2$, $b_{n+1}=3b_{n}$で,$n=1,2,3$の場合を考えると,

    \begin{align*} &b_2=3b_{1}=3\times2=6, \\&b_3=3b_{2}=3^{2}\times2=18, \\&b_4=3b_{3}=3^{3}\times2=54 \end{align*}

となります.

このことから,漸化式$b_1=2$, $b_{n+1}=3b_{n}$で与えられる数列$\{b_n\}$は初項2,公差3の等差数列$b_n=2\times3^{n-1}$であろうと予想できます.

実際,漸化式$b_{n+1}=3b_{n}$より,$n$によらず常に$b_{n+1}$は$b_n$の3倍で,これは数列$\{b_n\}$が公比3の等比数列であることに他なりませんね.

よって,数列$\{b_n\}$は初項2,公比3の等比数列なので,

    \begin{align*} b_n=2\times3^{n-1} \end{align*}

が得られます.

例3

漸化式$c_1=4$, $c_{n+1}={c_{n}}^3$で,$n=1,2,3$の場合を考えると,

    \begin{align*} &c_2={c_1}^3=4^{3}, \\&c_3={c_2}^3=(4^3)^3=4^{9}, \\&c_4={c_3}^3=(4^9)^3=4^{27} \end{align*}

となります.

このことから,漸化式$c_1=4$, $c_{n+1}={c_{n}}^3$で与えられる数列$\{c_n\}$の一般項は$c_n=4^{(3^{n-1})}$であろうと予想できます.

実際,漸化式$c_{n+1}={c_{n}}^2$の両辺で$\log_4$をとると,

    \begin{align*} \log_{4}c_{n+1}=3\log_{4}c_{n} \end{align*}

となるので,$d_n=\log_{2}c_{n}$とおくと,$d_{n+1}=3d_{n}$となります.また,

    \begin{align*} d_1=log_{4}c_1=log_{4}4=1 \end{align*}

なので,数列$\{d_n\}$は$d_1=1$, $d_{n+1}=3d_{n}$を満たします.

これは例2と同様に考えて,$\{d_n\}$の一般項は$d_n=3^{n-1}$と分かります.

$d_n=\log_{4}c_{n}$から$c_n=4^{d_{n}}$なので,漸化式$c_1=4$, $c_{n+1}={c_{n}}^3$の一般項は

    \begin{align*} c_n=4^{3^{n-1}}=4^{(3^{n-1})} \end{align*}

と分かります.

補足

この記事で見た漸化式は$a_n$, $a_{n+1}$に関する関係式でしたが,例えば$a_{n+2}=2a_{n+1}-a_{n}$のような$a_n$, $a_{n+1}$, $a_{n+2}$に関する関係式も漸化式といいます.

漸化式は色々考えることができ,漸化式が与えられてもそれが必ずしも解けるとは限りません.

例えば,$a_{n+1}={a_{n}}^2+\sqrt{a_n}+5$は漸化式ですが,この漸化式を解くのはかなり困難です.

一方,解くことのできる漸化式にはいくつかパターンがあり,それらをパターンごとに解けるようにしておくことは大切です.

次の記事では,いま見た問題で現れました等差数列,等比数列の漸化式について詳しく説明します.

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