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無限級数4|1=0.9999……は正しい?

前の記事「無限級数3 ―無限等比級数の収束条件―」の続きです.

この記事はコラム的な内容で,"0.999\dots"と小数第1位以下で無限に9が続く数と"1"が等しいのかどうかを考えてみます.

初めて聞いた人は「いやいや,どう見ても等しくないやろ」「等しそう」「うーむ,分からぬ……」と様々な考えが浮かぶと思います.

「無限級数」の知識がなければ"0.999\dots"の"\dots"の意味が曖昧なので手放しで正しいとは言い難いのですが,"1=0.999\dots"は実は正しいです.

「マジでか……」と衝撃を受ける人もいるかもしれませんが,この記事を読んで「なるほど」と思ってもらえれば嬉しく思います.

なお,途中からは無限級数の話に移っていくのですが,それまでは算数の知識さえあれば読めるので深く考えずにサクサク読んでください.

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怪しい説明

まずは怪しい説明ですが,「成り立ちそう」ということを実感してもらうために1つ書いてみます.

[怪しい説明]

例えば,1-0.9=0.11-0.99=0.011-0.999=0.001である.同様に,0.999\dots9と小数第n位まで9が続いたとすると,この時の1からの差は

1-0.999\dots9=0.00\dots01

0.00\dots01は小数第n位に初めて1が現れる.

いま,0.999\dots9が無限に続くので,1-0.999\dots0が無限に続く,つまり0となる.よって,1=0.999\dotsである.

[怪しい説明終]

おお!怪しい!ものすごく怪しい!

ですが,1=0.999\dotsが正しいと主張する気持ちは分かって頂けたのではないかと思います.

それっぽい説明

次に,「それっぽいけど,なんとなく怪しい説明」を2つします.

それっぽい説明1

[それっぽい説明]

\dfrac{1}{3}=0.333\dotsである.

左辺を3倍すると3\times\dfrac{1}{3}=1であり,右辺を3倍すると3\times0.333\dots=0.999\dotsである.

よって,1=0.999\dotsを得る.

[それっぽい説明終]

ううむ,それっぽい.しかし,煙に巻かれたような気もします.

とくに,3\times0.333\dots=0.999\dotsが怪しい.無限小数に3をかけているのが少し気持ち悪い.

そこまで考えると\dfrac{1}{3}=0.333\dotsが本当に正しいのかも,ちゃんと証明しなければならない気持ちにもなってきます.

同じくつぎの説明も「それっぽい」説明ですが,やはり少し気持ち悪いです.

それっぽい説明2

[それっぽい説明]

x=0.999\dotsとおく.

両辺を10倍すると10x=9.999\dotsである.これからx=0.999\dotsを引くと,

\begin{matrix}&10x&=&9.999\dots\\-)&x&=&0.999\dots\\\hline&10x-x&=&9\end{matrix}

と分かる.

こうして得られた方程式10x-x=9を解くとx=1となる.もとよりx=0.999\dotsだったので,1=0.999\dotsを得る.

[それっぽい説明終]

ううむ,これもそれっぽい.しかし,やはり煙に巻かれた感があります.

その原因はやはり無限小数を10倍していたり,無限小数から無限小数を引いているあたりでしょう.

しかし,1つ目の証明よりいくぶん数学的になった気はします.

無限級数による説明

さて,ここからがやっと数学の話になってきます.上で話をしていて,"\dots"が何やら曲者で

「そもそも"0.999\dots"の"\dots"ってなんやねん!」

という気になってきたと思います.なってきたことにしてください.

では,数学的に"0.999\dots"がどういうことなのかを説明します.

ここで,一番最初にした「怪しい説明」が生きてきます.

たとえば,0.1=10^{-1}0.01=10^{-2}0.001=10^{-3}のように,0.000\dots01n個並ぶものは10^{-n}と表せることを思い出してください.

これを使って0.90.990.999を各桁について数を分解すると,

0.9=9\times10^{-1}
0.99=9\times10^{-1}+9\times10^{-2}
0.999=9\times10^{-1}+9\times10^{-2}+9\times10^{-3}

となります.これは

0.9=\displaystyle\sum_{k=1}^{1}9\times10^{-k}
0.99=\displaystyle\sum_{k=1}^{2}9\times10^{-k}
0.999=\displaystyle\sum_{k=1}^{3}9\times10^{-k}

と表せますね.

さて,ここで一般項がa_n=9\times10^{-n}の等比数列\{a_n\}を考えます.すると,この等比数列の無限級数の部分和は

\displaystyle\sum_{k=1}^{n}9\times10^{-k}=0.999\dots9

です.どうでしょう,見えてきましたか?

これをもとにすると,0.999\dotsは無限級数\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}9\times10^{-k}に等しそうだと分かります.

無限小数とは

はい,実はいま私はおかしいことを言いました.

上の書き方だと「0.999\dotsがあって,それが\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}9\times10^{-k}に等しい」という書き方です.

ですが,実は話は全く逆で,「0.999\dots\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}9\times10^{-k}で定義する」のです!

小学生で先生に「0.333\dotsっていうずっと続く小数は無限小数って言うんやで!」と習いますが,本当は数IIIで無限級数を習って初めて厳密に定義できるのです.

さて,0.999\dots=\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}9\times10^{-k}で定義したわけですが,右辺は無限等比級数ですから計算ができますね.

なお,無限等比級数については「無限級数の基本3 ―無限等比級数―」で説明していますから,参考にして下さい.

いま,数列\{a_n\}は一般項がa_n=9\times10^{-n}の等比数列で,この初項はa_1=0.9で公比r=10^{-1}-1<r<1をみたすので,無限等比級数\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}9\times10^{-k}

\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}9\times10^{-k}=\dfrac{0.9}{1-10^{-1}}=\dfrac{0.9}{1-0.1}=\dfrac{0.9}{0.9}=1

と計算されます!

おお!たしかに1=0.999\dotsとなりました!

どうでしょうか.いままで何気なく使ってきた「無限小数」が実は「無限級数」で定義されるということが理解できたでしょうか?

この記事は「無限級数は極限である」というイメージをもっと深く掴んでもらう目的で書きました.無限小数という昔からいくらか触れてきたものの中の数学の考え方に触れたような気分になって頂けたなら幸いです.

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