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運動の基本4|等加速度直線運動の3つの公式の具体例

前の記事「運動の基本3 ―等加速度直線運動の3つの公式―」の続きです.

等加速度直線運動に関する3つの重要な公式v=v_0+atx=v_0t+\frac{1}{2}at^2v^2-{v_0}^2=2axについて書きました.

等加速度直線運動をする最も基本的な例は「自由落下」,「鉛直投げ上げ」,「鉛直投げ下ろし」です.この記事ではこれら「自由落下」,「鉛直投げ上げ」,「鉛直投げ下ろし」についての考えてみます.

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重力加速度

まず,「重力加速度」という概念を説明をします.その説明のために,まず問題を出します.

1kgの金属Aと10kgの金属Bをスカイツリーの頂上から同じ高さで手を離し,自由落下させる.このとき次の1,2,3のうち正しいものを選べ.ただし,空気抵抗は無視する.

  1. 金属Aが先に地面に到達する
  2. 金属Bが先に地面に到達する
  3. 金属Aと金属Bが同時に地面に到達する

さて,どうでしょうか.

軽い方が先に落ちる1はなんとなく無さそうで,2が直感に合っているという人が多いかもしれません.

それでは答えですが,答えは3です.

「ええー!!」という声が聞こえてきそうです.確かに3は直感に外れるかもしれませんが,実は3が正しいのです.

2が直感に合っているのは私たちが空気抵抗のある状態で生活しているからでしょう.紙を落とせばふわりふわりと落ちます.しかし,空気抵抗がない真空の世界では,紙はふわりふわりと落ちることなく,金属と同じ速さですとんと落ちるのです.

さて,高校物理では空気抵抗を考えることはあまりありません.このとき,紙も金属球も同じように落下します.

そして,実はこの運動が「等加速度直線運動」なのです.

さて,どの物体を落下させても同じように「等加速度直線運動」をするということは,どの物体にも同じだけの加速度がかかっている,つまり物体の落下に固有の「加速度」があるはずです.このときの「加速度」を「重力加速度」と呼びます.

「重力加速度」はおよそ9.8\mathrm{m/s^2}で,記号はgを用いることが多いです.

鉛直

「鉛直」という言葉の説明をします.

まず,考えて欲しいのは「下」とは何でしょうか?日本にいる私が地面を指さして言う「下」と,ブラジルにいるある人が地面を指さして言う「下」は同じ向きでしょうか?

答えはNOですね.地球が丸いことを考えると,私の指差す「下向き」とブラジルにいる人の指差す「下向き」は違う向きです.私値たちがいる宇宙空間に「下向き」という向きが決まっているわけではありません.

では,「下向き」というの何でしょうか?答えは「その場で物体が受ける重力の向き」です.もう少し直観的に言うと,「物体が落ちる方向」が「下向き」です.

この「その場で物体が受ける重力の向き」という「下向き」には正確な名前があって,それが「鉛直下向き」です.また,察すればすぐに分かるように,この「鉛直下向き」の逆向きを「鉛直上向き」といいます.

さらに,「鉛直下向き」,「鉛直上向き」のこの向きを合わせて「鉛直」といいます.

具体例

「重力加速度」と「鉛直」の説明が終わったので,「自由落下」,「鉛直投げ上げ」,「鉛直投げ下ろし」の具体例に移ります.

「自由落下」,「鉛直投げ上げ」,「鉛直投げ下ろし」は原理的に同じものなので,区別する必要はないのですが,始めのうちはこれらが同じものには見えないと思いますのであえて分けて書きます.

自由落下

「自由落下」は物体に初速を与えず,勝手に落下させたときにする運動です.先ほどのスカイツリーから金属を落とすという例が「自由落下」の例になっています.

重力加速度は9.8\mathrm{m/s^2}であるとし,空気抵抗は無視する.高さ490\mathrm{m}の上空で小球Aを持った手を離し,小球Aを落下させる.このとき,

  1. 地面に小球Aが到達するのは,手を離してから何秒後か求めよ.
  2. 地面に小球Aが到達したとき,小球Aの速さを求めよ.

[解答]

全て向きは「鉛直下向き」で考える.

1. 等加速度直線運動の公式を使うときの注意点は,時刻0の位置を0としなければならないことです.ですから,この問題の場合,小球Bを落とした高さを0としなければならないことに注意します.

求めたいのは,地面に小球Aが到達する時刻tであり,分かっている条件は時刻0での速度v_0=0と位置x=490\mathrm{m}です.

時刻を求めたい時に使える公式はv=v_0+atx=v_0t+\frac{1}{2}at^2v^2-{v_0}^2=2axのうち,tが含まれている1,2個目の公式です.

さらに,条件v_0=0,\ x=490が使えそうなのは,2個目の公式です.(1個目の公式はvが分からないので使えません.)よって,2個目の公式より

490=0\times t+\displaystyle\frac{1}{2}\times 9.8\times t^2\\  \therefore 490=4.9t^2 \quad  \therefore t^2=100 \quad  \therefore t=10

を得ます.よって,手を離して10秒後に小球Aは地面に到達することが分かります.

2. 求めたいのは,地面に小球Aが到達したときの速度vであり,分かっている条件はv_0=0,\ x_0=490,\ t=10です.

速度を求めたい時に使える公式はv=v_0+atx=v_0t+\frac{1}{2}at^2v^2-{v_0}^2=2axのうち,vが含まれている1,3個目の公式です.

さらに,条件v_0=0,\ (x_0=490,\ ) t=10が使えそうなのは,1個目の公式ですから,

v=0+9.8\times 10=98

を得ます.よって,小球Aは速さ98\mathrm{m/s}で地面に到達します.

鉛直投げ下ろし

「鉛直投げ下ろし」は物体に鉛直下向きの初速を与えたときにする運動です.

重力加速度は9.8\mathrm{m/s^2}であるとし,空気抵抗は無視する.ある高さから小球Bを速さ19.6\mathrm{m/s}で鉛直下向きに投げ,小球Bを落下させると地面に到達したとき小球Bの速さは98\mathrm{m/s}であることが観測された.このとき,

  1. 小球Bを投げ下ろした高さを求めよ.
  2. 地面に小球Bが到達するのは,投げ下ろしてから何秒後か求めよ.

[解答]

全て向きは「鉛直下向き」で考える.

1. 求めたいのは,地面の高さxであり,分かっている条件は時刻0での速さ19.6\mathrm{m/s}と小球Bが地面に到達した時の速さ98\mathrm{m}です.

高さを求めたい時に使える公式はv=v_0+atx=v_0t+\frac{1}{2}at^2v^2-{v_0}^2=2axのうち,xが含まれている2,3個目の公式です.

さらに,条件v_0=19.6,\ v=98\mathrm{m}が使えそうなのは,3個目の公式ですから,

98^2-19.6^2=2\times 9.8\times x \quad \therefore x=470.4

を得ます.よって,小球Bを投げ下ろした高さは470.4\mathrm{m}です.

2. 求めたいのは,地面に小球Bが到達する時刻tであり,分かっている条件は時刻v_0=19.6,\ v=98,\ x=470.4です.

時刻を求めたい時に使える公式はv=v_0+atx=v_0t+\frac{1}{2}at^2v^2-{v_0}^2=2axのうち,tが含まれている1,2個目の公式です.

いま,1,2個目の公式は両方とも条件v_0=19.6,\ v=98,\ x=470.4が使えます.どちらでも良いので,簡単に計算ができそうな1個目の公式より

98=19.6+9.8\times t\quad \therefore t=8

を得ます.よって,手を離して8秒後に小球Bは地面に到達することが分かります.

鉛直投げ上げ

「鉛直投げ上げ」は物体に鉛直上向きの初速を与えたときにする運動です.

重力加速度は9.8\mathrm{m/s^2}であるとし,空気抵抗は無視する.ある高さから小球Cを速さ19.6\mathrm{m/s}で鉛直上向きに投げ,小球Cを落下させると地面に到達したとき小球Cの速さは98\mathrm{m/s}であることが観測された.このとき,

  1. 小球Cを投げ上げた高さを求めよ.
  2. 地面に小球Cが到達するのは,投げ上げてから何秒後か求めよ.

[解答]

全て向きは「鉛直下向き」で考える.

1. 求めたいのは,地面の高さxであり,分かっている条件は時刻0での速さ19.6\mathrm{m/s}と小球Cが地面に到達した時の速さ98\mathrm{m}です.

高さを求めたい時に使える公式はv=v_0+atx=v_0t+\frac{1}{2}at^2v^2-{v_0}^2=2axのうち,xが含まれている2,3個目の公式です.

さらに,条件v_0=-19.6,\ v=98\mathrm{m}が使えそうなのは,3個目の公式ですから,

98^2-(-19.6)^2=2\times 9.8\times x \quad \therefore x=470.4

を得ます.よって,小球Cを投げ上げた高さは470.4\mathrm{m}です.

2. 求めたいのは,地面に小球Cが到達する時刻tであり,分かっている条件は時刻v_0=19.6,\ v=98,\ x=470.4です.

時刻を求めたい時に使える公式はv=v_0+atx=v_0t+\frac{1}{2}at^2v^2-{v_0}^2=2axのうち,tが含まれている1,2個目の公式です.

いま,1,2個目の公式は両方とも条件v_0=-19.6,\ v=98,\ x=470.4が使えます.どちらでも良いので,簡単に計算ができそうな1個目の公式より

98=-19.6+9.8\times t\quad \therefore t=12

を得ます.よって,手を離して12秒後に小球Cは地面に到達することが分かります.

まとめ

具体的な問題では,

  1. 求めたい値を出すには,どの公式が候補になるか
  2. それらの候補のうち,条件が使えるものはどれか

という2点に注目して考えると,どの公式を使えば良いか浮かび上がってきます.

また,解答の最初に「全て向きは『鉛直下向き』で考える.」との断り書きを入れましたが,あまり物理に慣れていない人はいまいちピンとこないかもしれません.

また,「鉛直投げ上げ」と「鉛直投げ下ろし」の例がほとんど同じであることにも気付いたでしょうか?これらの違いは初めに小球に与えた速度の向きが関係しており,これも断り書きに少し関係しています.

次の記事「運動の基本5 ―向きの決め方,向きを変えるとどうなるか―」に続きます.

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