入試の英語は1分1秒を争います.
英文をさっさと読んで,考える時間,書く時間を増やしたいと考えるのは自然な発想でしょうし,当然考える時間,書く時間が増えれば点数は上がりますから,英文を読む速さは重要な要素の一つです.
しかし,英文をいきなり速く読める人はいません.
日本語ネイティヴの私たちが日本語の本でさえ,速読しようとしてもいきなり速読できることはないのですから,最初から英文を早く読めないのは当然と言えます.
速く読めるようになるとき
速読の訓練を始めてから,実際に速読できるようになるまでにやはり時間がかかります.
以下の言葉は私が学生時代に古典の先生に言われたことなのですが,これは英文の読解でも通用することなので書いておきます.
古文が読めるようになるには壁を超えなあかん.その壁を越えたら急に古文が読めるようになる.
でも,その壁をいつ超えられるかは分からん.
ある人は明日超えられるかも知らへんし,別の人は入試の前日に超えられるかも知らん.でも,ちゃんと読む努力をしてたらいつか絶対に壁は超えられる.
この先生がおっしゃっていたことは,今になってとてもよくわかります.なぜか急に読む速度が上がり,1週間とは見違えるほど読めるようになるということが私にもありました.
速さとしては,A3の紙で1ページ程度なら3分程度で読めるようになります.語数で言うと,400語で3分といったところです.
ポイントとしては
- 英語の語順で理解する
- 単語を思い出すスピードを上げる
- ひたすら読む
です.
英語で理解する
英文をいちいち日本語に直しながら読んでいては,どうしても読むスピードは遅くなってしまいます.つまり,英文を速く読むには英語のまま意味を理解するのです.
「英文→日本語→意味」ではなく,「英文→意味」ということです.
英語の語順に慣れる
日本語には「助詞」がありますから,語順にあまり注意を払わなくても意味は通じます.たとえば,主語を後ろに持ってきても「は」や「が」などの「主格の助詞」をつけてやれば,ちゃんと主語だと分かります.
しかし,英語はそうではありません.一番最初にあるのが主語で,次にあるのが動詞です.この順番は入れ替えられません.
ですから,「語順」は英文を読むうえで最も重要といっていいくらいで,英語で理解するには「英語の語順」で理解することが必要になるわけです.
そのための訓練として,「英文を音読する」ことです.
いずれは音読をせずに読むことが必要になるのですが,英文を英語の語順で理解するためには音読という作業がまずは必要なのです.
音読がなぜいいかというと,返り読みを防止できるからということと,耳を使えるからです.
これは英文の語順で理解する訓練ですから,このとき返り読みをしてはいけません.返り読みをしては,英語の語順で理解できていないことになります.
ですから,声に出して返り読みを防止して,英語の語順で理解するのです.
また,耳を使うというのは聴覚で英語の語感を捉えるためです.たとえば,外国人がカタコトの日本語を話すときに何か変な日本語を使ったときには,まず耳で違和感を感じます.
英語の語感が身に付けば,英語の語順での理解がとてもスムーズになるのです.
構文を掴む
英文を英語として読むには,構文を把握することも重要です.
習いたての頃にThere is構文や形式主語構文で読み間違えたことがある人も少なくないと思います.構文が分かっていないと,それは誤訳の元になりますから,英文を見たときに構文を見つけることは重要です.
ただし,構文は何度も読んでいると,自然とその構文で読めるようになります.構文を自然に訳せるぐらいに叩き込むことが重要です.
簡単に書きましたが,これはなかなか簡単にできるものではありません.何度も復習して自分のモノにしてください.
単語を思い出すスピードを上げる
“apple”,”nature”などは読むと同時にそれらの意味を理解できますが,”prosperity”,”dull”などは覚えていてもパッと出てこない単語だと思います.
同じ「覚えている」にも段階があるのです.
英単語を日本語に置き換えずに英語のままイメージすることができれば,その単語の暗記レベルは高いと言っていいでしょう.英文読解ではその差は重要です.
英文を読んでいるときちょっとでも立ち止まってしまうと,全体の文脈がフッと飛んでしまうことがよくあります.単語を思い出すときの「えっと」というちょっとしたつっかえでさえ,英文を読むときの障害になるのです.
これは【反復記憶法2|反復記憶法が有効な2つの理由と3つの注意点】でも詳しく書きました.
ひたすら読む
あとはひたすら読みこなすだけです.
英文の読むスピードを上げることは簡単ではありません.上で書いた方法はあくまで効率を上げる手段でしかありませんから,量はある程度こなしてもらわなければなりません.
1日2日,1週間やそこらでペラペラと読めるようになることはありません.
ですが,継続していれば必ずジワジワと速くなっていきます.そして,フッと壁を越えるときがあります.