この記事では,2017年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問6」の考え方と解法を説明します.
この問題のポイントは
- 3で割った余りで場合分けして考えられるか.
- 漸化式を用いればよいことに気付くか.
です.
確率漸化式はあまり馴染みのない人も多いかもしれません.
これは,確率は数学Aの範囲であり,漸化式はBの範囲なので,確率を習うときに出てこないのが原因の1つでしょう.
とはいえ,京都大学では確率漸化式の問題がよく出題されるので,しっかりフォローしておいてください.
2017年度の理系数学の解説はこちら
【解答例と考え方|2017年度|京都大学|理系数学問1】
【解答例と考え方|2017年度|京都大学|理系数学問2】
【解答例と考え方|2017年度|京都大学|理系数学問3】
【解答例と考え方|2017年度|京都大学|理系数学問4】
【解答例と考え方|2017年度|京都大学|理系数学問5】
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問題
2017年京都大学前期入試の「理系数学の問6」は以下の通りです.
$n$を自然数とする.$n$個の箱すべてに,$\fbox{1}$, $\fbox{2}$, $\fbox{3}$, $\fbox{4}$, $\fbox{5}$の5種類のカードがそれぞれ1枚ずつ計5枚入っている.各々の箱から1枚ずつカードを取り出し,取り出した順に左から並べて$n$桁の数$X$を作る.このとき,$X$が3で割り切れる確率を求めよ.
確率の問題です.
3で割り切れることと,各桁の和が3で割り切れることが同値であることは非常に重要です.
要は,1〜5までの数字が書かれたカードを重複を許して$n$枚並べ,そうしてできた自然数が3で割り切れるかどうか,という問題ですね.
解法と考え方
漸化式を思いつけるかどうかが分かれ目でしょう.
漸化式
例えば,$n=5$で考えます.
最初の4枚で$\fbox{3}$, $\fbox{2}$, $\fbox{5}$, $\fbox{3}$と並んだ場合,ここまでの合計は$13$なので,3で割り切れるためには,残りの1枚は$\fbox{2}$または$\fbox{5}$である必要があります.
また,最初の4枚で$\fbox{2}$, $\fbox{3}$, $\fbox{5}$, $\fbox{2}$と並んだ場合,ここまでの合計は12なので,3で割り切れるためには,残りの1枚は$\fbox{3}$である必要があります.
このように,最初の4枚目までの合計がどのようになっているのかで,5枚目の候補が決まります.詳しくは,最初の4枚目までの合計の3で割った余りによって,5枚目の候補が決まります.
これを$n$で考えると,$n-1$枚目までの合計を3で割った余りによって,$n$枚目の候補が決まります.
$n-1$枚目までの状況で$n$枚目が変化するのですから,これはまさしく漸化式の考え方になりますね.
解答
$X$が3で割り切れることと,$X$の各桁の数の和が3で割り切れることは同値である.
$X$の$10^{j}$の位の数を$a_{j}$とする.
自然数$m$に対して$S_{m}=\sum_{j=1}^{m}a_{j}$とし,$S_{m}$を3で割った余りを$T_{m}$とする.
- $T_{m}=0$である確率を$p_{m}$
- $T_{m}=1$である確率を$q_{m}$
- $T_{m}=2$である確率を$r_{m}$
とする.このとき,$T_{m}$としては,0,1,2のいずれかしかないから,$p_{k}+q_{k}+r_{k}=1$が成り立つことに注意する.
$T_{m+1}=0$であるためには,
- $T_{m}=0$かつ$a_{m+1}=3$
- $T_{m}=1$かつ「$a_{m+1}=2$または$a_{m+1}=5$」
- $T_{m}=2$かつ「$a_{m+1}=1$または$a_{m+1}=4$」
であることが必要十分である.よって,
が成り立つ.すなわち,漸化式$p_{m+1}=\dfrac{2}{5}-\dfrac{p_{m}}{5}$が得られる.したがって,
だから,数列$\brb{p_{m}-\dfrac{1}{3}}$は初項$p_{1}-\dfrac{1}{3}$,公比$-\dfrac{1}{5}$の等比数列である.
よって,$p_{1}=\dfrac{1}{5}$に注意して,
となって,$p_{n}=\dfrac{1}{3}+\dfrac{2}{3}\bra{-\dfrac{1}{5}}^{n}$を得る.
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