2018大学入試
京都大学 理系数学問1
解答例と考え方

京都大学
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この記事では,2018年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問1」の考え方と解法を説明します.

この問題のポイントは,

  1. 連立方程式をうまく処理できるか
  2. 条件を満たす$a$と$c$を導けるか
  3. その$a$と$c$から領域を求められるか

です.

条件を単に式に書き直すことはそれほど難しいことではありませんが,そこから$a$と$c$の条件をうまく書き直す必要があり,ここをうまく処理するのがこの問題のポイントです.

問題

2018年京都大学前期入試の「理系数学の問1」は以下の通りです.

0でない実数$a$, $b$, $c$は次の条件(i)と(ii)を満たしながら動くものとする.

(i) $1+c^{2}\leqq2a$.
(ii) 2つの放物線$C_{1}:y=ax^{2}$と$C_{2}:y=b(x-1)^{2}+c$は接している.

ただし,2つの曲線が接するとは,ある共有点において共通の接線をもつことであり,その共有点を接点という.

(1) $C_{1}$と$C_{2}$の接点の座標を$a$と$c$を用いて表せ.

(2) $C_{1}$と$C_{2}$の接点が動く範囲を求め,その範囲を図示せよ.

(1)はさっと解きたい問題で,本番の(2)は領域の問題です.

実数$a$, $b$, $c$の役割は次のようになっていますね.

  • $a$:放物線$C_1$の広がり方
  • $b$:放物線$C_2$の広がり方
  • $c$:放物線$C_2$の$y$軸方向の位置

また,$C_1$の頂点は原点$(0,0)$で,$C_2$の頂点は$(1,c)$です.

まず,$C_1$と$C_2$が接するなら,$x=1$で$C_1$が$C_2$より大きいことが必要です.

ここで,$C_1$, $C_2$が接しない場合を考えると,下図のようになります.

Rendered by QuickLaTeX.com

大雑把に考えると,$a$, $c$を決めると,あとは$b$をうまく調節して放物線$C_{2}$の広がりをコントロールすることで,$C_{1}$と$C_{2}$が接するようにできそうですね.

また,$c$は$a$に対してどのように動くかを考えると,条件(i)$1+c^{2}\leqq2a$から$a$に対して$c$はあまり大きくも小さくもなれません.

ということは,放物線$C_{2}$の上下の動きにもある程度の制限があるということです.

以上のことから,$a$に対して,条件(i)$1+c^{2}\leqq2a$を満たすような範囲を$c$が動き,それぞれの$c$に対して$b$をうまく調節して考えればよいになります.

解法と考え方

イメージがつかめていても,少し難しいかもしれません.

何を求めるか

(1)では,接点の座標を求めるので,接点の$x$座標を$t$とおいて,$t$を求めることになります.

この$t$が求まると,$C_{1}$の式に代入することで接点の$y$座標も得られます.

(2)では,(1)で求めた接点の座標がどのような領域に存在するのかを考えることになります.

問題文から,(1)では接点の座標を$a$と$c$で表すことになっているので,2つの文字がどのように動くのかを考える必要があります.

接線の方程式

$xy$平面上の直線について,傾き$m$と通る点$(a,b)$が分かれば,直線の方程式を$y=m(x-a)+b$と表すことができます.

この問題では,接点の$x$座標を$t$とおくと,$x=t$での接線の傾きは$x=t$における微分係数$f'(t)$となります.

また,$x=t$を方程式に代入することで接点の$y$座標が得られるので,傾きと通る点が分かったことになり,直線の方程式が求まります.

aとcの範囲をどのように考えるか

(1)で求めた接点の座標は$a$と$c$で表されているので,この接点の座標を$(X,Y)$とおいて,この点$(X,Y)$がどのような領域に存在するのかを考えることになります.

したがって,$a$と$c$が自由に動けるわけではなく,どの範囲を動くのかを考えなければなりません.

そもそも点$(X,Y)$は「条件(i)と条件(ii)を同時に満たすような0でない実数$a$と$c$に対して求まる接点」のことですから,条件(i)と(ii)を同値変形して得られる$a$と$c$の条件を考えることになります.

解答

以下,解答例です.

(1)の解答

$f(x)=ax^{2}$, $g(x)=b(x-1)^{2}+c$とおく((2)も同様).

接点の$x$座標を$t$とすると,$C_{1}$, $C_{2}$の$x=t$での接線はそれぞれ

   \begin{align*} &y=f'(t)(x-t)+f(t) \\\iff& y=2at(x-t)+at^{2} \\\iff& y=2atx-at^{2}, \\&y=g'(t)(x-t)+g(t) \\\iff& y=2b(t-1)(x-t)+b(t-1)^{2}+c \\\iff& y=2b(t-1)x+b(t-1)^{2}-2bt(t-1)+c \end{align*}

である.これらが一致することから,傾きと切片が等しく,

   \begin{align*} \begin{cases} 2at=2b(t-1)\\ -at^{2}=b(t-1)^{2}-2bt(t-1)+c \end{cases}\dots(*) \end{align*}

を得る.$(*)$の第1式と第2式から$b$を消去すると,

   \begin{align*} -at^{2}=at(t-1)-2at^{2}+c \iff at=c \end{align*}

である.条件(i)から$a>0$,したがって$a\neq0$だから,$t=\dfrac{c}{a}$である.よって,接点の座標は$\bra{\dfrac{c}{a},\dfrac{c^{2}}{a}}$である.

(2)の解答

「点$(x,y)$が求める領域上の点であること」と,「条件(i)と$(*)$を同時に満たす実数$t$と0以外の実数$a$, $b$, $c$が存在すること」は同値である.

   \begin{align*} (*)\iff \begin{cases} b=(b-a)t\\ t=\frac{c}{a} \end{cases} \end{align*}

だから,$a=b$または$t=0$のときは$b=0$または$c=0$となって,条件を満たさない.さらに,$t$を消去した

   \begin{align*} b=\frac{(b-a)c}{a} \iff& ab=c(b-a) \\\iff& ac=b(c-a) \end{align*}

から,$a=c$のときは$ac=0$となって条件を満たさない.よって,$a\neq b$かつ$t=0$かつ$a\neq c$であることが必要.逆に,このときは$(*)$を満たす実数$t$と0以外の実数$a$, $b$, $c$が存在する.

以上より,0でない実数$a$, $c$が条件(i)と$a\neq c$を満たすときの点$\bra{\dfrac{c}{a},\dfrac{c^{2}}{a}}$の存在領域を図示すれば良い.

「点$(X,Y)$は領域上の点である」……$(*)$と「$X=\dfrac{c}{a}$かつ$Y=\dfrac{c^{2}}{a}$かつ条件(i)かつ$a\neq c$を満たす実数$a$, $c(\neq0)$が存在する」は同値である.

このとき,$c\neq0$と$X=\dfrac{c}{a}$から$X\neq0$であり,$cX=Y$かつ$aX^{2}=Y$が成り立つから,$a=\dfrac{Y}{X^{2}}$, $c=\dfrac{Y}{X}$が成り立つ.

よって,条件(i)から

   \begin{align*} &1+\frac{Y^{2}}{X^{2}}\leqq2\frac{Y}{X^{2}} \\\iff& X^{2}+Y^{2}\leqq2Y \\\iff& X^{2}+(Y-1)^{2}\leqq1 \end{align*}

が成り立ち,$a\neq c$から

   \begin{align*} \frac{Y}{X}\neq\frac{Y}{X^{2}} \iff X\neq1 \end{align*}

が成り立つ.

逆に,$X^{2}+(Y-1)^{2}\leqq1$かつ$X\neq1$かつ$X\neq0$のとき,$c=\dfrac{Y}{X}$かつ$a=\dfrac{Y}{X^{2}}$とおくことで今の議論を逆に辿ることができる.

よって,$(*)$は「$X^{2}+(Y-1)^{2}\leqq1$かつ$X\neq1$かつ$X\neq0$」と同値である.

これを図示して,求める領域は下図の灰色領域である.

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ただし,点$(1,1)$と直線$x=0$上の点は含まず,点$(1,1)$以外の境界は全て含む.

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