この記事では,2018年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問3」の考え方と解法を説明します.
この問題のポイントは,
- 外接円の半径をどのように利用するか
- 三角関数について適切な変形ができるか
です.
座標に置くなどしても計算できますが,うまくやらないと計算が煩雑になってしまいます.
「外接円の半径」というキーワードからすぐに思いついて欲しい定理があります.
2018年度の理系数学の解説はこちら
【解答例と考え方|2018年度|京都大学|理系数学問1】
【解答例と考え方|2018年度|京都大学|理系数学問2】
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【解答例と考え方|2018年度|京都大学|理系数学問5】
【解答例と考え方|2018年度|京都大学|理系数学問6】
問題
2018年京都大学前期入試の「理系数学の問3」は以下の通りです.
$\alpha$は$0<\alpha\leqq\dfrac{\pi}{2}$を満たす定数とし,四角形ABCDに関する次の2つの条件を考える.
(i) 四角形ABCDは半径$1$の円に内接する.
(ii) $\ang{ABC}=\ang{DAB}=\alpha$
条件(i)と(ii)を満たす四角形のなかで,4辺の長さの積
が最大となるものについて,$k$の値を求めよ.
図形の問題です.
辺の長さを表すために,どこかを文字でおく必要があります.
本問では,$\alpha$を$0<\alpha\leqq\dfrac{\pi}{2}$に固定した状態で,四角形ABCDが条件(i)と条件(ii)を満たしながら変化します.
イメージとしては,$\ang{ABC}$と$\ang{DAB}$を$\alpha$に固定したまま辺ABを左右にスライドさせると,四角形ABCDが動くわけですが,どの位置に辺ABがあるときに四角形ABCDの面積が最大になるか,という問題なわけです.
ただし,辺ABはどのようにでもスライドさせられるわけではなく,辺ABと辺CDが近付き過ぎて,辺BCと辺DAの長さが0に潰れしまうとアウトです.
また.辺ABと辺CDが遠ざかり過ぎて,辺CDの長さが0に潰れてしまってもアウトです.
この範囲で考えることも,答案では明記するべきでしょう.
解法と考え方
結局求めるものは面積ですから,面積を表しやすいように文字をおきます.
「外接円の半径」→「正弦定理」
「外接円の半径」というワードを見たとき,「正弦定理」は第一候補に上がって欲しいところです.
そして,正弦定理を使うとなると三角形を考える必要がありますから,対角線ACを引きます.
とすると,あとは角に名前がついている方が扱いやすいですから,ここで$\theta=\ang{CAB}$とすれば正弦定理が使えますね.
4辺の長さの積$k$の最大値を求めるので,4つの辺の長さを考えます.
正弦定理を用いれば,AB, BC, $\mrm{CD}$, $\mrm{DA}$の長さが$\alpha$と$\theta$で表せるので,$k$も$\alpha$と$\theta$で表せますね.
実際,正弦定理から,
だから,$k=16\sin(\pi-\alpha-\theta)\sin(\alpha-\theta)\sin^2{\theta}$となりますね.
三角関数の計算
$\sin(\pi-\alpha-\theta)=\sin(\alpha+\theta)$だから,
となりますね.このまま単純に$\theta$について微分して増減を調べることによっても最大値は求まるが,もう少し$\theta$について見通しよく変形したいところです.
積和の公式を使うと,
が成り立ちます.
このように,三角関数の積について,$\sin(X+\alpha)\sin(X-\beta)$や$\sin(X+\alpha)\cos(X-\beta)$など,いずれの三角関数の中に同じ文字(この場合は$X$)が含まれている場合,積和の公式を使えば,その文字のない項ができることは知っておくと見通しがよくなることは多くあります.
さて,ここで$k=8\bra{\cos{2\theta}-\cos{2\alpha}}\sin^2{\theta}$となりました.
変数の$\theta$は$\cos{2\theta}$と$\sin^2{\theta}$の2ヶ所に現れています.この両者は2倍角の公式もしくは半角の公式によって互いを表せますから,どちらか一方にまとめることができますね.
どちらでもよいですが,半角の公式$\sin^2{\theta}=\dfrac{1-\cos{2\theta}}{2}$を用いると,
となって,あとは$\cos{2\theta}$をカタマリと見れば2次関数の最大値の問題に帰着します.
変数が動く範囲
$\cos{2\theta}$の動く範囲を考える必要がありますが,そのためには$\theta$の動く範囲を考えれば良いですね.
前述の「問題のイメージ」でも書いたように,辺ABと辺CDは近づきすぎても遠ざかりすぎてもダメです.
これを$\theta$の立場から考えると,辺ABと辺CDがギリギリまで近づくときには$\theta\to0$となり,一方で辺ABと辺CDがギリギリまで遠ざかるときには$\theta\to\alpha$となります.
したがって,$\theta$は$0<\theta<\alpha$の範囲をくまなく動くことが分かります.
仮定から$\alpha$は$0<\alpha\leqq\dfrac{\pi}{2}$の範囲を動くので,$\cos{2\theta}$は$1>\cos{2\theta}>\cos{2\alpha}(\geqq-1)$の範囲をくまなく動きますね.
解答例
$\theta=\ang{CAB}$とする.
このとき,$\tri{ABC}$の内角の和が$180^\circ$であることから$\ang{ACB}=\pi-\ang{ABC}-\ang{CAB}=\pi-\alpha-\theta$である.
また,四角形ABCDは円に内接するから$\ang{CDA}=\pi-\ang{CBA}=\pi-\alpha$となるので,$\tri{CDA}$の内角の和が$180^\circ$であることから$\ang{ACD}=\pi-\ang{CDA}-\ang{DAC}=\theta$である.
外接円の半径は$1$だから,正弦定理より,
だから,
を得る.ただし,最後から2つ目の等号で積和の公式を,最後の統合で半角の公式を用いた.
ここで,$t=\cos{2\theta}$とする.$\theta$は$0<\theta<\alpha$をくまなく動き,仮定から$\alpha$は$0<\alpha\leqq\dfrac{\pi}{2}$の範囲を動くので,$t$は$1>t>\cos{2\alpha}(\geqq-1)$の範囲をくまなく動く.
だから,放物線の対称性から$t=\dfrac{1+\cos{2\alpha}}{2}$で$k$は最大値をとり,その値は
となる.
最後の「放物線の対称性から」の部分は,単純に$-4(t-\cos{2\alpha})(t-1)$を平方完成した方が減点はされにくいかもしれませんが,そこはこの問題の本質ではないので大きな減点はないでしょう.
正弦定理であることに気付けば,あとはほとんど三角関数の計算ですね.
三角関数の計算のために三角関数の多くの公式を縦横無尽に使えるようにしておくことは重要ですから,三角関数の計算の見通しが悪い人は基本から丁寧に慣れる練習をしておくのがよいでしょう.
【問4の解説:解答例と考え方|2018年度|京都大学|理系数学問4】
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