この記事では,2019年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問3」の考え方と解法を説明します.
この問題のポイントは,
- 図形を適切に座標上におけるか
- 媒介変数の積分を計算できるか
です.
「ベクトル」と「図形と方程式」は相性がよいことを意識していれば思い付ける自然な解法で解けます.また,媒介変数表示の積分もしっかり計算できるようになっておいてください.
2019年度の理系数学の解説はこちら
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問1】
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【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問6】
問題
2019年京都大学前期入試の「理系数学の問3」は以下の通りです.
鋭角三角形ABCを考え,その面積を$S$とする.$0<t<1$をみたす実数$t$に対し,線分ACを$t:1-t$に内分する点をQ,線分BQを$t:1-t$に内分する点をPとする.実数$t$がこの範囲を動くときに点Pの描く曲線と,線分BCによって囲まれる部分の面積を,$S$を用いて表せ.
「図形と方程式」と「数学IIIの積分」の問題です.
例えば,$t=\dfrac{1}{3}$なら
のようになり,$t=\dfrac{3}{5}$なら
のようになります.点Pは
- $t\to0$のときに点Bに近付く
- $t\to1$のときに点Cに近付く
ことになります.$t=\dfrac{n}{16}$ $(n=1,2,\dots,15)$の場合は以下のようになります(濃い部分は$n=6$).
点Pの軌跡は円のような分かりやすい曲線にはなっていないので,点Pの軌跡と辺BCで囲まれた部分の面積は積分で計算するしかありません.
解法と考え方
内分を考えるので,平面図形として幾何的な性質だけで考えるのは難しく,座標におきたいところです.その際,座標上のベクトルで点を計算するのが常套手段です.
平面は2つの1次独立な2つのベクトルで考える
平面をベクトルで考える場合には,1次独立($\Ve{0}$でなく,平行でない)な2つのベクトルで考えるのが定石です.
この問題では,点BQ上の点Pを考えるので,$\Ve{BA}$と$\Ve{BC}$を中心に考えましょう.
このとき,内分の公式から
が得られます.
図形を座標におく
さて,このままでは点Pがどこにあるのかよく分かりませんので,この図形を$xy$平面におきましょう.
ベクトルと座標は相性がいいということは,強く意識しておきましょう.
図形を座標におくときには,そのあとの計算しやすいようにおきます.
この問題では,
- $\Ve{BA}$と$\Ve{BC}$を中心に考えるので,点Bが原点にある
- 点Pが描く曲線と辺BCに囲まれた領域の面積を求めるので,辺BCが$x$軸上にある
とすると都合が良さそうで,
- 点Bを原点$(0,0)$
- 点Aを$(a,b)$
- 点Cを$(c,0)$
などとおけば,$\tri{ABC}=\dfrac{bc}{2}$であり,下図のようになります.
このとき,
となり,点Pの座標が$t$で表されましたね.
媒介変数表示の関数の積分
さて,点Pの$x$座標は$t$に関して単調増加となるので,点$\mrm{P}(x,y)=(at+(-a+c)t^2,bt(1-t))$の描く軌跡と辺BCで囲まれる領域の面積は$\dint_{0}^{c}y\,dx$となります.
もし$y=f(x)$と$y$が$x$で直接表されていれば$\dint_{0}^{1}f(x)\,dx$の形に書き直せて,積分の計算ができる可能性もありましたが,$(x,y)=(at+(-a+c)t^2,bt(1-t))$から$y=f(x)$nの形に書くのは面倒ですし,きれいな形にはなりそうにありません.
ただし,$x$, $y$はともに$t$の式で表されているので,$y$も$dx$も$t$で表してしまえば$t$の積分となって計算ができます.
別の言い方をすれば,これは$(x,y)=(at+(-a+c)t^2,bt(1-t))$という置換積分を行ったことになっています.
$y=bt(1-t)$は分かっており,一方$x=at+(-a+c)t^2$より
なので,点Pの描く軌跡と辺BCで囲まれる領域の面積は
となり,これは実際に計算できますね.
解答
以下,解答例です.
[解答]
$xy$平面上に,$\tri{ABC}$を
- 点Bを原点$(0,0)$
- 点Aを$(a,b)$
- 点Cを$(c,0)$
となるようにおき,$\ve{a}=\Ve{BA}$, $\ve{c}=\Ve{BC}$とおく.このとき,
なので,内分の公式と併せて,
となる.ここで,点$\mrm{P}(X,Y)$とする.
- $\tri{ABC}$が鋭角三角形であることから$0<a<c$であること
- $0<t<1$であること
に注意すると,
なので,点Pの$x$座標は$t$に関して単調増加だから,下図のようになる.
よって,点Pと辺BCに囲まれる領域の面積は
となる.
[解答終]
【次問の解説:解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問4】
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