この記事では,2019年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問4」の考え方と解法を説明します.
この問題のポイントは,
- 条件を満たす$X_1,X_2,\dots,X_n$にはどのようなパターンがあるか
- 和の立式,等比数列の和の計算を正しく行えるか
です.
「場合の数」と「確率」では,どのようなパターンがあるかを「もれなく」「重複なく」把握することが第一歩で,それらの場合の数/確率を足し合わせれば答えが得られます.
2019年度の理系数学の解説はこちら
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問1】
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問2】
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問3】
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【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問5】
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問6】
問題
2019年京都大学前期入試の「理系数学の問4」は以下の通りです.
問題
1つのさいころを$n$回続けて投げ,出た目を順に$X_1,X_2,\dots,X_n$とする.このとき次の条件をみたす確率を$n$を用いて表せ.ただし$X_0=0$としておく.
条件:$1\leqq k\leqq n$を満たす$k$のうち,$X_{k-1}\leqq4$かつ$X_{k}\geqq5$が成立するような$k$はただ1つである.
条件の「$X_{k-1}\leqq4$かつ$X_{k}\geqq5$が成立するような$k$はただ1つである.」は「4以下の目の次が5以上となるようなところは1回である.」という意味なので,
- $(X_0,X_1,X_2,X_3,X_4)=(0,1,5,1,1)$
- $(X_0,X_1,X_2,X_3,X_4)=(0,1,5,5,5)$
- $(X_0,X_1,X_2,X_3,X_4)=(0,5,5,1,1)$
- $(X_0,X_1,X_2,X_3,X_4)=(0,5,5,5,5)$
などは全て条件を満たします.
解法と考え方
「場合の数」と「確率」の問題では,「どのようなパターンがあるか」を考えるのがいつでも第一歩です.
どのようなパターンがあるか
今みたように,条件を満たす
- $(X_0,X_1,X_2,X_3,X_4)=(0,1,5,1,1)$
- $(X_0,X_1,X_2,X_3,X_4)=(0,1,5,5,5)$
- $(X_0,X_1,X_2,X_3,X_4)=(0,5,5,1,1)$
- $(X_0,X_1,X_2,X_3,X_4)=(0,5,5,5,5)$
はそれぞれ
- 4以下から始まって,途中から5以上になって,再び途中から4以下
- 4以下から始まって,途中から5以上
- 5以上から始まって,途中から4以下
- 5以上から始まって,最後まで5以上
ということになっています.また,ちょうど一回だけ4以下から5以上になるので,これらの4パターン以外にはあり得ません.
すなわち,1回さいころを投げる試行において,
- 「さいころの出目が4以下」の事象をA
- 「さいころの出目が5以上」の事象をB
とすると,
- $A\to A\to\dots\to A\to B\to B\to\dots\to B\to A\to A\to\dots\to A$,
- $A\to A\to\dots\to A\to B\to B\to\dots\to B$,
- $B\to B\to\dots\to B\to A\to A\to\dots\to A$,
- $B\to B\to\dots\to B$.
のということになります.こう考えると,
- [パターン1]は最後のAが0回
- [パターン2]は最初のAが0回
- [パターン3]は最初も最後もAが0回
とみなせば,いずれも[パターン4]の
の形で表すことができます.
なお,もちろんこのようにまとめることに気付けなくても,それぞれのパターンで別々に求めて足し合わせても同じ答えになります.
和の計算
- 最初のAが何回続くか
- 間のBが何回続くか
が分かれば確率が分かりますから,それぞれの回数を$k$, $j$とすると,この確率は
となります.また,
- 少なくとも1回はBが起こらなければいけませんから,最初のAは0回から$(n-1)$回まで可能性があり,
- Aが$k$回起こったとすると,Bは1回から$(n-k)$回まで可能性がありますね.
よって,求める和は
となります.これは等比数列の和の公式を用いて計算することができます.
このように,「場合の数」と「確率」の問題では,いつでも
- 全てのパターンを網羅して
- それらの場合の数/確率を足し合わせる
という手順を踏むことを意識してください.
解答
以下,解答例です.
[解答]
1回さいころを投げる試行において,
- 「さいころの出目が4以下」の事象をA
- 「さいころの出目が5以上」の事象をB
とすると,A, Bが起こる確率はそれぞれ$\dfrac{2}{3}$, $\dfrac{1}{3}$である.また,条件を満たすのは
となる場合に限る.ただし,最初のA, 最後のAは0回でもよい.
任意の$k\in\{0,\dots,n-1\}$, $j\in\{1,\dots,n-k\}$に対して,最初の事象Aが$k$回続き,事象Bが$j$回続くときの確率は
だから,$k=0,\dots,n-1$, $j=1,\dots,n-k$の場合を足し合わせて,総確率は
である.
[解答終]
【次問の解説:解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問5】
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