この記事では,2019年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問5」の考え方と解法を説明します.
この問題のポイントは,
- 何を変数とおくか
- 体積を正しく立式できるか
です.
適当に変数をおけば体積を表すことができ,あとは導関数を求めて増減を調べれば終わりです.基本的な問題で,瞬殺したいところです.
2019年度の理系数学の解説はこちら
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問1】
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問2】
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問3】
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問4】
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問5】←今の記事
【解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問6】
問題
2019年京都大学前期入試の「理系数学の問5」は以下の通りです.
問題
半径1の球面上のA, B1, B2, B3, B4は,正方形B1B2B3B4を底辺とする四角錐をなしている.この5点が球面上を動くとき,四角錐AB1B2B3B4の体積の最大値を求めよ.
題材は空間図形ですが,最大値を求めるので微分を使います.
- 球の中心をO
- 正方形B1B2B3B4の対角線の交点をB
としましょう.
このとき,点Bから直線Oの方へ半直線を引いたときの球との交点に点Aをとるときが,四角錐AB1B2B3B4の体積が最大になりますね.
さて,正方形B1B2B3B4の面積は,正方形B1B2B3B4による球の断面が球の中心Oを通るときに最大になりますが,そのときの高さABはそれほど長くないですね.
そこから,少しずつABを長くしていくと,底面B1B2B3B4の面積は小さくなっていきます.
このとき,高さABの長さがどれくらいのときに体積が最大になるか,というのがこの問題で問われているわけですね.
解法と考え方1
変数はいろんな置き方ができますが,高さABを伸び縮みさせると考えて変数をおきましょう.
四角錐の体積
先ほど考えていたように,球の中心をOとし,正方形B1B2B3B4の対角線の交点をBとしましょう.
条件から球の半径が1と分かっているので,OBの長さを$x$とおけば高さABの長さは$1+x$となります.
よって,四角錐AB1B2B3B4の体積を計算するには,あとは正方形B1B2B3B4の面積が必要ですね.
2点B1, B3は球面上にあるので,
ですから,△OB1B3は二等辺三角形で,B1B3を底辺とみると高さはOBとなります.
よって,三平方の定理から$\mrm{BB_1}=\sqrt{1-x^2}$となるので,正方形B1B2B3B4の面積は$2(1-x^2)$となります.
これらから,四角錐AB1B2B3B4の体積は
となるので,$1+x-x^2-x^3$の$0<x<1$での最大値を求めればよいことになりますね.
解答
以下,解答例です.
[解答]
- 球の中心をO
- 正方形B1B2B3B4の対角線の交点をB
- $x=\mrm{OB}$ ($0\leqq x<1$の範囲を動く)
とする.
このとき,2点B1, B3は球面上にあるから$\mrm{OB_1}=\mrm{OB_3}=1$より△OB1B3は二等辺三角形で,BはB1B3の中点だから$\mrm{OB}\perp\mrm{B_1B_3}$である.同様に,$\mrm{OB}\perp\mrm{B_2B_4}$である.
よって,直線OBは正方形B1B2B3B4に垂直である.
また,球と正方形の対称性から,正方形B1B2B3B4を決めれば,半直線BOと球との交点をAとするときに四角錐AB1B2B3B4の体積が最大となる.
いま,
だから,四角錐AB1B2B3B4の体積は
となる.ここで,$f(x)=1+x-x^2-x^3$とすると,
だから,$f'(x)=0$の$0\leqq x<1$での解は$x=\dfrac{1}{3}$である.よって,$f(x)$の増減表は
である.
なので,四角錐AB1B2B3B4の体積の最大値は
である.
[解答終]
解法と考え方2
変数$x$を別の部分にとっても解けます.
四角錐の体積
正方形B1B2B3B4の一辺の長さを$x$ $(0<x\leqq\sqrt{2})$とおきましょう.
この場合は
なので,四角錐AB1B2B3B4の体積は
となります.
変数の置き換え
このまま無理関数の微分をして増減を考えれば最大値が求めても良いですが,計算は面倒そうですね.
このような場合には,変数を置き換えて計算が楽になる場合があります.
いろんな置き換え方が考えられますが,$y^2=1-\dfrac{x^2}{2}$が最も自然な置き換えでしょう.
$0<x\leqq\sqrt{2}$より
と置き換えられ,このとき四角錐AB1B2B3B4の体積は
です.この$y$は$\mrm{OB}$の長さを表すので,先ほどの1つ目の解法の式に帰着しています.
以降は同様にして,最大値が求まります.
【次問の解説:解答例と考え方|2019年度|京都大学|理系数学問6】
コメント