この記事では,2020年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問4」の考え方と解法を説明します.
この問題のポイントは,
- 問題の意味を解釈できるか
- 最後まで計算を完遂できるか
です.
京都大学では実際に実験するなどし,様子を掴んで解く問題がよく出題されています.本問はその類題と言え,地道に計算で解ける本問は確実に正解しておきたい問題です.
2020年度の理系数学の解説はこちら
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問1】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問2】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問3】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問4】←今の記事
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問5】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問6】
問題のイメージ
2020年度京都大学前期入試の「理系数学の問4」は以下の通りです.
正の整数$a$に対して,
$a=3^{b}c$ ($b$, $c$は整数で$c$は3で割り切れない)
の形に書いたとき,$B(a)=b$と定める.例えば,$B(3^{2}\cdot5)=2$である.
$m$, $n$は整数で,次の条件を満たすとする.
(i) $1\leqq m\leqq 30$.
(ii) $1\leqq n\leqq 30$.
(iii) $n$は3で割り切れない.
このような$(m,n)$について,
とするとき,
の最大値を求めよ.また,$A(m,n)$の最大値を与えるような$(m,n)$をすべて求めよ.
整数問題です.
問題文が長く,ぱっと見ではややこしそうな設定に見えますが,読んでみると単純な問題設定であることが分かります.
まず,「$a=3^{b}c$ ($b$, $c$は整数で$c$は3で割り切れない)の形」とは,「$a$を素因数3で因数分解し切ると$3^{b}$となる」ということに他なりません.
つまり,関数$B(a)$は$a$の素因数3の個数を教えてくれる関数です.
したがって,$A(m,n)=B(f(m,n))$で定まる関数$A(m,n)$は,$f(m,n)$の素因数3の個数を教えてくれる関数ということになります.
つまり,$f(m,n)$が最も多く素因数3をもつのはいつか,ということを問われているわけですね.
解法と考え方
問題で問われていることが分かれば,やることは単純です.
割った余りで場合分け
$f(m,n)=m^3+n^2+n+3$の素因数3の個数が最大となればよいので,$m^3+n^2+n$が3の倍数とならない$(m,n)$は無視してよい.
すなわち,$m^3+n^2+n$が3の倍数となる$(m,n)$を考えればよく,$m$, $n$を3で割った余りで考えるのが良い.
つまり,$n$は3の倍数でないから,
- $m=3m’-2,3m’-1,3m’$
- $n=3n’-2,3n’-1$
のうちで$m^3+n^2+n$が3の倍数となる場合を考えれば良い.
これを繰り返すことにより,$1\leqq m\leqq 30$, $1\leqq n\leqq 30$より,実際に手計算で確認できる程度の個数の候補に絞る事ができる.
解答
以下,解答例です.
[解答]
$f(m,n)$の素因数3の個数が$k$であることと$A(m,n)=k$であることは同値だから,$f(m,n)$の素因数3の個数が最大になるような$(m,n)$と,そのときの$A(m,n)$を求めればよい.
以下では全て3を法とする.条件(iii)から$n\not\equiv0$に注意して,
なので,
となるには$(m,n)\equiv(0,2),(1,1)$となることが必要である.
[1] $(m,n)\equiv(0,2)$のとき,$m=3m’$, $n=3n’-1$ ($m’$, $n’$は整数で,$1\leqq m’\leqq10$, $1\leqq n’\leqq10$)とおくと,
である.さらに$9m’^3+3n’^2-n’+1\equiv0$であるためには$n’\equiv1$が必要なので,$n’=3n”-2$ ($n”=1,2,3,4$)とおくと,
である.さらに
なので,$n”=2$で引き続き考えればよい.このとき,
となり,$m’^3+5\equiv0$となるには$m’\equiv1$であることが必要なので,$1\leqq m’\leqq10$と併せて$m’=1,4,7,10$の場合を比較すれば良い.
なので,いずれの場合も素因数3の個数は1なので,$f(m,n)$の素因数3の個数は4である.
[2] $(m,n)\equiv(1,1)$のとき,$m=3m’-2$, $n=3n’-2$ ($m’$, $n’$は整数で,$1\leqq m’\leqq10$, $1\leqq n’\leqq10$)とおくと,
である.
だから,$A(m,n)=1$である.
[1], [2]より,$(m,n)=(3,11),(12,11),(21,11),(30,11)$のとき,$A(m,n)$の最大値4をとる.
[解答終]
【次問の解説:解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問5】
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