もし「計算ミスをしない」というのが実現できれば,点数に結びつくことは間違い無いでしょう.計算に不安がなければ,立式に全力を注げばいいからです.立式できた時点であなたの勝ちです.
そう考えると,「計算ミス」がいかに強いことか分かりますね.
では,計算ミスの原因が何かというと,それは単純に注意不足でしょう.ですから,全力で注意しながら計算すれば,確実に計算ミスは減ります.
一方で,そこまで注意しながら計算すると,計算ミスはしなくても,試験では時間が足りなくなってしまうでしょう.
当たり前といえば当たり前のことですが,計算には「正確性」と「スピード」が要求されます.
計算ミスはなくせるのか?
前提として「計算ミスはしてしまうもの」です.
私も計算ミスはしますし,大学教授レベルの人でも簡単な計算で計算ミスをしてしまうことはあります.
大学教授レベルにもなれば,はっきり言って天才の集まりになります.しかし,そんなレベルの人でも計算ミスはするのです.
アメリカの研究者でジョン・フォン・ノイマンという人がいました.
ノイマンは数学や物理学など理系分野だけではなく,心理学や政治学などあらゆる分野で膨大な成果を残しています.
ノイマンは間違いなく天才で,どれほどの天才だったか,という逸話がいくつもあります.
「光電効果」を発見し,「相対性理論」を提唱したアインシュタインは,いうまでもなく科学史を通しての天才でしょう.このアインシュタインが「われわれの世代の一番の天才はノイマンだ」いうほどでした.
さて,このノイマンですが,計算能力も非常に長けていたと言われています.
ノイマンに関する逸話として「電話帳をぱっと開いて,電話番号の総和を言って遊んでいた」とか「ENIAC(1946年に発明された計算コンピュータ)に計算勝負で勝利した」など異常なまでの計算能力を示すものが様々あります.
彼は間違いなく天才でしょう.
しかし,彼ほどの天才でなければ,普通は計算ミスをしないなどあり得ません.
むしろ,ノイマンのように,計算ミスをしない人がいれば,その人は天才といっていいでしょう.
なので,「計算ミスをなくす」のではなく,「計算ミスを減らす」という意識を持つことが大切なのです.
計算ミスを減らす方法
さて,「計算ミスはしてしまうもの」という前提がある以上,計算ミスをどうやって「減らすか」という観点に立つ必要があります.
大まかに次の2つがあります.
- 計算に慣れる
- 上手く計算する
計算に慣れる
当たり前といえば当たり前ですが,単純に「慣れる」というのはとても大切なことです.
【今まで解けていた問題を復習するときに意識すべきこと】にも書いたですが,復習の目的は
- 実力がついているかを確認する
- 解答スピードを上げる
です.
計算の訓練をする場合,「実力がついているかを確認する」というより「解答スピードを上げる」という色が強くなります.何度も繰り返すことで当然,スピードは速くなります.
単純ですが,「問題集を何度も解く」ことで計算の「コツ」が身に付き,計算の「正確性」と「スピード」は上がります.
このときの「スピード」は,「手が止まらず最後まで計算し切れる程度」がおすすめです.「ノンストップで解く」というのは結構難しいですよ.
上手く計算する
計算ミスをする原因は複雑な状況に対する不注意ですから,複雑な計算を簡単な計算として見なすことができればいいのです.計算の仕方は一通りではありませんから,どのように計算すると楽かと考えるのです.
たとえば,$17\times19$を私は暗算で計算します.ただし,「$17\times10$で$170$になって,$17\times9$は……」というように力ずくの暗算はしません.
$17\times9$を力づくで暗算しようとしても慣れれば難しくはありませんが,うっかりすると間違えてしまいかねません.
私は次のように計算します.
「$17\times19$は$17$を$19$回かけたものやから,$17$を$20$回かけて$17$を引けばいい.」
こう考えると,暗算でも「$17\times20=340$から$17$を引いて$323$」とすぐに答えが出せます.式で書くならば
$17\times19=17\times20-17=340-17=323$
となります.
計算ミスが少ない人は,計算に大して意識を向けなくて済むような計算の仕方をしているのです.ですから,計算ミスが少ない上に速く計算できるのです.
この例は簡単なものでしたが,計算は工夫することでぐっと計算が楽になることも多いです.
これはすぐに体得できるわけではありません.
没頭すると計算から身を引いて考えることができなくなり,ガリガリと計算をしてしまいがちです.しかし,普段から計算から一歩身を引いて,もう少し簡単に計算できないかを考えれば少しずつ計算が上手くなります.