この記事では,2020年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問3」の考え方と解法を説明します.
この問題のポイントは,
- 条件式から図形の対称性を見極められるか
- 適切に座標上におけるか
です.
普段から,このような問題で実験する習慣が身についていれば,方針を立てることはさほど難しくないでしょう.
2020年度の理系数学の解説はこちら
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問1】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問2】
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【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問4】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問5】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問6】
問題のイメージ
2020年度京都大学前期入試の「理系数学の問3」は以下の通りです.
$k$を正の実数とする.座標空間において,原点Oを中心とする半径1の球面上の4点A, B, C, Dが次の関係式を満たしている.
このとき,$k$の値を求めよ.ただし,座標空間の点X, Yに対して,$\Ve{OX}\cdot\Ve{OY}$は,$\Ve{OX}$と$\Ve{OY}$の内積を表す.
ベクトルの問題です.
- $\Ve{OA}\cdot\Ve{OB}=\Ve{OC}\cdot\Ve{OD}=\dfrac{1}{2}$
- $\mrm{OA}=\mrm{OB}=\mrm{OC}=\mrm{OD}=1$
を併せると$\ang{AOB}=\ang{COD}=60^\circ$なので,$\tri{AOB}$, $\tri{COD}$はともに正三角形です.
また,2つめの条件より点A, Bは直線OCに関して対称で,同様に3つめの条件より点A, Bは直線ODに関して対称ですから,正三角形AOBと正三角形CODは垂直です.
このことから,正三角形AOBと正三角形CODが垂直を保った状態で,$\Ve{OA}\cdot\Ve{OC}=\Ve{OB}\cdot\Ve{OC}=-\dfrac{\sqrt{6}}{4}$が成り立つような位置になったときの,$\Ve{OA}\cdot\Ve{OD}=\Ve{OB}\cdot\Ve{OD}$の値を問われているわけですね.
解法と考え方
問題文で「座標空間上」とヒントをくれているので,座標において解きましょう.
座標におく
図形を座標上におくときは,回転・平行移動して計算しやすいようにおくのがセオリーですね.
本問では三角形AOB,三角形CODが正三角形と分かりやすい図形なので,三角形AOB,三角形CODが考えやすいように座標におきましょう.
例えば,
- $\mrm{A}\bra{\dfrac{\sqrt{3}}{2},\dfrac{1}{2},0}$
- $\mrm{B}\bra{\dfrac{\sqrt{3}}{2},-\dfrac{1}{2},0}$
と2点A, Bは$xy$平面上におきましょう.
正三角形AOBと正三角形CODが垂直だから,2点C, Dは$xz$平面上に存在するので,
- $\mrm{C}\bra{\cos{\theta},0,\sin{\theta}}$
- $\mrm{D}\bra{\cos{\phi},0,-\sin{\phi}}$
とおけますね.
解答
以下,解答例です.
[解答]
条件$\Ve{OA}\cdot\Ve{OB}=\dfrac{1}{2}$と,球の半径が1であることから$|\Ve{OA}|=|\Ve{OB}|=1$であることを併せて,
が成り立つ.よって,$\ang{AOB}=60^\circ$である.
また,三角形AOBは$\mrm{OA}=\mrm{OB}$の二等辺三角形でもあるから,三角形AOBは正三角形である.同様に,三角形CODも正三角形である.
ここで,座標空間上に2点A, Bを
- $\mrm{A}(\cos{30^\circ},\sin{30^\circ},0)=\mrm{A}\bra{\dfrac{\sqrt{3}}{2},\dfrac{1}{2},0}$
- $\mrm{B}(\cos{(-30^\circ)},\sin{(-30^\circ)},0)=\mrm{B}\bra{\dfrac{\sqrt{3}}{2},-\dfrac{1}{2},0}$
とおく.また,$\mrm{C}(a,b,c)$とおくと,
となるから,結局$\mrm{C}(\cos{\theta},0,\sin{\theta})$とおける.同様に$\mrm{D}(\cos{\phi},0,\sin{\phi})$とおけ,三角形CODが正三角形であることから$\phi=\theta\pm60^\circ$が成り立つ.
よって,
となる.よって,
である.$k>0$より
となる.
[解答終]
【次問の解説:解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問4】