この記事では,2020年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問6」の考え方と解法を説明します.
この問題のポイントは,
- 正しく図形を捉えられるか
- 断面積から積分の立式・計算ができるか
です.
与えられた式は少々複雑で不気味ですが,断面積を求めて積分するというセオリー通りの問題なので,是非とも解きたい問題ですね.
2020年度の理系数学の解説はこちら
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問1】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問2】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問3】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問4】
【解答例と考え方|2020年度|京都大学|理系数学問5】
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問題のイメージ
2020年度京都大学前期入試の「理系数学の問6」は以下の通りです.
$x$, $y$, $z$を座標とする空間において,$xz$平面内の曲線
を$z$軸のまわりに1回転させるとき,この曲線が通過した部分よりなる図形を$S$とする.この$S$をさらに$x$軸のまわりに1回転させるとき,$S$が通過した部分よりなる立体を$V$とする.このとき,$V$の体積を求めよ.
回転体の体積の問題です.
$xz$平面での曲線$z=\sqrt{\log{(1+x)}}$ $(0\leqq x\leqq1)$は
- $x=0$で$z=0$
- $x=1$で$z=\sqrt{\log{2}}$
となる単調増加なグラフをもちます.
よって,この曲線の$z$軸のまわりの回転体$S$は原点で「尖った」図形になりますね.
この回転体$S$の回転体$V$の体積が本問で求められているものですね.
解法と考え方
対称性を利用して,少しでも計算を楽にしましょう.
回転体の体積は断面に注目
回転体$S$は$x\geqq0$の部分と$x\leqq0$の部分で対称なので,$x\geqq0$の部分の$S$の回転体$V$の体積を求めて2倍すれば良いですね.
さて,回転体$V$の体積を考えるためには,回転前の図形$S$の断面を考えることが大切です.
つまり,$x$軸のまわりで回転させるので,$x=t$ ($0\leqq t\leqq 1$)での$S$の断面を考えます.
$t\leqq s\leqq 1$とし,曲線の$x=s$の点Pが$z$軸のまわりの回転で$x=t$を通るときの,$x$軸との距離を考えます.
$z$軸正方向からこの図形$S$を見下ろすと,下図のように点Pが回転します.
ここでも,対称性から$y\geqq0$での断面を考えればよく,$x=t$での$S$の断面は下図のようになります.
回転体の体積
一般に,回転体の体積は断面積を積分することによって求まります.
よって,$x=t$での図形$S$の断面の$y\geqq0$での曲線は上図のように単調増加なので,
- $y=0$のときが$x$軸に最も近く,
- $y=\sqrt{1-t^2}$のときが$x$軸から最も遠い
ということになります.
よって,$x=t$での立体$V$の断面は下図の灰色部分になります.
この面積を$t=0$から$t=1$まで積分し,2倍すれば求める体積が得られますね.
解答
以下,解答例です.
$f(x)=\sqrt{\log{(1+x)}}$とし,$0\leqq t\leqq 1$なる$t$をとる.
$y=0$かつ$z=f(x)$上の点$\mrm{P}(s,f(s))$ $(t\leqq s\leqq 1)$を考える.点Pを$z$軸の周りで回転させると,$x=t$上の点
を通る.
この点と$x$軸との距離は
である.$g(s)=\sqrt{s^2-t^2+\log{(1+s)}}$とする.
$g(s)$は単調増加なので,$x=t$の$S$の断面上の
- $s=t$ ($y=0$)のときの点が$x$軸に最も近く,
- $s=1$ ($y=\sqrt{1-t^2}$)のときの点が$x$軸から最も遠い
と分かる.ただし,$x=t$の$S$の断面は$y$軸対称であることに注意する.
よって,$x=t$での$V$の断面積は下図の灰色部分のようになる.
これより,
となるから,$V$の体積は
となる.