この記事では,2021年2月25日に行われた京都大学前期入試の「理系数学の問4」の考え方と解法を説明します.
この問4のポイントは
- 曲線の長さを求める公式を扱えるか
- $\dfrac{1}{\cos{x}}$の積分を計算できるか
です.
曲線の長さを求める問題は面積や体積を求める問題よりもマイナーではありますが,しっかり出題範囲なのでしっかりフォローしておいてください.
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問題
2021年度京都大学前期入試の「理系数学の問4」は以下の通りです.
曲線$y=\log{(1+\cos{x})}$の$0\leqq x\leqq\dfrac{\pi}{2}$の部分の長さを求めよ.
$\cos{x}$は$0\leqq x\leqq\dfrac{\pi}{2}$で単調減少なので,$\log{(1+\cos{x})}$も$0\leqq x\leqq\dfrac{\pi}{2}$で単調減少となります.
$x=0$で$y=\log{2}$,$x=\dfrac{\pi}{2}$で$y=0$なので,実際にグラフを描くと下図のようになります.
本問ではこのグラフの長さを求められているわけですね.
考え方
曲線$y=f(x)$の長さの公式が分かっていればあとは単純な計算です.
曲線の長さ
曲線の長さを積分で求めるには次の公式が重要です.
$a\leqq x\leqq b$で定義される関数$f(x)$は微分可能で導関数$f'(x)$は連続であるとする.このとき,曲線$y=f(x)$の$a\leqq x\leqq b$での長さは
である.
この定理の気持ちを説明しておきます.
積分は「対象を細かく刻んで足し合わせる」というのがベースの考え方ですから,曲線の長さも「曲線を細かく刻んで足し合わせる」という考え方から積分を用います.
曲線を細かく切り刻むと1つ1つの切れ端はほとんど直線のように見えますから,十分小さい幅$\varDelta{x}$を考えて,$x$から$x+\varDelta x$で曲線をみると
となり,この部分の長さ$\varDelta{\ell}$を両端の2点$(x,f(x))$, $(x+\varDelta{x},f(x+\varDelta{x}))$を結ぶ線分で近似すると,三平方の定理より
となります.
よって,両辺を$\varDelta{x}$で割って$\varDelta{x}\to0$を考えると
が成り立つと考えられるので,これを$a\leqq x\leqq b$で足し合わせて,$a\leqq x\leqq b$での曲線の長さ
が得られるというイメージです.
この考え方が分かっていれば,公式を覚える必要もないことが分かるでしょう.
$\dfrac{1}{\cos{x}}$の積分
$\dfrac{1}{\cos{x}}$, $\dfrac{1}{\sin{x}}$の積分は教科書にも載っているレベルで確実に計算できるようになっておきたいところです.
となります.
一般に$\dint f(\sin{x})\cos{x}\,dx$の形の積分は$t=\sin{x}$とおくと$\dint f(t)\,dt$となって計算しやすくなることが多いのは当たり前にしておきたいところですね.
この積分でも,$t=\sin{x}$とおけば$\frac{dt}{dx}=\cos{x}$なので,部分分数分解と併せて
と計算できます($C$は積分定数).
なお,慣れれば置換するまでもなく積分できるようになるので,そのレベルを目指してほしいところです(解答例参照).
解答例
以下,解答例です.
$y=\log{(1+\cos{x})}$を$x$で微分して
となるから
である.ただし,
- 最後から2つ目の等号では,2倍角の公式$\cos{x}=2\cos^2{\dfrac{x}{2}}-1$
- 最後の等号では,$0\leqq x\leqq\dfrac{\pi}{2}$で$\cos{\dfrac{x}{2}}\geqq0$
を用いた.さらに
である.
よって,求める曲線の長さは
である.
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