「知らなかったことを知ったり,できないことをできるようにすること」を勉強といいます.
「んなこと分かっとるわ!」と言われそうですが,本当にそれは実力のつく勉強になっていますか?
今日やった勉強で今日はできるようになったとして,それが明日,1週間後,1ヶ月後にまで残っていないと,それは「実力」とは呼びません.
もちろん,1回やってずっと覚えていることはあり得ませんが,昨日やった内容程度は思い出せないとマズいです.
昨日の勉強では,「どの科目」の「どの分野」の「どんなポイント」の「どんな問題」だったか,をきちんと言えますか?さらに,それができたとして,その問題を応用できますか?
そのために,
- 今やっている勉強の位置付けを明確にする
- ポイントを捉える
- 勉強のあとに振り返る
を意識するだけでも,勉強の効果はかなりアップします.
「学校の定期試験で成績が伸びた」というのはとても喜ばしいことですが,「成績が伸びた」からといって「実力がついた」とは言えないことには注意しておきたいところです.今できることが,明日,1週間後,1ヶ月後にまで残っていて,初めて「実力がついた」と言えます.
この記事では,実力をつけるための勉強法を脳科学的な側面から簡単に説明します.
今やっている勉強の位置付けを明確にする
結局のところ,今やっている勉強が入試の日に使えないと,時間の無駄とまでは言いませんが,今やっている勉強がかなり勿体無いことには違いありません.
ですが,昨日やった勉強の内容程度は覚えておいてしかるべきです.
「昨日はこの分野のこんな問題をやった.そして,ポイントはアレで解答はこうだ.」と言えなければ,昨日やった勉強は身に付いていません.
これを防ぐためには,「今やっている勉強で何に向かっているのか」ということをきっちり意識しておくことが大切です.
同じ分野のものが関わっていることは言うに及ばず,文系科目と理系科目の間でさえ繋がりがあることさえあります.
そのように,それぞれの知識が独立している「点の知識」ではなく,いろんなものと繋がりを持った「線の知識」として理解しておきたいところです.
「線の知識」は重要ですが,それだけでなく「点の知識」を繋げて勉強することでずっと忘れにくくなります.
ですから,「今やっている勉強は全体のどういう位置付けで,この分野とはこういう点で関わっている」ということを意識して勉強したいところです.
これをきちんと把握できていると,次の日に振り返ったとき,自分がどういうことをやっていたのかを思い出すことができます.
例えば,「点の知識」を「線の知識」できちんと繋げるのに特化した勉強法としては,「メモリーツリー」が挙げられます.
知らない人は是非調べて欲しいのですが,「メモリーツリー」は1つの知識を深める勉強法ではなく,多くの知識の関係性を理解する勉強法です.
「メモリーツリー」を使うと,自分の勉強の位置付けが理解できます.
これにより,自然に目標が明確になり,見通しよく勉強することができるようになります.
様々な知識を繋げて理解することで深い理解となり,忘れにくい知識となる.
ポイントを捉える
「問題を解いて間違えたからもう一度解いた.すると,その問題は何も見ずに解けるようになった」
これは,きちんとやり直しをしていますし,とても素晴らしいことです.
しかし,そこで次の問題に進んでしまうのは,大切なことが抜け落ちており,とてももったいないのです.
たとえば,3つの類問(1),(2),(3)があったとして,「(1)は解けたのに(2)は解けない.(2)をやり直して(2)は解けるようになったのに,今度は(3)が解けない.」ということが,特に苦手な科目によくあります.
これは,なぜでしょうか?
生徒「(2)が解けません.」
私「じゃあ,(1)はなんで解けたの?」
生徒「これがこうなってて,この公式を使えるからです.」
私「じゃあ,(2)はそうなってないの?」
生徒「……いや,なってます!形はちょっと複雑だけど,その公式使えます!」
このような会話は,私と生徒の間で本当によくあります.
この生徒は公式を適切に使えますし,分かっていないわけではないのです.
問題集の(1)は公式をそのまま使える問題が多いのですが,(2)や(3)では少しひねって出題してきます.
しかし,本質は同じなので,(1)が「なぜ解けたの」かがきちんと見極められていれば(2)や(3)も解けるはずなのです.
ですから,基本問題を解いたあとは「なぜその問題が解けたのか」を考えるようにしてください.ポイントとなる部分には印を付ける癖をつけると良いです.
解答を追うことができても,「なぜその問題が解けたのか」を言えなければ,ただ公式を丸暗記的に適用しただけでよく分かっていない恐れがあります.
逆に,「なぜその問題がその解法で解けたのか」を言えれば,同じ「なぜ」が使える問題は同じ解法で解けることになります.
基本問題から得るべきものは「なぜその問題が解けたのか」という「セオリー(定石)」です.
基本問題が解けても「定石」が分かっていないと,少しひねられただけで解けなくなってしまいます.
「なるほど,そういうことか!!」と納得したことは今でも記憶に残っている,という経験は誰にでもあるはずです.
自分で「なるほど!」と納得できるように「なぜ」の答えを探すことで,頭に定着させるのです.
「えー,そんなに時間ないし……」と遠回りに思うかもしれませんが,一回少し時間をかけて「なぜ」を理解してしまえば,その後の問題も解けるはずですし,ポイントをおさえて解けるのでスピードも上がります.
逆に,「なぜ」が理解できていないと,いずれまた忘れ,一からやり直すハメになります.こちらの方がよっぽど時間がかかります.
問題を解いたあとは,「なぜその問題がその解法で解けたのか」を考えることで,少し捻られても解ける柔軟性が身につきます.
勉強のあとに振り返る
勉強が終わった後に,そのときにした勉強を頭の中で思い返すことも効果的です.3分から10分程度で構いません.
学校の帰りなら,電車の中で思い返すことでもいいです.分かっていなかったらノートで確認できます.
一日に何時間も勉強すれば,大まかには覚えていても細かい部分は意外と忘れているものです.
それを最後にもう一度思い返してみるのです.そして,思い出せなかったらしっかり確認します.
思い出す頻度が高い情報は長期記憶に残りやすいということは,以下の記事でも説明しています.
【英単語の暗記法1|目指すべき英単語レベルと効率的な暗記法】
【英単語の暗記法2|「反復記憶法」が有効な5つの理由と注意】
1つ1つ時間をかけて英単語を覚える方法は,記憶法としては効率が悪いです.例えば,30個程度の単語を用意し,これを何度もぐるぐる繰り返す方法が非常に効率が良い方法なのです.
また,この暗記法を実践することによって,単に英単語の覚える効率がアップするだけではなく,英文を読むスピードもアップします.
忘れた頃に意識的に復習を行うことで,勉強の効果はアップします.
何度も思い出す情報は長期記憶に残りやすい.よって,忘れた頃に復習することで定着度が上がる.