苦手科目を勉強していると,すぐに壁にぶつかります.
苦手科目で「頑張ってその壁を乗り越えろ」と言われても,その壁を乗り越えられるのならその科目は苦手ではないはずで,乗り越えられないから苦手科目なのです.
さらに,苦手科目は同時に嫌いな科目であることも多く,壁を乗り越える努力もあまりしたくない,という心理にもなります.
「んなもん知るか!やれよ!」というのは簡単ですが,それでは何の解決にもなりません.
この記事では,そのような苦手科目で壁にぶつかった時に,どうやってその壁を克服するのかを考えてみます.
目次
目標を設定する
目標を設定するだけで,苦手科目も見通しよく勉強できるようになります.
その勉強は「作業」になってない?
例えば,小学校の頃は「音読」という宿題を出されることがよくあります.
「音読」を「ただ声出して読んだらええんやろ!」というA君と,「しっかり意味を考えて読もう!」というB君がいたとして,どちらの方が国語の成績が良くなるでしょうか?
おそらく,多くの人がB君を選ぶことと思います.
課題が出されたとき,その課題を「とりあえず終わらせる」とか「やっただけ」というのは勉強ではありません.単なる「作業」です.
「作業」になっていれば,これではせっかく課題をやったとしても身に付きません.
課題が出されたときだけではなく,普段から「作業」にならないように勉強することが必要です.
とくに「いま何をやっているのか分からない」ときに,「作業」になってしまうことが多いです.
意外と「作業」になりがち
小学校の音読の例はとても分かりやすいので,「そんなん分かってるわい!」と思う人も少なくないかもしれません.
しかし,
- 問題を解いて,答え合わせをする
- 間違えた問題を復習する
- 分からない分野の教科書を読む
といった勉強法も,一歩間違えれば「作業」になってしまいます.
- 昨日解いた問題で何ができるようになりましたか?
- 間違えた問題はどうして間違えたんですか?正しい答えはどうやって発想すればいいんですか?
- 具体的に何を知りたかったんですか?
といった質問に答えられますか?
- 「これができないから,できるようにするためにこの問題を解いた」
- 「ここがうまくいかないから間違いだった.この部分がこうだから,正しい答えはこう」
- 「この部分を整理したかったから教科書を読んだ」
と「どうしてその勉強をしたのか」はいつでも答えられないといけません.
勉強するのはいつでも「何かをできるようにするため」にするんです.
ここはブレちゃいけないんですよ.
だから,「何のためにそれをやるのか」は勉強の前に明確にしておくのはめっちゃ大事なんです.
「作業」を回避するために
「何のために」が明確にあれば,そのために真っ直ぐ進めます.
つまり,「目標を設定する」ことで勉強が「作業」になりにくくなるわけです.
目標を設定するかしないかで,勉強の結果が変わってくるのです.
目標を設定していないと,何をするべきなのかが曖昧になり目移りしてし,いま何をしてるのかが分からなくなってしまいます.
これを「目標の分散」ということにしましょう.
とくに,苦手科目は「あれもやってない,これもやってない」と出来ていないところが目に付きやすいため,無駄に焦り目移りするのです.
ですから,苦手科目ほど「目標の分散」は起こりやすいのです.
勉強とは「出来ないことを出来るようにすること」です.出来ないところを1つ1つ潰していくのが勉強です.
あれもこれも同時にいくつもできるようになろうとするのはよくありません.
ですから,「いま何をやっているのか」を明確にし,「今はこれをやる」と決めて「目標の分散」が起きないようにすることが大切です.
これが目標を設定して勉強する意義です.
「作業」では身に付かない.自分がすべきことを明確にし,目標を設定してできないところを1つ1つ潰していく.「その勉強で何ができるようになるのか」を常に意識する.
見通しよく考える
もちろん,ただ漠然と目標を立てるのでは良くありません.
目標のステップ
目標にもステップを作るのが大切です.
たとえば,ある人の目標が「プロ野球選手になる」だったとします.しかし,プロ野球選手になるために,できるようになっておくべきことは多いはずです.
そこで,「守備が上手くなる」「打率を上げる」といった目標を立てますが,まだ曖昧ですね.
「守備が上手くなる」なら「捕球してから投げるまでを速くする」とか,いろんな要素があります.
これは勉強でも同じです.
予備校でも生徒の面談をしていて,「理系科目が悪いから,理系科目の成績を上げる」と言う生徒がたくさんいます.
もちろん目標としては間違っていませんが,
「おいおい,ちょっと待て!これまで上げることがでけへんかったから,今この成績なんやろ.
そんな簡単に上げられるなら既に成績上がってるやろ!」
と私はツッコミたくなるわけです.
細かい目標設定が大切
この「理系科目が悪いから,理系科目の成績を上げる」というのは,「守備が上手くなる」とか「野球が上手くなる」とかそのレベルでしかないわけです.
「守備が上手くなるためにはどんな練習するんや?」というところが不透明なわけです.
つまり,目標設定が大雑把過ぎるのです.目標が荒いというのは,言い換えれば見通しが悪いということです.
ですから,「目指す場所が定まらない」「目移りする」といった状況に陥り,やはり「目標が分散」してしまいます.
理系科目の成績を上げたいなら,もっと細かい目標設定が必要です.
繰り返しますが,「理系科目の成績を上げる」という目標設定が悪いわけではありません.そこではなく,「この分野は基礎から潰す」や「最低限の公式は使えるようにする」などの,細かい目標設定がないことが問題なのです.
「何をすればいいのか分からない」というのであれば,「『今日は』この分野のこの部分を理解する」というような,「今日の目標」で構いません.
そして,一度目標を定めたら,あとはそこを目指せばいいだけです.
慣れてくれば自分がどれくらい進められるかが分かってくるので,目標もどんどん具体的にたてられるようになります.
今の自分に必要なものを把握して,細かい目標を立て,見通しをよくする.
やる気を出す方法
さて,最後に「やる気」についても触れて起きます.勉強の質には「やる気」が関わってくるのは当然です.
やる気が起きないときは,「まずはやってみる」ということを心掛けます.
例えば,「年末に大掃除を渋々始めたはずが,気付けば1日中続けていた」ということはよくあります.
実はこの「一度始めると,やる気が持続する」というのは,根性論でも何でもなく,心理学的に「作業興奮」と言われる心理現象です.
「やる気」というのは,出るときもあれば出ないときもあります.体の状態や精神の状態で「やる気」は大きく変わってきます.
とくに苦手な科目の「やる気」はなかなか出ませんが,当然「やる気」を理由にして勉強せずにいるわけにはいません.
そこで「作業興奮」を利用するのは1つの手です.「まずは何かをやってみる」のです.
それこそ,「教科書を開くだけ」でも構いません.教科書を開けば,自然に教科書を読み出すでしょう.そうなればもうこっちのもんです.
「作業興奮」のいいところは「やる気を出すのは始めだけで構わない」というところです.
「あ〜,今日はこの範囲の宿題やらなあかん……」
と全体像を見てしまうとなかなかやる気が湧きませんが,
「まあ,1問目だけでもやってみるか」
だとずいぶんハードルが下がりますよね.
このように,「やる気が出ないなあ」と思ったら,「とりあえずやってみる」ということがとても有効です.
やる気が出ないときでも,まずは簡単なことでも「始める」ことが大切.