今では読書感想文の指導をする私ですが,高校あたりまで「読書感想文ってどうやって書いたらええんや……」と毎年悩んでいました.
今から考えれば読書感想文では
- 読書感想文を書くためにどう読むか
- 読書感想文では何を書くべきか
- 読書感想文を書くためのステップ
が分かっていなかったので書けないのは当然です.
当時の私はそもそも「読書感想文に書き方がある」ということすら分かっていませんでしたから,悩むのは当然の帰結でした.
しかし,上の3つが分かれば,これまでなかなか進まなかった読書感想文の「内容」も「書きやすさ」も大きく変わります.
この記事では,読書感想文の書き方を上の3つに分けて全部で8つのポイントを考えます.
読書感想文では何を書くべき?
まるで本の紹介かのような読書感想文をよく見かけますが,これは間違った読書感想文です.
【ポイント1】あくまで感想文である
読書感想文で要求されている内容はその本のあらすじではなく,あくまで「感想文」であるということを忘れてはいけません.
本を読んで感じたことは10人いれば10通りあるはずで,考えたこと,つまらなかったこと,驚いたことなど,印象深かった点について書くのが読書感想文です.
あなたが映画を見て感動したとき,挑戦していたことがうまくいったとき,何かいいことがあって嬉しかったときには,誰かにそれを話したくなりますね.
その内容を伝えようと相手に話しますが,これはまさに感想文を即興で書いているのと同じことなのです.
このように本を読んで人に伝えたくなることを文章で説明するというのが,まさに読書感想文なわけですね.
これまで「読書感想文で何を書けばいいのか分からない……」と思っていた人は,「感想文」ということを意識できるだけで読書感想文がガラッとよくなります.
【ポイント2】普段の国語の授業との違い
国語の授業には,主に次の2つの目的があります.
- 文章を正しく読み取れるようになること
- 文章で正しく伝えられるようになること
普段の国語の授業
普段の国語の授業は「教科書の文章を読んで,『筆者の主張』や『登場人物の心情』を理解する」といったものが多いですね.
言い換えれば,教科書に載っている評論や小説を読んで,その著者の意図や表現を読み取るのが普通の国語の授業です.
つまり,普段の国語の授業は1つ目の「文章を正しく読み取れるようになること」の方に偏っていることが多いです.
あなたが喋るときも何か伝えたいことがあるから喋るのであって,何も伝えたいことがないのに何かを喋るということはほとんどないと思います.
小説の作者や評論の著者も同じで,文章を使って「伝えたい何か」を届けようとしているわけですね.つまり,我々が読む文章には何かしらのメッセージが詰まっているはずなのです.
このように,普段の国語の授業では何かを伝えたがっている作者や著者といった「文章の向こう側の人」を理解しようとしているわけですね.
読書感想文
2つ目の「文章で正しく伝えられるようになること」は,あまり普段の国語の授業では扱いません.
というのは,何かがあったときにそれに対するものの感じ方は千差万別だからです.このため,これを国語の授業でやろうとすると,膨大な時間がかかってしまいます.
本当は国語の授業でも「文章で正しく伝えられるようになること」を重視した内容も取り扱いたいところですが,残念ながらそれは難しいのです.
そこで,「文章で正しく伝えるように」と国語では夏休みなどの長期休暇に読書感想文を課しているわけです.
つまり,読書感想文では「文章を書いて,伝える能力を磨く」ということが目的にもなっているわけです.
こう考えると,読書感想文は普段の国語の授業でやっていることとはずいぶん違うわけですね.
読書感想文を書くための読み方
このように,読書感想文は「感じたこと,考えたことを自分の言葉でどうやって表現できますか?」という課題なわけですから,ただ漠然と読むだけでは感想文に繋げるのは難しいです.
ここでは,読書感想文を書くための読み方を考えていきましょう.
【ポイント3】感想のネタ
感想のネタにしやすいのは
- 本の内容と自分のズレ
- 本の内容と自分の共通点
を感じた部分です.
本の内容と自分のズレを感じた部分
どんなに似ている人でも考えていることが全く同じだということはありません.
もちろん著作者とあなたの間にも「ズレ」があるはずです.本を読んでいて感じたそういった「ズレ」には驚きや反発が生まれるので,読書感想文のネタになります.
- あなたはそのような驚きをもった理由は?
- その部分に反発を覚えた理由は?
それを自分の中で探して書けば「あなたが感じたこと,考えたことを表現した文章」ですから,これは立派に読書感想文です.
本の内容と自分の共通点を感じた部分
また,「共感」を覚えた箇所も感想のネタになります.
- 自分が体験した似た出来事
- 普段から自分が思っていること
などがあればそこから感想を掘り下げることができますね.
付箋など目印をつけておくと便利
本を読んでいる間に何も印をつけずに読み進めてしまうと,読み終えたときにどこをネタにしようとしていたか忘れてしまいます.
そのため,読んでいる途中で「感想のネタ」になりそうな部分には付箋などを貼って目印をつけておきましょう.
ただ付箋を貼るだけでも良いですが,どうしてその部分に付箋を貼ったのかをメモしておくと,後で見返しやすいです.
これだけで読んだ後の手間がグッと減り時間短縮にも繋がりますし,本全体の感想を見渡しやすいので読書感想文の構成を考える際にも役立ちます.
一文一文が分かりやすいことは大切ですが,それと同じくらいどの順番で説明するかという文章構成も良い文を書く上では重要です.
【ポイント4】オリジナリティ
単に「〜は違うと思った」や「〜には共感できる」で終わっていては,読み手としても面白くありません.
先ほど書いたように,その感想を抱いた理由を
- 出来事
- 普段の考え
- 将来設計
など自分にしか書けないことがあれば,オリジナリティのある感想文になります.
誰でも書けるような月並みな内容よりも,その人にしか書けない他では読んだことのないような文章の方が面白いですよね.
そういったオリジナリティのある文章の書けそうな部分は積極的に目印をつけていきましょう.
【ポイント5】ネタは少ない方が良い
さて,「この記事はいつまで続くんや……」とそろそろ読むのがしんどくなってきた頃でしょうか?
全部で8つのポイントを書きますから,ここまでで大体と少しですね.それではこのあたりでひとつ問題を出しましょう.
あなたが読んでいるこの記事はここまで,およそ何字くらいでしょうか?
この記事はここまでで約2500字です.
夏休みの宿題で課される読書感想文の分量は400字詰めの原稿用紙3枚〜5枚程度であることが多いですから,既に大幅にオーバーしている計算になりますね.
しかし,見返して頂けると分かるように,大きな見出しは「読書感想文では何を書くべき?」と「読書感想文を書くための読み方」の2つしかありません.細かい見出しでもたかだか5つほどです.
このように,1つのネタを掘り下げることができれば,少しのネタであっても2000字程度は十分に書けてしまうのです.
多くのネタを使おうとすると,いちいち新しい感想を必要とするので書くのが意外と難しく,1つ1つの内容が浅い面白くない感想文になる可能性が高いです.
ですから,「掘り下げやすい」と思った部分も積極的に目印をつけていきましょう.
読書感想文を書くための4ステップ
ここまでで読書感想文ではどのようなことを書くべきか,どのように本を読むべきかを中心に考えてきました.
ここからはどうすれば実際にそのような読書感想文が書けるのかというオススメの手順を説明します.
【ポイント6】感想のネタを選ぶ
感想のネタになりやすいところには付箋をしておくと,読み終えたあとに「ネタ」を探しやすいことは先ほど説明した通りです.
感想のネタを探して読んでいれば,付箋は少なくとも5枚以上にはなっていることでしょう.
その中で自分が強く印象に残った掘り下げやすい部分を2ヶ所〜4ヶ所程度選びます.
ひとつのネタで原稿用紙1枚〜2枚という想定ですね.
原稿用紙1/2枚くらいの分量ではあまり掘り下げられないので内容が浅くなってしまう上に,話がぴょんぴょん飛んでかなり読み辛い感想文になってしまいます.
ここで選ぶネタで読書感想文の方向性が決まります.
【ポイント7】ネタを掘り下げる
いま選んだ2ヶ所〜4ヶ所程度の「感想のネタ」について,なぜそれらのポイントが印象深かったのかを考えましょう.
このときのために,付箋などに印象強かったポイントをメモをしていると便利ですね.
その箇所が強く印象に残った理由はなんでしょうか?
- 子供の頃にあった出来事
- 今思い悩んでいること
- 将来に描いている夢
など,自分の中にあるものと関連付けて理由を探しましょう.
これをしておくと,ひとつのネタを深く掘り下げやすくなりますし,自分にしか書けないオリジナリティのある感想文になりますね.
ここで考える感想を抱いた理由は,ストーリーからかけ離れたものであっても全く問題ありません.
先ほども説明したように,著作者は何か伝えたいことがあって,それを表現するために本を書いているのであってストーリー自体が本質なのではありません.
著作者はあくまで表現したいことを表現するためにストーリーを利用しているに過ぎないので,著作者の表現したいことをきちんと読めていることが大切です.
【ポイント8】文章構成を考える
ここまでで読書感想文を書く内容の準備が整いました.
伝えたいことを「分かりやすく伝える」ことはとても大切で,そのために大切なことは文章構成です.
伝えたい内容がいかに素晴らしくても,文章構成が悪ければ伝わらないことはよくあります.
全体の構成は
- 全体のあらすじ
- 感想1
- 感想2
- ……
- まとめ
とするのが基本的でシンプルに仕上がります.
「まとめ」はなくてもそれほど問題はありませんが,効果的に締めることができれば良い読後感のある文章に仕上がります.
全体のあらすじ
読書感想文は本の紹介文ではありませんが,基本的に感想文の読み手はその本を知らない前提で書きます.
そのため,最初に「こんな内容の本ですよ」と簡単なあらすじを長くても原稿用紙1/4に収まる程度にまとめます.
とはいえ,全体のあらすじは感想を書くための準備ですから,重要度はそれほど高くありません.
ここでダラダラしてしまうと,出だしから冗長な感想文になってしまうので,サクッと書いてしまうのがスマートでかっこいいです.
感想
続いての「感想」が読書感想文のメインです.準備しておいた
- ネタのあらすじ
- 感想を抱いた理由
- 掘り下げ
を投入します.
ひとつ感想につき原稿用紙1枚程度は使いたいところです.
このとき,「ネタのあらすじ」が自然に読めるように,最初の「全体のあらすじ」が書けていると読みやすくて良いですね.
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