展開公式
は当たり前にしておきたい公式ですね.
では,一般に$(a+b)^n$はどのように展開できるでしょうか?
実は組み合わせの考え方を用いると,$(a+b)^n$の展開公式である二項定理を導くことができます.
この記事では
- 二項定理はどんな定理か?
- 二項定理の考え方
を順に説明します.
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二項定理
結論から言えば,$(a+b)^n$は次のように展開されます.
[二項定理] 実数$a$, $b$と正の整数$n$に対して,
が成り立つ.
この展開公式を二項展開といい,このことから係数の$\Co{n}{k}$を二項係数ということもあります.
$\Co{n}{k}=\Co{n}{n-k}$という基本公式を思い出すと,係数は全て逆順でもいいですね.つまり,
と書いても正しいですね.
また,$\Co{n}{n}=\Co{n}{0}=1$ですから,$a^n$の係数と$b^n$の係数は常に$1$ですね.

組み合わせのₙCₖを考え方から基本性質まで攻略
例えば次の問題を考えてみましょう.
$(a+b)^{7}$を展開せよ.
二項定理を使えば次のように比較的簡単に展開することができます.
二項定理より
となる.
各$\Co{7}{k}$を計算するのは少々面倒ではありますが,愚直に展開するよりは圧倒的に速いですね.
二項定理の考え方
二項定理は組み合わせの考え方を用いることで証明することができます.
具体例
二項定理の考え方をみるために,$(a+b)^4$の展開を考えてみましょう.
$(a+b)^4$は4つの$a+b$の積なので
ですね.これを展開すると,各$(a+b)$から$a$または$b$のいずれかを選んでかけていくことになりますね.
つまり,
- $(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)$の太字部分をかけて$a^4$
- $(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(a+\boldsymbol{\color{magenta}b})$を太字部分をかけて$a^3b$
- $(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(a+\boldsymbol{\color{magenta}b})(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)$を太字部分をかけて$a^3b$
- $(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(\boldsymbol{\color{magenta}a}+b)(a+\boldsymbol{\color{magenta}b})(a+\boldsymbol{\color{magenta}b})$を太字部分をかけて$a^2b^2$
- ……
ができあがるわけですね.
このように,4つの$a+b$から$a$か$b$を選ぶことによって全ての項が表せるわけですから,例えば$a^3b$の項は4つの$(a+b)$のうちから
- 3つの$(a+b)$から$a$
- 1つの$(a+b)$から$b$
を取り出すことでできますね.
4つの$(a+b)$のうちから$b$を取り出す$(a+b)$を1つ選ぶ場合の数だけ$a^3b$ができあがるので,$a^3b$の係数は$\Co{4}{1}$となりますね.
「4つの$(a+b)$のうちから$a$を取り出す$(a+b)$を3つ選ぶ」と考えれば,$a^3b$の係数は$\Co{4}{3}$となりますね.
他の項も同様に考えれば,
が成り立つことが分かりますね.
二項定理の証明
いまの考え方から,以下のように二項定理を証明することができます.
$(a+b)^n$を展開すると,$a^n$, $a^{n-1}b$, $a^{n-2}b^2$, ……, $b^n$の項が現れる.
の展開において,$n$個の$(a+b)$のうちから$b$を取り出す$(a+b)$を$k$個選ぶ場合の数だけ$a^{n-k}b^k$ができあがるので,$a^{n-k}b^k$の係数は$\Co{n}{k}$である.
よって,$(a+b)^n$は
と展開できる.
上の$n=4$の場合の考え方が理解できていれば,一般の$n$に対しても成り立つことが分かりますね.
重複順列を使った考え方
上では組み合わせを使って二項定理を考えましたが,重複順列を使っても導出することができます.

重複順列の考え方・求め方をシンプルに理解する
$a$を$k$個と$b$を$\ell$個の合わせて$n$文字を並べることを考えます.
このとき,$abaabba\dots$という並びは
の右辺で,
- 1つ目の$(a+b)$から$a$を
- 2つ目の$(a+b)$から$b$を
- 3つ目の$(a+b)$から$a$を
- 4つ目の$(a+b)$から$a$を
- 5つ目の$(a+b)$から$a$を
- ……
と各$(a+b)$から$a$と$b$をどう取り出したかに対応しています.
つまり,$a$を$k$個と$b$を$\ell$個の合わせて$n$文字の並べ方と$a^{k}b^{n-k}$の個数が一致することになります.
$a$を$k$個と$b$を$\ell$個の合わせて$n$文字を並べる場合の数は
となって,確かに二項定理が得られましたね.
そもそも重複順列も組み合わせを用いて計算するので,上の組み合わせを使った証明と本質的には同じですね.
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