酸化還元反応1
どっちが酸化?還元?原理から理解しよう!

酸化還元反応
酸化還元反応

例えば屋外に放置された鉄はどんどん錆びていきますが,この「鉄が錆びる」という現象を化学では「鉄が酸化される」と表現します.

また,錆びた鉄にうまく化学的処理を施せば錆びる前の鉄に戻すこともでき,この酸化の逆の現象を化学では還元といいます.

この対になっている化学反応である酸化と還元は鉄以外の物質でも起こります.

例えば,銅を素材とする古い10円硬貨が黒くなっていくのも酸化ですし,酸化と還元は金属以外でも起こります.

このように酸化還元反応は身の回りに溢れた身近な化学反応ということができます.

酸化還元反応はこの次に学ぶ「電池と電気分解」の分野の基礎にもなっており,私たちが普段からお世話になっている電池も原理は酸化還元反応です.

この記事では

  • 酸化と還元とは何か?
  • 酸化と還元の関係

を順に説明します.

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酸化と還元の定義

酸化という言葉にある「酸」は酸素$\mrm{O}$のことで,基本的なイメージとしては酸素$\mrm{O}$と結びつく化学反応を指します.

また,還元はこの逆で酸素$\mrm{O}$が分離される化学反応を指します.

しかし,実際にはより広い反応を酸化還元反応というので,ここではまず酸化と還元の定義を説明します.

酸化の定義

例えば,銅$\mrm{Cu}$が酸素$\mrm{O_2}$と反応すると

   \begin{align*} \mrm{2Cu + O_2 \to 2CuO} \end{align*}

という化学反応が起こり,酸化銅(II)$\mrm{CuO}$ができます.

実は化学反応は次の2つに分けて考えることができます.

   \begin{align*} \begin{cases} \mrm{2Cu \to 2Cu^{2+} + 4e^-} & (1)\\ \mrm{O_2 + 4e^- \to 2O^{2-}} & (2) \end{cases} \end{align*}

ここで$\mrm{e^-}$は電子で,このような電子$\mrm{e^-}$を含んだ式を半反応式といいます.

半反応式については次の記事で詳しく解説します.

半反応式$(1)$では銅$\mrm{Cu}$が銅イオン$\mrm{Cu^{2+}}$と電子$\mrm{e^-}$に分かれています.

一方,半反応式$(2)$では酸素$\mrm{O_2}$が電子$\mrm{e^-}$を受け取ることで酸素イオン$\mrm{O^{2-}}$になります.

つまり,上の化学反応は「銅$\mrm{Cu}$が電子$\mrm{e^-}$を放出することで起こる化学反応式」ということができます.

そこで一般に酸化は次のように定義されます.

物質$\mrm{X}$が電子$\mrm{e^-}$を放出するとき「$\mrm{X}$は酸化される」という.

冒頭で触れた酸化は酸素$\mrm{O}$と結合する反応のことでしたが,一般に電子$\mrm{e^-}$を放出するときは酸化されると言うわけですね.

還元の定義

例えば,酸化銅(II)$\mrm{CuO}$に高温の水素$\mrm{H_2}$を吹きつけると

   \begin{align*} \mrm{CuO + H_2 \to Cu + H_2O} \end{align*}

という化学反応が起こり,銅$\mrm{Cu}$ができます.

酸化の場合と同様に,この化学反応式も次の半反応式に分けることができます.

   \begin{align*} \begin{cases} \mrm{CuO + 2e^- \to Cu+O^{2-}} & (3)\\ \mrm{H_2 \to 2H^+ + 2e^-} & (4) \end{cases} \end{align*}

先ほどの酸化の説明で酸化銅$\mrm{CuO}$は銅イオン$\mrm{Cu^{2+}}$と酸素イオン$\mrm{O^{2-}}$が結合しているものを考えたことから,半反応式$(3)$では酸化銅$\mrm{CuO}$中の銅イオン$\mrm{Cu^{2+}}$が電子$\mrm{e^-}$を受け取っているとみなすことができますね.

つまり,上の化学反応は「酸化銅(II)$\mrm{CuO}$が電子$\mrm{e^-}$を受け取ることで起こる化学反応式」ということができます.

そこで酸化とは逆に還元は次のように定義されます.

物質$\mrm{X}$が電子$\mrm{e^-}$を受け取るとき「$\mrm{X}$は還元される」という.

冒頭で触れた還元は酸素$\mrm{O}$と分かれる反応のことでしたが,一般に電子$\mrm{e^-}$を放出するときは酸化されると言うわけですね.

酸化と還元の関係

次に酸化と還元の関係を説明します.

塩素$\mrm{Cl_2}$と水素$\mrm{H_2}$が化合すると

   \begin{align*} \mrm{Cl_2 + H_2 \to 2HCl} \end{align*}

という反応が起こりますが,この反応は

   \begin{align*} \begin{cases} \mrm{Cl_2 + 2e^- \to 2Cl^-} & (5)\\ \mrm{H_2 \to 2H^+ + 2e^-} & (6) \end{cases} \end{align*}

と半反応式に分けることができます.

半反応式$(5)$を見ると,塩素$\mrm{Cl_2}$は電子$\mrm{e^-}$を受け取っているので,塩素$\mrm{Cl_2}$は還元されたということができますね.

一方,半反応式$(6)$は水素$\mrm{H_2}$が電子$\mrm{e^-}$を放出しているので,水素$\mrm{H_2}$は酸化されたということができますね.

このように,一般に化学反応で酸化される物質がある場合には同時に還元される物質もあることになりますね.逆に還元される物質があれば,酸化される物質もありますね.

つまり,次の事実が成り立ちます.

酸化と還元は必ず同時に起こる.

このことから,酸化と還元の起こる反応を酸化還元反応といいます.

また,電子$\mrm{e^-}$の受け渡しによって酸化と還元を定義しましたが,次の表も当たり前にしておきましょう.

酸化と還元
電子酸素水素
酸化される放出する受け取る放出する
還元される受け取る放出する受け取る

半反応式の書き方

酸化還元反応の反応式を求める際には,半反応式が書けることが大切です.

最終的に半反応式は自分で書けるようになる必要がありますが,数ある半反応式を丸暗記するのはよくありません.

ポイントさえ押さえておけばあとは自分で半反応式を書くことができるので,次の記事では半反応式の覚えるポイントと書き方を説明します.

管理人

プロフィール

山本やまもと 拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

飛び級・首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.

現在はオンライン家庭教師,社会人向け数学教室での講師としての教育活動とともに,京都大学で数学の研究も行っている.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.

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