以前の記事で説明したように,5枚のカード$\fbox{A}\fbox{B}\fbox{C}\fbox{D}\fbox{E}$を一列に並べてできる文字列の数は$5!$通りありますね.
では,次の問題はどうでしょうか?
3枚のカード$\fbox{A}$と,1枚ずつのカード$\fbox{B}\fbox{C}$の合計5枚のカードを一列に並べてできる並びは全部で何通りか.
この場合の数は単純に$6!$通りよりも少なくなります.このように,同じものを含む順列を重複順列といい,普通の順列のように考えるだけでは場合の数は得られません.
この記事では,重複順列の場合の数の求め方として
- 重複で割る考え方
- 組み合わせの考え方
を順に説明します.
「場合の数と確率」の一連の記事
重複順列
冒頭の問題を2つの考え方から解きましょう.
3枚のカード$\fbox{A}$と,1枚ずつのカード$\fbox{B}\fbox{C}$の合計5枚のカードを一列に並べてできる並びは全部で何通りか.
考え方1
「普通の順列で考えてから重複で割る」という考え方で解きましょう.
なお,順列の考え方については以下の記事を参照してください.

順列のₙPₖの考え方と公式は超カンタン!
まず3枚のカード$\fbox{A}$を全て区別し,$\fbox{A1}\fbox{A2}\fbox{A3}$としましょう.
こうすると,異なる5枚のカード$\fbox{A1}\fbox{A2}\fbox{A3}\fbox{B}\fbox{C}$ができあがるから,これらの順列は$5!$通りある.
この順列それぞれでカード$\fbox{A}$の区別をなくすと,例えば
- $\fbox{A1}\fbox{A2}\fbox{A3}\fbox{B}\fbox{C}$
- $\fbox{A1}\fbox{A3}\fbox{A2}\fbox{B}\fbox{C}$
- $\fbox{A2}\fbox{A1}\fbox{A3}\fbox{B}\fbox{C}$
- $\fbox{A2}\fbox{A3}\fbox{A1}\fbox{B}\fbox{C}$
- $\fbox{A3}\fbox{A1}\fbox{A2}\fbox{B}\fbox{C}$
- $\fbox{A3}\fbox{A2}\fbox{A1}\fbox{B}\fbox{C}$
はいずれも$\fbox{A1}\fbox{A2}\fbox{A3}\fbox{B}\fbox{C}$となる.
同様にカード$\fbox{A}$の区別をなくすと,最初の$5!$通りの順列において6個ずつ同じものができあがる.
よって,求める場合の数は
である.よって,$20$通りである.
一度同じものを全て異なるとみなせば普通の順列の考え方ができ,そのあとに区別をなくせば同じものが同じ個数ずつできるので,その重複分で割れば良いというわけですね.
考え方2
次に「組み合わせ」の考え方から解きましょう.
なお,順列の考え方については以下の記事を参照してください.

組み合わせのₙCₖを考え方から基本性質まで攻略
カードを並べる場所は全部で5ヶ所あるから,カード$\fbox{A}$を並べる場所を選ぶ場合の数は$\Co{5}{3}$である.
カード$\fbox{A}$を並べる場所を決めれば,残りの2ヶ所から1ヶ所選んでカード$\fbox{B}$を並べれば良く,この場合の数は$\Co{2}{1}$である.
残る$\fbox{C}$の並べる場所は$1$通りに決まるから,求める場合の数は
である.
具体例
今の問題では,2個以上同じものがあるのはカード$\fbox{A}$だけでしたが,次のようになっても考え方は同じです.
3枚のカード$\fbox{A}$と,2枚のカード$\fbox{B}$,2枚のカード$\fbox{C}$の合計7枚のカードを一列に並べてできる並びは全部で何通りか.
考え方1のように考えると,次のような解答になります.
[考え方1] まず3種類のカード$\fbox{A}$それぞれで全て区別し,$\fbox{A1}\fbox{A2}\fbox{A3}\fbox{B1}\fbox{B2}\fbox{C1}\fbox{C2}$の順列を考えると,場合の数は$7!$通りある.
ここで,カード$\fbox{A}$の区別をなくすと$3!$通り同じものができ,カード$\fbox{B}$の区別をなくすと$2!$通り同じものができ,カード$\fbox{C}$の区別をなくすと$2!$通り同じものができる.
よって,求める場合の数は
である.
また,考え方2のように考えると,次のような解答になります.
[考え方2] カードを並べる場所は全部で7ヶ所あるから,カード$\fbox{A}$を並べる場所を選ぶ場合の数は$\Co{7}{3}$である.
残る4ヶ所からカード$\fbox{B}$を並べる場所を選ぶ場合の数は$\Co{4}{2}$である.
残る$\fbox{C}$の並べる場所は$1$通りに決まるから,求める場合の数は
である.
重複順列の公式
いまの考え方と同じ考え方で以下の公式が得られます.
考え方1による公式
「重複で割る」という考え方に慣れないと少し難しく感じるかもしれませんが,計算はこちらの公式の方がしやすいでしょう.
$\mrm{A}_1$, $\mrm{A}_2$,……,$\mrm{A}_n$がそれぞれ$r_1$個, $r_2$個, ……, $r_n$個あるとき,これらの並べ方の総数は
である.
$\mrm{A}_1$, $\mrm{A}_2$,……,$\mrm{A}_n$を全て区別すると,$(r_1+r_2+\dots+r_n)!$通りの並べ方がある.
$\mrm{A}_k$ ($k=1,\dots,n$)の区別をなくしたときの重複は$n_k$通りあるから,重複で割って
が並べ方の総数である.
考え方2による公式
考え方はこちらの方が簡単に感じるかもしれませんが,計算はこちらの方がしやすいでしょう.
$\mrm{A}_1$, $\mrm{A}_2$,……,$\mrm{A}_n$がそれぞれ$r_1$個, $r_2$個, ……, $r_n$個あるとき,これらの並べ方の総数は
である.
カードを並べる場所は$(r_1+r_2+\dots+r_n)$ヶ所あるので,最初に$\mrm{A}_1$を並べる場所を選ぶ場合の数は$\Co{r_1+r_2+\dots+r_n}{r_1}$である.
さらに,残る$(r_2+\dots+r_n)$ヶ所に$\mrm{A}_2$を並べる場合の数は$\Co{r_2+\dots+r_n}{r_2}$である.
これを$\mrm{A}_{n-1}$まで同様に繰り返せば,$\mrm{A}_n$を並べる位置が決まり,
が求める並べ方の総数である.
2つの考え方の関係
2つの公式の見た目は違いますが,$\Co{n}{r}$が
と表されることを思い出すと,2つの公式が等しいことが証明できます.

組み合わせのₙCₖを考え方から基本性質まで攻略
実際,考え方2による公式から出発すると
と綺麗に約分されて,考え方1による公式と等しいことが分かりますね.
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