酸化還元反応4
半反応式から化学反応式を導く2つのステップ

酸化還元反応
酸化還元反応

酸化剤と還元剤の2つの物質が与えられたとき,この2つの物質によって起こる酸化還元反応の化学反応はどのように考えればよいでしょうか?

ここで,前々回の記事で説明した

  • 酸化剤の半反応式
  • 還元剤の半反応式

が重要です.

半反応式に含まれる電子$\mrm{e^-}$やイオンは普通の化学反応式の中にあってはいけないので,半反応式中から化学反応式を導く際には電子$\mrm{e^-}$とイオンを消去する必要があります.

とはいえ,そう難しいものではなく

  1. 電子$\mrm{e^-}$を消去するステップ
  2. イオンを消去するステップ

の2つのステップに分けて考えると整理しやすいでしょう.

この記事では,具体例をもとに半反応式から化学反応式を導く方法を説明します.

おすすめ参考書

理系大学受験 化学の新研究(卜部吉庸 著)

「この本で解けない高校化学の問題はない」と言ってよいほど高校化学を完全網羅した参考書です.

電子を式から消去するステップ

半反応式から化学反応式を導く際に最初にやることは,電子$\mrm{e^-}$を式から消去することです.

連立方程式の消去法の要領で電子を消去します.

例1

熱濃硫酸$\mrm{H_2SO_4}$とシュウ酸$\mrm{(COOH)_2}$の化学反応式を求めよ.

熱濃硫酸$\mrm{H_2SO_4}$は酸化剤,シュウ酸$\mrm{(COOH)_2}$は還元剤ですね.

熱濃硫酸$\mrm{H_2SO_4}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{H_2SO_4 + 2H^+ + 2e^- \to SO_2 + 2H_2O}\quad\dots(1)\end{align*}

シュウ酸$\mrm{(COOH)_2}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{(COOH)_2 \to 2CO_2 + 2H^+ + 2e^-}\quad\dots(2)\end{align*}

です.電子$\mrm{e^-}$の係数は$(1)$も$(2)$もともに$2$で等しいので,両辺をそのまま足すと電子$\mrm{e^-}$が消えますね.

   \begin{align*} \begin{matrix} & \mrm{H_2SO_4 + 2H^+ + 2e^-} & \to & \mrm{SO_2 + 2H_2O}\\ +) & \mrm{(COOH)_2} & \to & \mrm{2CO_2 + 2H^+ + 2e^-}\\ \hline & \mrm{H_2SO_4 + (COOH)_2} & \to & \mrm{SO_2 + 2CO_2 + 2H_2O} \end{matrix} \end{align*}

これで,酸化還元反応式

   \begin{align*}\mrm{H_2SO_4 + (COOH)_2 \to SO_2 + 2CO_2 + 2H_2O}\end{align*}

が得られました.

例2

二酸化硫黄$\mrm{SO_2}$と硫化水素$\mrm{H_2S}$の酸化還元反応の化学反応式を求めよ.

二酸化硫黄$\mrm{SO_2}$は相手によって酸化剤にも還元剤にもなりますが,硫化水素$\mrm{H_2S}$は還元剤なので二酸化硫黄$\mrm{SO_2}$は酸化剤としてはたらきます.

二酸化硫黄$\mrm{SO_2}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{SO_2 + 4H^+ + 4e^- \to S + 2H_2O}\quad\dots(1)\end{align*}

硫化水素$\mrm{H_2S}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{H_2S \to S + 2H^+ + 2e^-}\quad\dots(2)\end{align*}

です.電子$\mrm{e^-}$の係数は$(1)$は$4$で$(2)$は$2$と異なります.この場合は$(1)+2\times(2)$を考えると電子$\mrm{e^-}$が消えそうです.

   \begin{align*} \begin{matrix} & \mrm{SO_2 + 4H^+ + 4e^-} & \to & \mrm{S + 2H_2O} & (1)\\ +) & \mrm{2H_2S} & \to & \mrm{2S + 4H^+ + 4e^-} & 2\times(2)\\ \hline & \mrm{SO_2 + 2H_2S} & \to & \mrm{3S + 2H_2O} & \end{matrix} \end{align*}

これで,酸化還元反応式

   \begin{align*}\mrm{SO_2 + 2H_2S \to 3S + 2H_2O}\end{align*}

が得られました.

両辺を足したとき,$(1)$左辺の水素イオン$\mrm{2H^+}$と$(2)$右辺の水素イオン$\mrm{2H^+}$も一緒に消えていることに注意してください.

イオンを式から消去するステップ

上の2つの例では,電子を消去した後の式にはイオンは残りませんでしたが,場合によっては式中にイオンが残ります.

この場合には,もとから存在するイオンと併せることにより,イオンを処理することができます.

例3

希硝酸$\mrm{HNO_3}$と二酸化硫黄$\mrm{SO_2}$の酸化還元反応の化学反応式を求めよ.

希硝酸$\mrm{HNO_3}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{HNO_3 + 3H^+ + 3e^- \to NO + 2H_2O}\quad\dots(1)\end{align*}

二酸化硫黄$\mrm{SO_2}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{SO_2 + 2H_2O \to SO_4^{2-} + 4H^+ + 2e^-}\quad\dots(2)\end{align*}

です.$2\times(1)+3\times(2)$を考えると電子$\mrm{e^-}$が消えて

   \begin{align*} \begin{matrix} & 2\mrm{HNO_3 + 6H^+ + 6e^-} & \to & \mrm{2NO + 4H_2O} & ((1) \times 2)\\ +) & \mrm{3SO_2 + 6H_2O} & \to & \mrm{3SO_4^{2-} + 12H^+ + 6e^-} & ((2) \times 3)\\ \hline & \mrm{2HNO_3 + 3SO_2 + 2H_2O} & \to & \mrm{2NO + 3SO_4^{2-} + 6H^+} & \end{matrix} \end{align*}

とイオン反応式

   \begin{align*}\mrm{2HNO_3 + 3SO_2 + 2H_2O \to 2NO + 3SO_4^{2-} + 6H^+}\end{align*}

が得られました.

しかし,反応後の右辺には硫酸イオン$\mrm{SO_4^{2-}}$と水素イオン$\mrm{H^+}$が残っています.

イオンが含まれていては化学反応式と呼べないので,これらのイオンを消す必要があります.

いま,硫酸イオン$\mrm{SO_4^{2-}}$と水素イオン$\mrm{H^+}$を合わせて硫酸$\mrm{H_2SO_4}$ができるので,

   \begin{align*}\mrm{2HNO_3 + 3SO_2 + 2H_2O \to 2NO + 3H_2SO_4}\end{align*}

が求める酸化還元反応式です.

例4

硫酸酸性下での過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$と硫化水素$\mrm{H_2S}$の酸化還元反応の化学反応式を求めよ.

過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{MnO_4^- + 8H^+ + 5e^- \to Mn^{2+} + 4H_2O}\quad\dots(1)\end{align*}

硫化水素$\mrm{H_2S}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{H_2S \to S + 2H^+ + 2e^-}\quad\dots(2)\end{align*}

です.$2\times(1)+5\times(2)$を考えると電子$\mrm{e^-}$が消えて

   \begin{align*} \begin{matrix} & \mrm{2MnO_4^- + 16H^+ + 10e^-} & \to & \mrm{2Mn^{2+} + 8H_2O} & ((1) \times 2)\\ +) & \mrm{2H_2S} & \to & \mrm{5S + 10H^+ + 10e^-} & ((2) \times 5)\\ \hline & \mrm{2MnO_4^- + 5H_2S + 6H^+} & \to & \mrm{2Mn^{2+} + 5S + 8H_2O} & \end{matrix} \end{align*}

とイオン反応式

   \begin{align*}\mrm{2MnO_4^- + 5H_2S + 6H^+ \to 2Mn^{2+} + 5S + 8H_2O}\end{align*}

が得られました.

例3はこの時点で式中のイオン達が上手くまとまってくれましたが,今回はそう上手くいかずこれらを消さなければなりません.

そこで,もともとは過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$が反応していることを思い出すと,溶液中にはカリウムイオン$\mrm{K^+}$が存在しているはずです.

カリウムイオン$\mrm{K^+}$を2個ずつ両辺に加えると

   \begin{align*}\mrm{2KMnO_4 + 5H_2S + 6H^+ \to 2K^+ + 2Mn^{2+} + 5S + 8H_2O}\end{align*}

となりますね.

さらに今は硫酸酸性下での反応なので,溶液中には硫酸イオン$\mrm{SO_4^{2-}}$も存在しています.そこで,両辺に硫酸イオン$\mrm{SO_4^{2-}}$を3個加えれば

   \begin{align*}\mrm{2KMnO_4 + 5H_2S + 3H_2SO_4 \to K_2SO_4 + 2MnSO_4 + 5S + 8H_2O}\end{align*}

と求める酸化還元反応が得られました.

半反応式では直接的に出てこなかった硫酸イオン$\mrm{SO_4^{2-}}$ですが,反応式ではこのように必要になります.

酸性条件と中性・塩基性条件

ここまで,酸化還元反応についてみてきましたが,反応でどれくらい酸化・還元されているのかについては触れてきませんでした.

実は酸化還元反応でどれくらい酸化されているか,還元されているかを測る指標として酸化数というものがあります.

この酸化数を計算すれば,定量的に酸化・還元を捉えることができます.

酸化数は8つのルールと2つの例外を知っていれば,簡単に求めることができるので次の記事でしっかり理解してください.

コメント

タイトルとURLをコピーしました