前回の記事では,
- 英単語はどのレベルまで覚えるべきか?
- 英単語の効率的な覚え方は?
という2つについて説明しました.
英単語を覚える際には,単語を1つずつ覚えるのではなく,10〜30個程度の単語を何度も素早く繰り返す「反復記憶法」を使うと効率的に覚えられるのでした.
とはいえ,どうしてこの覚え方が効果的なのかは疑問に思うところですね.
単なる方法論だけでなく,その理由も知っておくことでより効果的な勉強にできます.
前の記事に引き続いて,この記事では
- 反復記憶法が有効な理由
- 反復記憶法の注意点
を説明します.
【前回の記事:英単語の暗記法1|目指すべき英単語レベルと効率的な暗記法】
「 英単語を覚えるのが苦手」という人は多くいます.しかし,英単語を覚えるのが得意な人は滅多にいません,むしろ,そういう人が多いということは,逆に「忘れることを前提として覚えていくべき」という意識が大切です.このことを意識していると,英単語の効率的な覚え方が見えてきます.
目次
「反復記憶法」が効果的な理由
まずは,「反復記憶法」が効果的な理由を説明します.
忘れた頃に思い出す
前提として,暗記というのは覚えるべき事柄を「短期記憶」から「長期記憶」に引きずり込む作業のことです.
どうすれば長期記憶に残るのか
前回の記事でも説明したように,よくあるの「単語を1つ1つ覚えていく方法」では,覚えたと思っても短期記憶止まりになっている可能性が高いです.
その証拠に,この方法で10個も覚えていけば,最初の単語は忘れてしまっていることでしょう.
ですから,1つ1つ覚える方法ではその直後には覚えたつもりになっていても,暗記には至っていないということになります.
大切なことは,忘れた頃にやり直すということが暗記に非常に効率的だということです.
これはただ感覚的に言っているわけではなく,私たちの脳はよく使う情報を暗記し,不要な情報は忘れるようにできています.
「忘れたころにもう一度覚え直す」という作業を繰り返すと,その単語は何度も引き出す情報として脳はその単語を長期記憶に移し替えるのです.
反復記憶法のミソ
短期記憶は数秒〜数分程度しか保てません.
30個も単語を声を出して読む「反復記憶法」では,最後まで行く頃には最初の単語は短期記憶のタイムリミットで忘れていることになりますが,これが反復記憶法のミソなのです.
忘れていてもお構いなしに,すぐに2周目,3周目,……と繰り返し行うことで,「そうやった,そうやった」と単語を何度も思い出すことになり,これにより長期記憶に移るのです.
1個1個時間をかけて覚える「順番記憶法」がダメな理由は,思い出す作業がない点にあります.
そのため,直後には覚えたつもりになっても,すぐに忘れてしまうわけです.
脳は何度も思い出す情報を長期記憶として覚えやすくなる.そのため,反復記憶法の「忘れたものを思い出す」という作業は,長期記憶に定着させるためにとても効果的である.
単語の意味を思い出すスピードが上がる
たとえば,「あなたの名前は?」と聞かれた時は,ほとんど考えずに瞬間的に答えることができると思います.
一方で,「今読んでいるブログの名前は?」などと聞かれた時は一瞬なりとも考えると思います(分からない人もいるかも……笑).
単語の意味を思い出すスピード
大切なことは,同じ「覚えている」でも,思い出すスピードに差があるという点です.
この「思い出すスピードの差」は「暗記レベルの差」とも言い換えられますね.
「暗記レベル」が高いほど,すぐに思い出せるというわけです.
些細なことだと思うかもしれませんが,この「暗記レベル」を高めておけば英文を読むときにハッキリ差が現れます.
たとえば,英文中に”apple”や”car”などの初級レベルの単語が出てきたときは,日本語に直すまでもなく
- “apple”→「赤い果物」
- “car”→「人を乗せて走るもの」
のイメージが浮かぶと思います.実際に英文を読むときに,
- “apple”→「『リンゴ』という言葉」→「赤い果物」
- “car”→「『車』という言葉」→「人を乗せて走るもの」
と一度日本語に置き換えてからイメージするのでは遅いです.
暗記レベルが低いとどう問題か
英文を読む途中で「英単語を思い出す作業」が挟まると,英文の話の流れが追えなくなり分の意味が分からなくなります.
実際,文中に思い出せない単語の意味を調べたときは,もう一度その文は初めから読みますよね?
これは文の流れから離れてしまうと,もう一度話の流れに乗り直さないと追えなくなってしまうということになります.
このように,「暗記レベル」が低いと,英文の話の流れを追いにくくなり読むのが遅くなってしまうのです.
このように,英文を読むのが遅いという人は,「英文を読むのが苦手」なのではなく「暗記レベル」が低いだけという可能性は大いにあります.
単語を思い出すときのちょっとした「つっかえ」が英文を読むときの障害になるのです.
試験が終わって「時間が足りなかった……」と悔しい思いをしたことがある人は少なくないでしょう.その原因の多くの場合で時間が足りなくなる原因は明確です.これが分かれば,試験時間内に解ききるために必要なことが何かは自ずと見えてきます.
反復記憶法と「暗記レベル」
「反復記憶法」は暗記レベルを上げることに対しても,非常に有効な暗記法です.
というのは,反復記憶法は素早く英語と日本語を行き来するため,英語とイメージが結びつきやすくなります.
これはまさに,英単語からすぐにイメージが分かるということですから,「暗記レベル」を高めることに他なりません.
「反復記憶法」は単純に暗記法として優れているだけではなく,暗記レベルの向上にも一役買っているわけですね.
- 反復記憶法ではテンポよく何周もするため,単語に対する反応速度=瞬発力が上がります.
- 英文を読むために単語を覚える以上,この瞬発力を上げることは読解力の向上に繋がる.
「反復記憶法」で気を付ける点
効果が高い「反復記憶法」でも,何も考えずにやってしまうのはよくありません.
反復記憶法の気をつけるべきポイントについて説明します.
声に出して読む
例えば,漢字でも「読めるけど書けない」ということはよくあると思いますが,その逆で「書けるけど読めない」ということはほぼありませんよね.
それは英単語でも同じで,この,「読めないものは書けない」ということは,前提として意識しておいてください.
これを踏まえると,いきなり紙に単語を書き始めるのではなく,まずは書くよりも単語を音から覚えるのが効果的だということになります.
基本的に日本語で文章を読むときでも,頭の中で「発音」して読んでいます.これはもちろん英文も同じく,頭の中で「発音」して読んでいるはずです.
試しにこの記事を頭の中で「発音」せず,ぼーっと眺めるようにして読んでみてください.きっと全く頭に入ってこないでしょう.
このことから,単語は音で覚えないと,文章の理解が悪くなるということが分かります.ですから,発音で詰まっていては,どうしても速く読むのに限界がきます.
目標は単語を覚えることではなく,英文を読むことだということはいつでも忘れていはいけません.
単語を覚えることは,いつでも過程です.
英文を読むために単語を覚える以上,英文読解で実際に使えるような単語の覚え方をすることはいつでも意識しておきましょう.
読めないものは書けない.発音が分からない単語があると文章の理解が悪くなる.
綴りを意識して読む
今書いたように,単語を覚えるとき,最初は音から覚えても,そのうち自分で書けるようになる必要もあります.
パッと発音とイメージができるようになってきたら,綴りも意識して読むことも大切です.
ですから,発音することはとても大切ですが,ぼーっと何回も読むだけでは,ある程度の「暗記レベル」止まりで,実践のペーパーテストで使えるレベルにはなかなかなりません.
速く読んでいると,ついただ口を動かすだけ,ただ文字を読んでいるだけになりがちなのですが,それではただの発声練習です.
単なる発声練習にならないように気をつけてください.
反復記憶法のミソは「何度も思い出すこと」でした.
読むときに綴りも意識して,戻ってきた時に「あー!そうか!」と思い出すことが重要なのです.
発音が分かってきたら,次は綴りを意識する.そのとき,単なる発声練習にならないように気を付ける.
一日だけで終わらない
反復記憶法は実践的で,記憶効果は高いですが万能ではありません.
人間は忘れることが得意な生き物で,脳は基本的に忘れるようにできています.このことは常に意識して起きてください!
もしあなたがめちゃくちゃ記憶が得意なら,英語だけに限らず一回問題集を聞いただけで定期試験ではほぼオール満点を取れるはずです.なぜなら,定期試験に出る問題は問題集に載っているものがほとんどだからです.
しかし,ちゃんと問題集を解いて試験に臨んでも,実際にはあまり取れなかったということを経験している人も多いでしょう.この「脳は忘れるもの」という意識を常にもって勉強したいところです.
さて,上でも書きましたが,脳は一時的にしか使わない情報を不必要な記憶として処理し忘れます.したがって,その日限りで終わるような記憶は,脳にとっては不必要な記憶です.
その日は覚えたと思っても,しばらくすると忘れることは多いです.ですから,やはりまた忘れた頃に思い出すことが必要ですから,1日だけで終わらすのではなく,何日か繰り返すのが重要です.
「めんどくせえ……」と思うかもしれませんが,2日目は1日目にやったことを思い出す作業になるので,大して面倒ではありません.
むしろ,どんどん速くなるので「おお!結構覚えてるやん!」と思い出す感覚が面白いと思います.時間も1日目ほどかけなくても良いでしょう.
3日目はさらに楽になります.3日もやれば十分な記憶の定着が期待できます.
1日目は30個を1周3分として10周30分,2日目は1周2分30秒として5周12分30秒,3日目は1周2分15秒として5周11分15秒.
目安としてはこの程度で十分です.3日で合計1時間もありません.
欲を言えば,同じ日の朝と晩にやれば,さらに効果が期待できます.
1個1個書き出す暗記法では,2日目,3日目もつらいですし,時間もそれなりにかかります.
一日目だけで下手すると,2時間近くかかってしまうのではないでしょうか?
そう考えると,「反復記憶法」の効率の良さは圧倒的ですね.
忘れるのは当たり前.1日で終わるのではなく,後日の反復が大切.
オススメ単語帳
オススメの単語帳はやはり「英単語ターゲット1900」と「システム英単語」です.
ただし,両方買う必要はありませんし,別の単語帳でも構いませんし,学校で指定されているなら指定されている単語帳で構いません.
ただし,他の参考書でも言えることですが,何冊も単語帳を買って行ったり来たりするのではなく,1冊をしっかり覚えることが大切です.
「ただなんとなく問題を解く」というのでは,問題集の持ち腐れです.問題集について「どの問題集を買うか」「どのように使うか」の2つが大切です.明確な理由を持って,自分にあった問題集を解くようにしてください.
とはいえ,単なる単語帳だけでは「生きた英語力」にはならないという批判もあります.
この批判には私も賛成で,文章の中で英単語を学ぶことは大切ですし,前回の記事で書いたように知らない単語を推測する力をつけることも大切です.
【前回の記事:英単語の暗記法1|目指すべき英単語レベルと効率的な暗記法】
私の場合は「ターゲット」をそれなりに仕上げたあと,「速読英単語」を併用していました.
ターゲット1900
「ターゲット1900」の最大の特徴は「単語」と「意味」を並べて配置してある点でしょう.
これにより,何度も素早く繰り返しやすいデザインになっています.
ただし,「ターゲット1900」には,単語を覚えるだけならボリュームがあるものの,実際に使えるところまではなかなか持って行きにくいというデメリットもあります.
単語はやはり覚えるだけ武器になることは事実ですが,実際に使えないと意味がありません.つまり,「単語」と「意味」を1対1で覚えても,それだけでは英文読解や英作文に生かしにくい,という点が問題になります.
「ターゲット1900」には例文も載っていることは載っているのですが,私は単語を「ターゲット1900」で覚え,次に挙げる「速読英単語」で文章中での単語の読みこなす術を養いました.
速読英単語
「単語の用法」を身に付けるために効果的な方法は「英文を読むこと」です.
とはいえ,英文を読みつつ単語を調べるのでは,文章と辞書を行ったり来たりすることになり,肝心の英文に集中できません.
「速読英単語」は見開きの左ページに英文が,右ページに訳が載っており,分からない単語があっても,適宜右ページを参照して英文を読むことができる点が特徴です.
「単語の用法」も単語自体と同様に,一度読んですぐに身に付くことはなく,やはり声を出せば段違いに効果があります.目標としては,途中でつっかえず,スラスラ感が出るレベルくらいまで読めるようになりたいところです.
また,「派生語や似た意味の単語が多く載っている」という点も大きな特徴でしょう.
これは単語を覚える場合に限らず,あらゆる勉強の上でも非常に効果的な方法で,既に知っている情報に関連する内容は記憶に定着しやすいのです.
シリーズもので,いくつかの難易度に分かれているので,自分に合ったレベルのものを購入すると良いでしょう.