例えば「ABCDEFの6文字から4文字選んで『一列に』並べる場合の数」といったような,「$n$個のものから$r$個選んで一列に並べる」という順列の考え方を説明しました.
この一列に並べる普通の順列に対して,「ABCDEFの6文字から4文字選んで『円状に』並べる場合の数」といったモノを円状に並べる場合の数を円順列といいます.
また,円順列では裏返しは区別しますが,ネックレスのように裏返して同じになるものを同じとみなす数珠順列という順列もあります.
円順列自体というより円順列の考え方は,場合の数や確率の分野ではよく出題されるので,単なる公式を覚えるのではなく考え方から理解するようにしてください.
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【場合の数4|[組み合わせ]のnCrの求め方から性質まで攻略】
【場合の数5|同じものを含むと順列の場合の数はどう変わる?】
【場合の数6|[重複組み合わせ]は2パターンでOK!】
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円順列
まずは[円順列]について説明します.
考え方
問題を解きながら考え方を見ていきましょう.
$\fbox{1}$から$\fbox{9}$までのいずれかの数字が書かれた9枚のカードがある.ただし,どの2枚も同じ数字が書かれていないものとする.このとき,次の場合の数を求めよ.
- 9枚をカードを一列に並べる場合の数を求めよ.
- 9枚のカードを円状に並べる場合の数を求めよ.ただし,回転して一致するものを同じものをみなす.
(1) 一列に並べるので,「普通の順列」により求まる.
9枚のカードを並べる場合の数は
である.
(2) (1)の一列に並べたもの(362880通り)の両端を繋いで円状にする.
この考え方により,
- $\fbox{1}\fbox{2}\fbox{3}\fbox{4}\fbox{5}\fbox{6}\fbox{7}\fbox{8}\fbox{9}$という一列の並びを円状にしたもの
- $\fbox{2}\fbox{3}\fbox{4}\fbox{5}\fbox{6}\fbox{7}\fbox{8}\fbox{9}\fbox{1}$という一列の並びを円状にしたもの
- $\fbox{3}\fbox{4}\fbox{5}\fbox{6}\fbox{7}\fbox{8}\fbox{9}\fbox{1}\fbox{2}$という一列の並びを円状にしたもの
- ……
- $\fbox{9}\fbox{1}\fbox{2}\fbox{3}\fbox{4}\fbox{5}\fbox{6}\fbox{7}\fbox{8}$という一列の並びを円状にしたもの
は全て同じものになる.
このように,一列に並べた362880通りを円状にすると,9通りずつ同じものができあがる.
したがって,求める場合の数は
である.
(2)は次のような考え方でも解くことができます.
(2) 最初にカード$\fbox{1}$を置き,残りの8ヶ所に残りの8枚を並べる.
最初に1を固定しているので,残りの8枚を並べると全て異なる順列となる.
よって,8枚を並べる順列が求める場合の数だから,求める場合の数は
である.
このように,「ものを円状に並べること」を円順列といいます.
円順列では,
- まず一列に並べ,円状にした時に重複分で割る
- 1つを固定しておき,残りを並べる
の2パターンの考え方がある.
公式
今の問題の(2)と同じように考えると,次の[円順列の公式]が分かります.
[円順列の公式] $n$個のものを円状に並べる場合の数は$(n-1)!$通りである.
1つ目の考え方によると,$n$個のものを一列に並べる場合の数は$n!$であり,これらを円状にすると$n$個ずつ重複するので,
となりますね.
また,2つ目の考え方によると,$n$個のうちの1つを固定して,残りの$(n-1)!$を並べるので$(n-1)!$通りとなります.
円順列は普通の順列をもとにして考えれば場合の和が求められる.
数珠順列
次に,数珠順列を考えます.
考え方
さて,先ほどの問題に,次の1問を追加しましょう.
$\fbox{1}$から$\fbox{9}$までのいずれかの数字が書かれた9枚のカードを円状に並べる場合の数を求めよ.ただし,回転して一致するものと,裏返して一致するものを同じものとみなす.
普通の円順列との違いは,裏返して同じものも同じとみなす点です.
円順列において,裏返して一致する同じものを同じとみなすので,円順列の
通りの中に裏返して同じものが2通りずつある.
よって,求める場合の数は
である.
このように,円順列で裏返して一致するものを同じとみなす順列を数珠順列といいます.
公式
今の解答と同じように考えると,次の[数珠順列の公式]が分かります.
[数珠順列の公式] $n$個のものの数珠順列の場合の数は$\dfrac{(n-1)!}{2}$である.
$n$個のものの円順列の場合の数は$(n-1)!$であり,これらの時計回りと反時計回りで2個ずつ重複するので,
というわけですね.
数珠順列は円順列で裏返して一致するものが2通りずつあることから,(円順列)÷2=(数珠順列)となる.
【次の記事:場合の数4|[組み合わせ]のnCrの求め方から性質まで攻略】
「$n$個のものから$r$個選んで並べる場合」を$\Pe{n}{r}$で表し「順列」というのに対して,選ぶところで止める場合,つまり「$n$個のものから$r$個選ぶ場合」を$\Co{n}{r}$で表し「組み合わせ」といいます.「組み合わせ」は「順列」以上に場合の数と確率の至る所で現れるもので,非常に大切です.