紛らわしいア行・ヤ行・ワ行の古文動詞の判別|活用に分けて解説

古文
古文

古文動詞には様々な種類の活用があります.前回の記事では

  • 4つの変格活用(カ変,サ変,ナ変,ラ変)
  • 上一段活用
  • 下一段活用

は数が限られているため,これらの動詞を先に覚えてしまえばスムーズに活用による分類ができることを説明しました.

さて,このような「活用」による分類とは別に,「行」による分類もあります.行による分類の中でも

  • ア行動詞
  • ヤ行動詞
  • ラ行動詞

も限られたものしかないので,これらも覚えてしまうのがよいでしょう.

また,これらの判別の仕方も大切なので,しっかり判断できるようになっておいてください.

ア行,ヤ行,ワ行

50音順のア行,ヤ行,ワ行は次のようになっています.

50音順のア行,ヤ行,ワ行
ワ行ヤ行ア行
ア段
イ段
ウ段
エ段
オ段

問題なのは今ではあまり見かけない「ゐ」と「ゑ」だと思いますが,これらはワ行にのみ現れますね.

これは当たり前にしておいてください.

ア行,ヤ行,ワ行の動詞

ア行,ヤ行,ワ行の動詞はほぼ限られているので,覚えてしまうのが得策です.特に,

  • ア行の動詞は(複合動詞を除けば)「()」のみ
  • ワ行の動詞も5個しかない

ということは意識しておいてよいでしょう.

ア行の動詞

ア行の動詞は複合動詞を除けば「()」に限り,これ以外にはありません.

活用は以下の通りです.

ア行動詞
動詞語幹未然形連用形終止形連体形已然形命令形
()(得)うるうれえよ

前回の記事で説明したように,この「()」は「下二段活用」です.

全9種類の古文動詞の活用の基本|覚えるべき動詞はコレ!
古文動詞の活用は「未然形」「連用形」「終止形」「連体形」「已然形」「命令形」の6つからなり,現代文の調子で訳すと全く違う意味になってしまうこともよくあります.この記事では9種類の古文動詞の活用を解説します.

さて,「複合動詞を除けば」と書きましたが,複合動詞とは「(こころ)()」や「(ところ)()」のような,動詞の頭に言葉が付加されてできた動詞のことを言います.

しかし,複合動詞の頭の部分は活用に全く関係しないので,活用はもともとの動詞の部分の活用に従います.

実際,「(こころ)()」や「(ところ)()」はいずれも「下二段活用」で,以下のような活用になります.

ア行動詞(複合動詞)
動詞語幹未然形連用形終止形連体形已然形命令形
()うるうれえよ
()うるうれえよ

語感が変わっているだけで,活用語尾は「()」と全く同じですね.

ヤ行の動詞

ヤ行の動詞には「上二段活用」,「上一段活用」,「下二段活用」があり,これらのうち

  • 上二段活用は3語「()ゆ」「()ゆ」「(むく)ゆ」のみ
  • 上一段活用は2語「る」「る」のみ

です.ただし,下二段活用はたくさんあるので,覚える必要がありません.

とくに,「()る」「()る」は数少ない上一段活用という点でも,覚えておかなければなりませんね.

さて,これらの活用は以下のようになります.

ヤ行動詞(上二段,上一段)
動詞語幹未然形連用形終止形連体形已然形命令形
()ゆるゆれいよ
()ゆるゆれいよ
(むく)ゆるゆれいよ
()(射)いるいるいれいよ
()いるいるいれいよ

上の3語が「ヤ行上二段活用」,下の2語が「ヤ行上一段活用」ですね.

ヤ行はイ段が「い」,エ段が「え」であることに注意して下さい.「ゐ」や「ゑ」ではハッキリ間違いです.

ワ行の動詞

ワ行の動詞には「上一段活用」「下二段活用」しかなく,

  • 上一段活用に2語「()る」「()る」
  • 下二段活用に3語「()う」「()う」「()う」

です.とくに,「()る」,「()る」は,数少ない上一段活用の1つという点でも,覚えておかなければなりませんね.

さて,これらの活用は以下のようになります.

ワ行動詞
動詞語幹未然形連用形終止形連体形已然形命令形
()(居)ゐるゐるゐれゐよ
()(率)ゐるゐるゐれゐよ
()うるうれゑよ
()うるうれゑよ
()うるうれゑよ

上の2語が「ワ行上一段活用」,下の3語が「ワ行下二段活用」ですね.

ワ行はイ段が「ゐ」,エ段が「ゑ」であることに注意して下さい.「い」や「え」ではハッキリ間違いです.

ア行,ヤ行,ワ行の動詞の判別法

ア行の動詞,ヤ行の動詞,ワ行の動詞を判別するには

  1. ア行動詞,ワ行動詞を覚える
  2. 活用語尾の文字

の2つが考えられます.どちらの方法でも当たり前に判別できるようにしておいてください.

判別法1

英単語を覚えるように,古文動詞も

  • ア行動詞
  • ヤ行動詞の「下二段活用」と「上一段活用」
  • ワ行動詞の「上一段活用」と「下二段活用」

は覚えてください.

とくに,ア行動詞とワ行動詞は合わせて6個しかないので,これらを覚えてしまえば判別ができますね.

判別法2

ヤ行,ワ行のイ/ウ/エ段には同じひらがなが含まれていないので,活用語尾を見れば判別ができます.

つまり,

  • 活用語尾の中に「い/ゆ/え」があれば,ヤ行動詞
  • 活用語尾の中に「ゐ/う/ゑ」があれば,ワ行動詞

となります.

まとめ

それでは,最後にア行の動詞,ヤ行の動詞,ワ行の動詞の分類表を書いて終わりにしましょう.

ア行,ヤ行,ワ行動詞
活用ア行ヤ行ワ行
上二段活用()ゆ,()ゆ,(むく)
下二段活用()(多数)()う,()う,()
上一段活用()る,()()る,()

このように表にして見ると,意外と覚えるものは少ないですね.

コメント