例えば,
- $2\cos{\theta}=-\sqrt{3}$ $(0\leqq\theta\leqq2\pi)$
- $\tan{(\theta-\pi)}>\sqrt{3}$ $(0<\theta<\pi)$
のような三角関数に関する方程式,不等式は必ず解けるようになっておく必要があります.
- 前々回の記事で有名角の三角関数の値の考え方
- 前回の記事で三角関数のグラフ
について説明しました.
これらはいずれも,$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$の定義と,$\tan{\theta}$の性質を意識すれば,すぐに解けるのでした.
この記事で説明する「三角関数の方程式と不等式」も同様に,$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$の定義と,$\tan{\theta}$の性質を意識することで解くことができます.
一連の記事はこちら
【三角関数1|三角関数/三角比の違いは?三角関数を定義しよう!】
【三角関数2|偏角の変換公式は覚えるな!簡単に導く方法!】
【三角関数3|「ラジアン」の考え方,公式はシンプル!】
【三角関数4|有名角の三角関数は覚えるな!図で判断するコツ】
【三角関数5|三角関数のグラフは縦や横から見るべし!】
【三角関数6|三角関数の方程式や不等式は,点をグルグル回せ!】←今の記事
【三角関数7|三角関数の加法定理の周辺を総まとめ】
【三角関数8|Asinθ+Bcosθの形は三角関数の合成!】
三角関数の方程式
以下の問題を考えます.
次の$\theta$の方程式を解け.
- $\sin{\theta}=\dfrac{1}{2}$ $(0\leqq\theta<2\pi)$
- $\cos{\theta}=-\dfrac{1}{2}$ $(0\leqq\theta<2\pi)$
- $\tan{\theta}=-1$ $(0\leqq\theta<2\pi)$
- $\sin{\theta}=-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ $\bra{-\dfrac{\pi}{2}\leqq\theta<\dfrac{\pi}{2}}$
- $2\cos{(\theta+\pi)}=\sqrt{2}$ $(0<\theta\leqq\pi)$
以下,偏角$\theta$の単位円上の点を点P,原点を点Oとします.
問1
$\sin{\theta}=\dfrac{1}{2}$ $(0\leqq\theta<2\pi)$を解きます.
点Pの$y$座標が$\sin{\theta}$なので,これが$\dfrac{1}{2}$となるような$\theta$が解となります.
いま,$\theta$は$0\leqq\theta<2\pi$の範囲を動くので,単位円上の点Pは点$(1,0)$から反時計回りに1周します.この間で$\sin{\theta}$が$\dfrac{1}{2}$になればよい,すなわち,点Pが下図の赤点部にあればよいので,
解は$\theta=\dfrac{\pi}{6},\dfrac{5\pi}{6}$となります.
問2
$\cos{\theta}=-\dfrac{1}{2}$ $(0\leqq\theta<2\pi)$を解きます.
点Pの$x$座標が$\cos{\theta}$なので,これが$-\dfrac{1}{2}$となるような$\theta$が解となります.
いま,$\theta$は$0\leqq\theta<2\pi$の範囲を動くので,単位円上の点Pは点$(1,0)$から反時計回りに1周します.この間で$\cos{\theta}$が$-\dfrac{1}{2}$になればよい,すなわち,点Pが下図の赤点部にあればよいので,
解は$\theta=\dfrac{2\pi}{3},\dfrac{4\pi}{3}$となります.
問3
$\tan{\theta}=-1$ $(0\leqq\theta<2\pi)$を解きます.
直線OPと直線$x=1$の交点の$y$座標が$\tan{\theta}$なので,これが$-1$となるような$\theta$が解となります.
いま,$\theta$は$0\leqq\theta<2\pi$の範囲を動くので,単位円上の点Pは点$(1,0)$から反時計回りに1周します.この間で$\tan{\theta}$が$-1$になればよい,すなわち,点Pが下図の赤点部にあればよいので,
解は$\theta=\dfrac{3\pi}{4},\dfrac{7\pi}{4}$となります.
問4
$\sin{\theta}=-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ $\bra{-\dfrac{\pi}{2}\leqq\theta<\dfrac{\pi}{2}}$を解きます.
点Pの$y$座標が$\sin{\theta}$なので,これが$-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$となるような$\theta$が解となります.
いま,$\theta$は$-\dfrac{\pi}{2}\leqq\theta<\dfrac{\pi}{2}$の範囲を動くので,単位円上の点Pは点$(0,-1)$から反時計回りに半周します.この間で$\sin{\theta}$が$-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$になればよい,すなわち,点Pが下図の赤点部にあればよいので,
解は$\theta=-\dfrac{\pi}{3}$となります.
問5
$2\cos{(\theta+\pi)}=\sqrt{2}$ $(0<\theta\leqq\pi)$を解きます.
$2\cos{(\theta+\pi)}=\sqrt{2}$を整理すると,$\cos{(\theta+\pi)}=\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ですね.
$\varphi=\theta+\pi$とおくと,方程式は$\cos{\varphi}=\dfrac{\sqrt{2}}{2}$となり,$0<\theta\leqq\pi$から$\pi<\varphi\leqq2\pi$となるので,まずこれを解きましょう.
点Qを偏角$\varphi$の単位円上の点とすると,点Qの$x$座標が$\cos{\theta}$なので,これが$-\dfrac{\sqrt{2}}{2}$となるような$\phi$が解となります.
いま,$\varphi$は$\pi<\varphi\leqq2\pi$の範囲を動くので,単位円上の点Qは点$(-1,0)$から反時計回りに半周します.この間で$\cos{\varphi}$が$-\dfrac{\sqrt{2}}{2}$になればよい,すなわち,点Qが下図の赤点部にあればよいので,
解は$\varphi=\dfrac{5\pi}{4}$となります.もともと$\varphi=\theta+\pi$とおいていたので,解は$\theta=\dfrac{\pi}{4}$となります.
$\sin{\theta}=k$, $\cos{\theta}=k$, $\tan{\theta}=k$型の方程式は$\theta$の動く範囲を考えて,点を単位円周上で動かせばよい.
三角関数の不等式
上でみた方程式で,等号($=$)を不等号($<$, $>$, $\leqq$, $\geqq$)に変えた以下の問題を考えます.
次の$\theta$の方程式を解け.
- $\sin{\theta}\geqq\dfrac{1}{2}$ $(0\leqq\theta<2\pi)$
- $\cos{\theta}>-\dfrac{1}{2}$ $(0\leqq\theta<2\pi)$
- $\tan{\theta}\leqq-1$ $(0\leqq\theta<2\pi)$
- $\sin{\theta}\leqq-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ $\bra{-\dfrac{\pi}{2}\leqq\theta<\dfrac{\pi}{2}}$
- $\cos{(\theta+\pi)}>\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ $(0<\theta\leqq\pi)$
以下,点Pを偏角$\theta$の単位円上の点,点Oを原点とします.
方程式の場合と同様に,$\theta$の範囲を考えて,単位円上で点を動かして考えましょう.
問1
$\sin{\theta}\geqq\dfrac{1}{2}$ $(0\leqq\theta<2\pi)$を解きます.
点Pの$y$座標が$\sin{\theta}$なので,これが$\dfrac{1}{2}$以上となるような$\theta$が解となります.
いま,$\theta$は$0\leqq\theta<2\pi$の範囲を動くので,単位円上の点Pは点$(1,0)$から反時計回りに1周します.この間で$\sin{\theta}$が$\dfrac{1}{2}$以上になればよい,すなわち,点Pが下図の赤線部にあればよいので,
解は$\dfrac{\pi}{6}\leqq\theta\leqq\dfrac{5\pi}{6}$となります.
問2
$\cos{\theta}>-\dfrac{1}{2}$ $(0\leqq\theta<2\pi)$を解きます.
点Pの$x$座標が$\cos{\theta}$なので,これが$-\dfrac{1}{2}$より大きくなるような$\theta$が解となります.
いま,$\theta$は$0\leqq\theta<2\pi$の範囲を動くので,単位円上の点Pは点$(1,0)$から反時計回りに1周します.この間で$\cos{\theta}$が$-\dfrac{1}{2}$より大きくなれば良い,すなわち,点Pが下図の赤線部にあればよいので,
解は$0\leqq\theta<\dfrac{2\pi}{3},\dfrac{4\pi}{3}<\theta\leqq2\pi$となります.
問3
$\tan{\theta}\leqq-1$ $(0\leqq\theta<2\pi)$を解きます.
直線OPと直線$x=1$の交点の$y$座標が$\tan{\theta}$なので,これが$-1$以下になるような$\theta$が解となります.
いま,$\theta$は$0\leqq\theta<2\pi$の範囲を動くので,単位円上の点Pは点$(1,0)$から反時計回りに1周します.この間で$\tan{\theta}$が$-1$以下になればよい,すなわち,点Pが下図の赤線部にあればよいので,
解は$\dfrac{\pi}{2}<\theta\leqq\dfrac{3\pi}{4},\dfrac{3\pi}{2}<\theta\leqq\dfrac{7\pi}{4}$となります.
問4
$\sin{\theta}\leqq-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ $\bra{-\dfrac{\pi}{2}\leqq\theta<\dfrac{\pi}{2}}$を解きます.
点Pの$y$座標が$\sin{\theta}$なので,これが$-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$以下となるような$\theta$が解となります.
いま,$\theta$は$-\dfrac{\pi}{2}\leqq\theta<\dfrac{\pi}{2}$の範囲を動くので,単位円上の点Pは点$(0,-1)$から反時計回りに半周します.この間で$\sin{\theta}$が$-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$以下になればよい,すなわち,点Pが下図の赤線部にあればよいので,
解は$-\dfrac{\pi}{2}\leqq\theta\leqq-\dfrac{\pi}{3}$となります.
問5
$2\cos{(\theta+\pi)}>\sqrt{2}$ $(0<\theta\leqq\pi)$を解きます.
$2\cos{(\theta+\pi)}>\sqrt{2}$を整理すると,$\cos{(\theta+\pi)}>\dfrac{\sqrt{2}}{2}$ですね.
$\varphi=\theta+\pi$とおくと,方程式は$\cos{\varphi}>\dfrac{\sqrt{2}}{2}$となり,$0<\theta\leqq\pi$から$\pi<\varphi\leqq2\pi$となるので,まずこれを解きましょう.
点Qを偏角$\varphi$の単位円上の点とすると,点Qの$x$座標が$\cos{\theta}$なので,これが$-\dfrac{\sqrt{2}}{2}$より大きくなるような$\phi$が解となります.
いま,$\varphi$は$\pi<\varphi\leqq2\pi$の範囲を動くので,単位円上の点Qは点$(-1,0)$から反時計回りに半周します.この間で$\cos{\varphi}$が$-\dfrac{\sqrt{2}}{2}$より大きくなればよい,すなわち,点Qが下図の赤線部にあればよいので,
解は$\dfrac{5\pi}{4}<\varphi\leqq2\pi$となります.もともと$\varphi=\theta+\pi$とおいていたので,解は$\dfrac{\pi}{4}<\theta\leqq\pi$となります.
三角関数の不等式も偏角$\theta$の動く範囲を考えて,単位円上で点を動かして考える.その際,端点を含むのか含まないのかによく注意する.
【次の記事:三角関数7|三角関数の加法定理の周辺を総まとめ】
三角関数の公式の中でも加法定理は中心的な公式で,加法定理から2倍角の公式,3倍角の公式,半角の公式,積和の公式,和積の公式を導くことができます.次の記事では,これら「加法定理の周辺」をまとめます.