基本問題・標準問題が解けないがゆえに応用問題が解けないことは当然です.
しかし,実は「応用問題は解けるのに基本問題・標準問題の出来が良くない」という一見不思議な相談もよく頂きます.
「一見不思議な」と書いたのは,そうなってしまう人のほとんどが共通にもつ原因があって,その原因に気付かないうちは不思議なのですが,原因が分かれば対処することもできるからです.
この記事では「応用問題は解けるのに基本問題・標準問題の出来が良くない」ということが
- なぜ起こるのか
- 起こったときの対処法
を考えていきます.
大学入試で解けたい問題レベル
はっきり分類できるわけではありませんが,この記事では基本問題・標準問題・応用問題の3種類を,大まかに
- 基本問題:そのまま基本公式や考え方を当てはめれば,すぐに解ける問題
- 標準問題:基本公式や考え方に加えて,計算や基本テクニックなど+αが必要な問題
- 応用問題:複数の考え方を併せたり,問題の見方を変えるなどの発想が問題
ということにしましょう.
大学入試で必要なレベル
実際の大学入試ではどれくらいまで必要なのか大体示しておきます.
- 共通テスト:基本問題を確実に解けるようになっておく.ただし,「考えれば解ける」ではなく「問題を見てすぐ解き始められる」が目標.
- 公立大2次・中堅私立大:標準問題が多いが応用問題も扱われる.標準問題を確実に解ければ概ね合格点に達する.
- 国立大2次・難関私立大:標準問題+α〜応用問題が入試問題で扱われ,標準問題を落とすとキツい.
このことからも分かるように,標準問題を解けない状態で公立大以上レベルの入試問題を解こうとしてもかなり厳しいことが分かります.
「基礎問題はできるけど標準レベルになると解けない.でも,まあなんとかなるか.」という考えはかなり甘いので,注意してください.
1問を解くのにかかる時間
また,問題が「どれくらいの時間で解けるか」ということも重要で,このことはこの記事のテーマと密接に関わってきます.
例えば,あなたが「考えれば解けるレベル」なのか「勝手に手が動くレベル」なのかで,問題を解くスピードはかなり変わってきますね.
この「問題を解くスピード」は試験で本質的に重要な能力のひとつで,これについては以下の記事でも説明しています.
たとえば,私と大工さんが「よーいどん」で本棚を作るのでは,当然ながら大工さんの方が速いですね.
これは大工さんは「板の寸法を測る」「板を切る」「釘を打つ」などといった基本の作業が速いので,「本棚を作る」のも素早くできるためです.
これは勉強でも同じことで,基本的な技術を伸ばすことは間接的に他の部分にも良い影響を与えます.
「『基本問題が考えれば解ける』では足りない」ということは常に意識しておきましょう.
応用問題と基本問題・標準問題の関係
それでは本題に移りましょう.
基本問題は難しい
まず意識しておきたいことは「基本問題はその分野の基本であって,簡単とは言っていない」ということです.
例えば,次の問題は中学数学を学んだ方にとっては基本問題です.
$x$の方程式$x^2-3x+2=0$を解け.
左辺を因数分解して方程式$x^2-3x+2=0$は
となるから,「$x-2=0$または$x-1=0$」となるので$x=1,2$と解ける.
しかし,もし因数分解を学んでいない人がこの問題に遭遇したとき,おそらく多くの場合で解くことはできないでしょう.
一方,いったん因数分解を学んでしまえば,この問題はあっという間に解くことができます.
このように,その分野を学ぶ前の人がその分野の基本問題を初見で解くのは難しいことが多いのです.
応用問題が解ける人
応用問題はあくまで「なんらかの『ベースとなる知識』を『応用』して解く問題」なので,解くために必要なのは
- 「ベースとなる知識」を身に付けていること
- 「ベースとなる知識」を応用できること
です.本質的に重要なのは(2)ですが,(2)のためには(1)ができていないとダメですね.
(1)の状態では「ベースとなる知識」を使って解ける基本問題・標準問題は解ける状態です.
しかし,「基本的な使い方しか理解できておらず,他の知識と組み合わせたりすることは難しい状態」が(2)になっていない状態です.
この状態を例えるなら,工具のペンチの使い方で「モノを挟む」しか知らず,「釘を抜く」ことができない状態に似ています.
しかし,「モノを挟む」に「引っ張る」を併せると「釘を抜く」ことができるようになります.これが応用するということです.
使っているのは基本的な知識だけであっても,いろんな使い方ができる人が応用問題が解ける人と言えるわけですね.
応用問題を解くために何か飛び抜けた発想が必要なわけではないことに気付くことが大切です.
入試問題では飛び抜けた発想(や時間)が必要な問題も出題されることはありますが,そのような問題は解けない人が大半なので「捨て問」とされることがほとんどです.そのような問題については,大学側も受験生には「難しいことを察知して解ける問題をきちんと解く能力」を期待していることも多いです.
応用問題は解けるのに,基本問題・標準問題が解けない原因
「応用問題は解けるのに,基本問題・標準問題が解けない」という悩みをもつ人のほとんどは
- 解ける応用問題でベースとなる知識
- 解けない基本問題・標準問題でベースとなる知識
が異なることに気付いていないだけのことが多いです.
つまり,「ベースとなる知識」はひとつではありませんから,
- 知識Aについてはある程度理解できていて,応用問題にも手がつけられる
- 知識Bについては理解が甘く,基本問題・標準問題が解けない
となっているだけであることがほとんどです.
少なくともこれまで教えてきた方の中にこれ以外の原因があった例を覚えていません.
そのため,「応用問題は解けるのに,基本問題・標準問題が解けない」という悩みをもつ人が解けると言っている応用問題も一部でしかなく,他の応用問題を出題すると解けないことが多いです.
例えるなら「ペンチは使い方を熟知しているが,金槌の使い方はよく分からない」という状態で,「釘は抜けるけど,釘の打ち方は知らない」と言っているのと同じですね.
このような悩みには「金槌の使い方を学びなさい」というしかありません.
全ての問題が1つの知識にたどり着くわけではないことは当たり前ですが,このことを意識すれば上のことは自然に理解できますね.
解決策
以上のことから「応用問題は解けるのに,基本問題・標準問題が解けない」という人は「部分的にしか基本問題がフォローできていない」ということになります.
どのように勉強すれば良いか?
いつでも「問題を解くのに必要な『ベースとなる知識』は何か?」を意識することが大切です.
とくに問題が解けなかったときは,「この問題で必要な知識を使った基本問題なら解けるのか?」を自問するようにしてください.
多くの人は解けない問題に遭遇したとき,その問題を復習して終わりにしてしまうのですが,それでは原因の解決になっていません.
もし基本問題まで戻って解けなければ,次も類問でまた同じミスを繰り返してしまうのは目に見えていますね.
俗な言い方をすれば「急がば回れ」はこの場合とても有効な勉強法となります.
基本問題をフォローするメリット
応用問題を解ける人でも基本問題をフォローすると大きなメリットがあります.
例えば,「2次方程式は確実に解ける」という人はその人は,2次方程式が立式できた時点で勝利が確定します.
このように基本的な技術があるほど,「ここまでくればあとは解ける!」の水準が上がるので問題を解くときの見通しが良くなります.
基本的な技術を上げる勉強法は試験時間が足りないという悩みを持つ方にもオススメできる勉強法です.
このように丁寧にベースアップのために基本問題を解くことは,難しい問題に挑戦するだけでは得られないことも身に付くことは覚えておいてください.
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