勉強の効果が出る時期|「成績と実力の差」と長期記憶の話

勉強法・マインド
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「勉強して成績が上がっても,すぐに実力はつかない」ということは常に意識しておきたいことです.

極端な例を挙げるなら「一夜漬け」を考えれば分かりやすいですね.

一夜漬けをして定期試験の成績が上がっても,すぐに抜け落ちてしまって実力として定着しないことは誰しも経験したことがあると思います.

大切なことは一夜漬けのような薄い勉強でなかったとしても,実力がつくには時間がかかるということです.

個人差と勉強法にもよりますが,いまやっている勉強の結果が実力として定着するためには早くても1ヶ月程度必要だと考えてください.

この記事では

  • 成績と実力の違い
  • 実力がつくのに時間がかかる理由

を順に説明します.

成績が上がること・実力がつくことの違い

まずはこの記事の核となる

  • 成績が上がること
  • 実力がつくこと

の違いを説明します.

成績が上がること

この記事でいう「成績」とは

  • テストの成績
  • 通知表の評定

といった数値で表される指標のことで,この成績を上げるのはとても簡単です.

一度本気で2週間前からテスト範囲をきちんと勉強してみてください.必ず定期試験の点数は上がります.結果的に通知表の評定も良くなるでしょう.

ここで言いたいことは「試験勉強をやれ!」ということではなく,成績は比較的短い期間で比較的簡単に上げられるということです.

実力がつくこと

一方,この記事でいう「実力」とは「いつ出題されても解ける地力」のことで,これは成績が上がったから身に付いたと言えるような代物ではありません.

例えば,「試験では点数が取れて成績が上がっても,試験から1週間経ったらもう解けない」というなら,それは「実力が付いた」とは言えないでしょう.

もし,このことに思い当たる節がある方は,そのうち

  • 「定期試験では解けたのに,入試対策の時期になるとまったく思い出せない」
  • 「あのとき,あれだけ頑張ったのにもう忘れてる……」

という大変な思いをする可能性が高いです.

瞬間的にはパワーを発揮するけど,時間が経つとパワーがなくなってしまう,言うなれば「ドーピング式の勉強」になっているとこのようなことになりがちです.

このように,成績を上げることが必ずしも実力につながるわけではないことには注意したいところです.

実力がつくのに時間がかかる理由

では,なぜ実力がつくのに時間がかかるのでしょうか?すぐに実力をつけることはできないのでしょうか?

短期記憶と長期記憶

人間には大まかに

  • 短期記憶
  • 長期記憶

の2つがあります.

我々の脳は受け取った新しい情報を脳の「海馬」と呼ばれる部位に保存しますが,海馬は一時的な情報の保管場所であり,この状態のまま放っておくといずれ情報を忘れてしまいます.

例えば,新しい電話番号・英単語は少しすると忘れているというのは,「海馬」に保存された記憶を忘れてしまうからですね.このような記憶を短期記憶と言います.

一方で,脳は

  • 印象強い情報
  • 何度も思い出す情報

などは大切な情報だと判断し,脳の「側頭葉」と呼ばれる部位に移されます.

側頭葉は長期的に情報を保存しておくことができ,なかなか忘れない記憶となります.このような記憶を長期記憶と言います.

長期記憶へ定着させる方法

実力が「いつ出題されても解ける力」なら,「いつでも思い出せるようにする勉強法」が実力をつける勉強法ということになります.

さらに「いつでも思い出せる」というのは「長期記憶として定着している」ということですから,「長期記憶に移す勉強法」が実力をつける勉強法といえますね.

そもそも脳が長期記憶に情報を残すのはその情報が必要だと判断するためで,先ほど挙げた

  • 印象強い情報
  • 何度も思い出す情報

を脳が必要だと判断するのは自然ですね.

しかし,勉強において全てを印象強い情報と脳に認識させるのは難しいので,何度も思い出す勉強法が効果的になるわけですね.

このことから一回で長期記憶に移すことはほぼ不可能だということが分かります.

そのため,一回で定着させようとするのではなく,忘れたときにきちんと思い出す経験を繰り返すのが大切なわけで,このため実力が付くのには時間がかかるわけですね.

注意したい状態

ただし,長期記憶に定着させる際に注意したいものがあります.

それは「短期記憶ほど短くなく長期記憶ほど長くないような,何日かは覚えてるけど1週間たったら忘れている記憶」です.このような記憶を「中期記憶」ということにしましょう.

この中期記憶が実力をつけたいときに曲者になってきます.

この中期記憶では「定期試験のときは覚えているので,試験は解けるけど1週間経ったら忘れる」という状態になっています.

これが序盤に書いた「成績と実力の差」の正体なわけですね.すなわち,この中期記憶は「身に付いた気がするけど,実際には身に付いていない状態になっていない」という誤解しやすい状態になっているわけですね.

中期記憶の状態では,まだ上で書いた「きちんと思い出す経験」を繰り返さないといけない段階です.

初めに「いまやっている勉強の結果が実力として定着するためには早くても1ヶ月程度必要」と書いたのは,「きちんと思い出す経験」を繰り返して中期記憶を長期記憶として定着させるのにかかる時間がそれくらいだからです.

ただし,毎日やる必要はありませんが,そのときは覚えたと思ってもその後も定期的に復習することは意識するようにしてください.

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