「やったのに解けない」と試験中に頭を抱え,試験が終わってから教科書を見て「ああ,そうだった……」と落胆した経験はほとんど誰にでもあると思います.
授業中の小テストでも,「直前の休み時間に詰め込んだはずの内容すら思い出せない」ということもよくあります.
しかし,これが起こる原因を知っていると当たり前とも言えますが,多くの場合で意識はされていないように思えます.
この記事では,
- 「やったのに解けない」が起こる理由
- 「やったのに解けない」を回避する勉強法
を説明します.
目次
「やったのに解けない」が起こる理由
まず,しっかり意識しておかなければならないことがあります.これを意識できていれば,今の自分の実力を把握することができ,より実力をつけるためにどのような勉強をするべきなのかが分かります.
逆に,これが意識できていなければ,どのような勉強をすれば良いのか分からず,手当たり次第に勉強するハメになります.
勉強は「自分のできないことをできるようにすること」が目的ですから,手当たり次第勉強しても効率が良くありません.
前置きが少し長くなってしまいましたが,勉強するためには次のことを必ず意識しておいてください.
詳しく説明します.ここで,「理解」と「記憶」とは,
- 理解=話のスジが分かること
- 記憶=自分の頭から情報を引っ張り出せること
のことを指します.
「理解」と「記憶」
さらに,「理解」と「記憶」に関して大事なのは,「理解」より「記憶」の方が難しい.(理解<記憶)
ということです.つまり,「理解」と「記憶」の間にはギャップがあり,「『理解』できていても,『記憶』できていないことがある」ということです.
考えてみれば当たり前ですね.
たとえば,「楽しかったなあ」と本を読み終えて人にあらすじを説明するとき,「あれ?どうだったかな?」と思い出せなくなることがありませんか?
人に説明しようとして,「あれ……思い出せない……」となってしまった経験はあると思います.
それは「聞いたり,見たりしたときには分かっていても,それが自分のものになっていない状態」と言うことができますね.
当然,この状態では「記憶」はできていません.しかし,当の本人は「覚えているつもり」なのです.
このギャップが「理解」と「記憶」の差なのです.ここにギャップがあるのにも関わらず,「理解」を「記憶」と勘違いしてしまうことが「やったのにできない」の正体なのです.
知識には「理解」と「記憶」の2段階ある.理解できていても自分のものになっているとは限らない.
「インプット」と「アウトプット」
「脳に情報を入れること」が「インプット」で,「アウトプット」は「その逆で脳から情報を引き出すこと」です.ですから,「理解」は「インプットできること」に相当し,「記憶」は「アウトプットできること」に相当します.
試験では自分の頭から情報を取り出してこなければなりません.つまり,「試験では『アウトプット』ができて初めて正解になる」のですから,きちんとアウトプットできるようにして初めて点数になるのです.
ですから,「やったのにできない」が起こるのは,「アウトプット訓練の不足」が原因なのです.
念のために付け加えておくと,「理解」できていない状態で「記憶」しても,それは「この問題はこう解くものだ!」と「答えを覚えただけ」の丸暗記になっている可能性が高いです.
それでは身につきません.すぐに忘れてしまいますし,膨大な量の暗記が必要になり,時間が足りません.あくまで「理解」の上での「記憶」を目指してください.
「やったのに解けない」とは,「インプット」はできたけど「アウトプット」ができない状態
「やったのに解けない」を回避する勉強
では,この「やったのに解けない」を回避するにはどうすればいいのかということですが,それは「アウトプット訓練」をすることです.
現状を認識する
まず知るべきことは,自分が「記憶」したと思っていることは本当に「記憶」できているのか,「記憶」止まりではないのか,ということです.
自分が「記憶」出来ているかどうかの確認は簡単です.実際に書いてみればいいのです.
ちゃんと「記憶」できていれば,きちんと「アウトプット」できるはずです.
頭の中でできても紙に書き起こす,となるとできないということが意外と多いのです.細部まできっちりやる必要はありませんが,アウトライン程度は紙に書き起こすようにしてください.
「記憶」できていた場合は安心ですが,「理解」止まりだった場合は次のように「アウトプット訓練」をしてください.
自分の「理解の段階」を把握する.
チラ見しながらでも実際にアウトプットする
「記憶」できていなかった場合は,そのまま考え続けてもうまくいかないことが多いでしょう.
ですから,「記憶」できていなかったところは模範解答をチラ見してしまいます.そして,模範解答を閉じて自分で考えながらアウトプットします.
忘れればチラ見して模範解答を閉じ自分で考えながらアウトプット,また忘れれば……,とこれを繰り返すわけです.
最後までいけば,もう一度はじめに戻って「記憶」出来ているかを確認します.
「記憶」できていなければ,チラ見して模範解答を閉じアウトプット,……を繰り返します.
2回目は1回目よりもチラ見の回数は減るはずですし,3回目はさらに減るはずです.
何も見ずにアウトプットする練習を繰り返す.
長期記憶に定着しているか
あくまで入試が目標である以上,その日の勉強でできるようになったとしても,それが1週間後,1ヵ月後にもちゃんと解けるのかどうかというのは大切な問題ですね.
一度「理解」から「記憶」の段階まで上がっていた知識でも,時間が経てば「記憶」から抜けていってしまうことはよくあることです.
覚えたものを忘れてしまうことは,誰にでもありますね.「あれ?前はできてたのにな?」という経験がある人は少なくないでしょう.
そのためには,時間を空けての復習が大切です.
人は何度も思い出す知識を長期記憶として保持しやすいので,時間を空けて忘れた頃に思い出すというプロセスは非常に大切なのです.
【参考記事:勉強の効果が出る時期|「実力」と「成績」の差は何か】
「理解」,「記憶」のステージは下がりうる.
まとめ
さて,こう考えると「問題の答えを見て『ふんふん,なるほどなるほど』と『理解』して,次の問題にいく」だけの勉強法は「記憶」の過程を飛ばしている危険な勉強であることが分かります.
これでは「やったのに思い出せない」が頻発してもおかしくありません.
「アウトプット」は簡単そうに思えて,意外とできないものです.その意外とできないところが「理解」はできるているけど,「記憶」できないところです.
自分が「記憶」できていないところをしっかり把握して,「理解」を「記憶」にまでランクアップさせてください.