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工業的製法2|ハーバー・ボッシュ法,ルシャトリエの原理

  
   

この記事では,工業的製法である「ハーバー・ボッシュ法」を説明します.

「ハーバー・ボッシュ法」とともに,高校化学で習う名前の付いた重要な工業的製法を挙げるとすると次の5つです.

  1. オストワルト法
  2. ハーバー・ボッシュ法
  3. 接触法
  4. アンモニアソーダ法(ソルベー法)
  5. クメン法

他にもアルミニウムなどの重要な工業的製法もありますが,上に挙げた5つは名前が問われてもおかしくないくらい特に重要なので,キッチリ覚えてください.

「ハーバー・ボッシュ法」は水素\mrm{H_2}と窒素\mrm{N_2}を化合させるだけという非常にシンプルな工業的製法ですが,実は奥が深く,最先端の研究としても扱われることがあるようです.

また,「ハーバー・ボッシュ法」の反応の本質には「ルシャトリエの原理」が深く関わっており,「ハーバー・ボッシュ法」を理解するためには「ルシャトリエの原理」を理解することが重要です.

この記事では,「ルシャトリエの原理」も詳しく説明しています.

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ハーバー・ボッシュ法の反応

冒頭でも書きましたが,「ハーバー・ボッシュ法」は水素\mrm{H_2}と窒素\mrm{N_2}からアンモニア\mrm{NH_3}をつくる製法で,その反応はいたってシンプルで次の通りです.

\mrm{3H_2 + N_2 \to 2NH_3}

このとき,触媒として四酸化三鉄\mrm{Fe_3O_4}を用いいます.

水素\mrm{H_2}と窒素\mrm{N_2}を無理やりくっつけてアンモニア\mrm{NH_3}を作ろうという発想ですね.

しかし,実際に窒素と水素を混ぜるだけではこの反応は起こらず,低温高圧の状況下で初めてこの反応が起こります.このことは以下で説明する「ルシャトリエの原理」が本質になっています.

ただし,ここでの低温は200℃程度,高温は700℃程度を想定しています.

ルシャトリエの原理とハーバー・ボッシュ法

[ルシャトリエの原理]は次のように説明されます.

[ルシャトリエの原理] 可逆反応が平衡状態にあるとき,外部から平衡を支配する条件(温度,圧力,濃度)を変えると,その影響を緩和する方向へ平衡が移動し,新しい平衡状態となる

ことです.要するに,

  1. 温度が上がる(下がる)と,温度が下がる(上がる)ように反応が進む
  2. 圧力が上がる(下がる)と,圧力が下がる(上がる)ように反応が進む
  3. 濃度が上がる(下がる)と,温度が下がる(上がる)ように反応が進む

ということです.

さて,「ハーバー・ボッシュ法」では圧力と温度を変化させることで,反応

\mrm{3H_2 + N_2 \to 2NH_3}

が右に進むようにしたいわけです.

圧力について

左辺\mrm{3H_2 + N_2}は窒素\mrm{N_2}が3個,水素\mrm{H_2}が1個の合わせて4個です.一方,右辺\mrm{2NH_3}はアンモニア\mrm{NH_3}が2個です.

いまは平衡を右に進めたいわけですが,いまは左辺が4個右辺が2個なので,圧力を加えると圧力を下げようとしてできるだけ分子の数を減らそうとします.

したがって,圧力を加えると平衡が右に進みます.

まとめると,次のようになります.

窒素\mrm{N_2}と水素\mrm{H_2}の混合気体に圧力を加えると,圧力の増加を緩和する方向へ平衡が移動する.すなわち,圧力が減少する方向へ平行が移動する.合わせて4個の窒素\mrm{N_2}と水素\mrm{H_2}がくっついて2個のアンモニア\mrm{NH_3}になることで圧力が下がるため,平衡が右に移動する.

温度について

反応\mrm{3H_2 + N_2 \to 2NH_3}は発熱反応です.

いまは平衡を右に進めたいわけですから,温度を下げれば温度を上げようとします.発熱反応であることから,右辺に平衡が移動すれば温度が上がります.

したがって,温度を下げれば平衡が右に進みます.

まとめると,次のようになります.

窒素\mathrm{N_2}と水素\mathrm{H_2}の混合気体の温度を下げると,温度の低下を緩和する方向へ平衡が移動する(すなわち,温度を上げようとする)ため,発熱反応であることから平衡が右に移動し,温度が上がる.

したがって,「ハーバー・ボッシュ法」では,高圧,低温であれば,一度に多くのアンモニア\mrm{NH_3}を生成することができます.

実は低温にしすぎては効率が悪い

高圧はそれでいいのですが,実は低温にしすぎると工業的にはあまり効率が良くないのです.

確かに,低温にすると平衡に達したときのアンモニア\mrm{NH_3}の量は多いのですが,平衡に達するまでに時間がかかるのです.

一方,高温にすると平衡に達したときのアンモニア\mrm{NH_3}の量は少ないのですが,平衡に達するまでが速いのです.

そこで,工業的にはその間の丁度いい温度をとって,収集率は若干劣るが反応がそこそこ速い約400℃で反応を起こし,何度もこの操作を繰り返すことで効率を上げています.

平衡に達するまでの時間と,収集率を考えてバランスの良い400℃程度で反応を起こすのが最も効率が良い.

なお,上でも書きましたが,低温でも200℃程度を想定しており,高温では700℃程度を考えていることに注意して下さい.

ハーバー・ボッシュ法は他の工業的製法とは違って,いろんな物質を反応させて目的の物質を作るわけではなく,ルシャトリエの原理を利用しているだけですから,「ハーバー・ボッシュ法」は特殊な製法と言えるかもしれません.

ルシャトリエの原理は地味ですが,重要な原理です.しっかり理解して下さい.

工業的製法3|接触法】に続きます.

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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