工業的製法4|アンモニアソーダ法の2つのポイント

高校化学では,特に重要な工業的製法は5つあります.

そのうちの1つである[アンモニアソーダ法]は炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$の製法で,主な原料は食塩$\ce{NaCl}$です.

なお,[アンモニアソーダ法]という名前は,アンモニア$\ce{NH3}$と炭酸(ソーダ)$\ce{H2CO3}$が登場するところからきています.

[アンモニアソーダ法]は

炭酸カルシウム$\ce{CaCO3}$

二酸化炭素$\ce{CO2}$

炭酸水素ナトリウム$\ce{NaHCO3}$

炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$

という流れで炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$をつくります.

ただし,単にこれだけで終わらせてしまうと,副生成物が多く,無駄が多い製法になってしまいます.

[アンモニアソーダ法]は特に重要な5つの工業的製法の中でも,多くの知識が必要で複雑です.それだけに試験でも狙われやすいので,確実に押さえたい製法です.

なお,「アンモニアソーダ法」はベルギーのエルネスト・ソルベー氏が開発した製法で,「ソルベー法」ということもあります.

アンモニアソーダ法の流れ

「アンモニアソーダ法」は食塩$\ce{NaCl}$から炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$をつくる製法です.

「アンモニアソーダ法」が優れているのは,炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$をつくる過程で出た副生成物をほとんど棄てることなくうまく再利用できる点でしょう.

したがって,「アンモニアソーダ法」は

  • 炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$をつくるステップ
  • 副生成物を再利用するステップ

の2つのステップに分けて理解すると分かりやすいでしょう.

炭酸ナトリウムを作るステップ

最終的に「アンモニアソーダ法」の反応をまとめた式は

\begin{align*} \ce{2NaCl + CaCO3 -> Na2CO3 + CaCl2} \end{align*}

なのですが,実際に食塩$\ce{NaCl}$と炭酸カルシウム(石灰石)$\ce{CaCO3}$を混ぜてもこの反応は起こりません.

しかし,仲介役としてアンモニア$\ce{NH3}$を登場させることで,最終的にこの反応と同じことを起こすことができます.

この反応の流れは,次の通りです.

  1. 炭酸カルシウム$\ce{CaCO3}$を加熱して,二酸化炭素$\ce{CO2}$をつくる.
  2. 塩化ナトリウム(食塩)$\ce{NaCl}$,水$\ce{H2O}$,アンモニア$\ce{NH3}$,二酸化炭素$\ce{CO2}$を反応させて,炭酸水素ナトリウム$\ce{NaHCO3}$をつくる.
  3. 炭酸水素ナトリウム$\ce{NaHCO3}$を加熱して,炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$をつくる.

副生成物を再利用するステップ

しかし,これでは副生成物として,酸化カルシウム(生石灰)$\ce{CaO}$と塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$が生じてしまうことが問題となります.

工業的製法はあくまでビジネスに利用されるのですから,「無駄なく安く」が基本です.そのため,副生成物はできるだけ少なくしたいわけです.

そこで,次のような流れで,酸化カルシウム(生石灰)$\ce{CaO}$と塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$を処理します.

  1. 酸化カルシウム(生石灰)$\ce{CaO}$に水$\ce{H2O}$を加えて,水酸化カルシウム$\ce{Ca(OH)2}$をつくる.
  2. 塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$と水酸化カルシウム$\ce{Ca(OH)2}$を混ぜて,水$\ce{H2O}$,アンモニア$\ce{NH3}$,塩化カルシウム$\ce{CaCl2}$をつくる.

これにより出てきた水$\ce{H2O}$とアンモニア$\ce{NH3}$は再利用できるので,捨てるものが減り無駄が削減されました.

以上より,用意するものは次の4つです.

  1. 塩化ナトリウム(食塩)$\ce{NaCl}$
  2. 水$\ce{H2O}$
  3. アンモニア$\ce{NH3}$
  4. 炭酸カルシウム(石灰石)$\ce{CaCO3}$

炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$をつくるステップと,副生成物を再利用するステップに分けて理解する.

炭酸ナトリウムをつくる

まずは,炭酸ナトリウム $\ce{Na2CO3}$をつくります.

二酸化炭素CO2をつくる

炭酸カルシウム(石灰石)$\ce{CaCO3}$を加熱すると,二酸化炭素$\ce{CO2}$と酸化カルシウム(生石灰)$\ce{CaO}$に熱分解することは知っておきたいところです.

\begin{align*} \ce{CaCO3 -> CO2 + CaO}\dots(1) \end{align*}

炭酸水素ナトリウムNaHCO3をつくる

炭酸水素ナトリウム$\ce{NaHCO3}$は塩化ナトリウム(食塩)$\ce{NaCl}$,水$\ce{H2O}$,アンモニア$\ce{NH3}$,二酸化炭素$\ce{CO2}$を反応させれば発生します.

\begin{align*} \ce{NaCl + H2O + NH3 + CO2 -> NaHCO3 + NH4Cl}\dots(2) \end{align*}

ただし,混ぜ方が実は問題で次のように順に混ぜるのがポイントです.

  1. 水$\ce{H2O}$に食塩$\ce{NaCl}$を溶かして,食塩水$\ce{NaCl}aq$をつくる.
  2. アンモニア$\ce{NH3}$は水によく溶けることを利用して,食塩水$\ce{NaCl}aq$にアンモニア$\ce{NH3}$を吸収させる.
  3. アンモニア$\ce{NH3}$を溶かしたことにより塩基性になるので,二酸化炭素$\ce{CO2}$で中和させることができる.

二酸化炭素$\ce{CO2}$を水$\ce{H2O}$に溶かした炭酸$\ce{H2CO3}$が酸性なので,3で中和が起きるというわけですね.

こうして塩化ナトリウム(食塩)$\ce{NaCl}$,水$\ce{H2O}$,アンモニア$\ce{NH3}$,二酸化炭素$\ce{CO2}$を反応させることができるわけです.

炭酸ナトリウムNa2CO3をつくる

炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$は炭酸水素ナトリウム$\ce{NaHCO3}$の熱分解により生じることは,中学校で習った記憶がある人も多いと思います.

\begin{align*} \ce{2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2}\dots(3) \end{align*}

なお,この分解は1つの化学反応で固体,液体,気体が発生しているという点で特徴的ですね.

一度まとめる

さて,いま出てきた3つの反応式をみます.

\begin{align*} \begin{matrix} \ce{CaCO3} & \to & \ce{CO2 + CaO} &\dots(1)\\ \ce{NaCl + H2O + NH3 + CO2} & \to & \ce{NaHCO3 + NH4Cl} &\dots(2)\\ \ce{2NaHCO3} & \to & \ce{Na2CO3 + H2O + CO2} &\dots(3) \end{matrix} \end{align*}

この3つの反応式について,$(1)+2\times(2)+(3)$とすることで,

\begin{align*} \ce{2NaCl + 2NH3 + CaCO3 + H2O -> Na2CO3 + 2NH4Cl + CaO}\dots(4) \end{align*}

が得られます.(実際に手を動かして確かめてください)

さて,反応式(4)をみると目的の炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$が出来ているので一応は成功です.

炭酸カルシウム$\ce{CaCO3}$→二酸化炭素$\ce{CO2}$→炭酸水素ナトリウム$\ce{NaHCO3}$→炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$

副生成物を処理する

工業的製法は「無駄なく安く」が基本ですから,

\begin{align*} \ce{2NaCl + 2NH3 + CaCO3 + H2O -> Na2CO3 + 2NH4Cl + CaO}\dots(4) \end{align*}

で終わりとしては,副生成物の酸化カルシウム(生石灰)$\ce{CaO}$と塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$が無駄です.

そこで,副生成物として出てきている酸化カルシウム(生石灰)$\ce{CaO}$と塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$をなんとかうまく再利用できる形にしたいと思います.

酸化カルシウム(生石灰)CaOを処理する

アルカリ金属,アルカリ土類金属の酸化物($\ce{Na2O}$, $\ce{BaO}$, $\ce{CaO}$など)に水$\ce{H2O}$を加えると,水酸化物($\ce{NaOH}$, $\ce{Ba(OH)2}$, $\ce{Ca(OH)2}$など)になることを利用します.

この反応は頻出なので,確認しておいてください.

このことから,酸化カルシウム$\ce{CaO}$に水$\ce{H2O}$を加えると,水酸化カルシウム$\ce{Ca(OH)2}$ができるのですが,その反応は次の通りです.

\begin{align*} \ce{CaO + H2O -> Ca(OH)2}\dots(5) \end{align*}

塩化アンモニウムNH4Clを処理する

塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$からアンモニア$\ce{NH3}$を引き剥がすことができれば,アンモニアは再利用できます.

実は,今つくった水酸化カルシウム$\ce{Ca(OH)2}$と塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$を反応させると,次の反応によりアンモニアが発生します.

\begin{align*} \ce{2NH4Cl + Ca(OH)2 -> 2NH3 + 2H2O + CaCl2}\dots(6) \end{align*}

一度まとめる

さて,いま出てきた2つの反応式をみます.

\begin{align*} \begin{matrix} \ce{CaO + H2O} & \to & \ce{Ca(OH)2} & \dots(5)\\ \ce{2NH4Cl + Ca(OH)2} & \to & \ce{2NH3 + 2H2O + CaCl2} & \dots(6) \end{matrix} \end{align*}

について,(5)+(6)とすることで,

\begin{align*} \ce{2NH4Cl + CaO -> 2NH3 + H2O + CaCl2}\dots(7) \end{align*}

を得ます.

これにより,塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$と酸化カルシウム(生石灰)$\ce{CaO}$から,アンモニア$\ce{NH3}$を引き剥がすことに成功し,副生成物は塩化カルシウム$\ce{CaCl2}$だけになりました.

酸化カルシウム(生石灰)$\ce{CaO}$と塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$を再利用する

全てまとめる

さて,炭酸ナトリウム$\ce{Na2CO3}$をつくり,副生成物も処理したところで,すべての式をまとめます.炭酸ナトリウムをつくる反応式(4),副生成物を処理する反応式(7)

\begin{align*} \begin{matrix} \ce{2NaCl + 2NH3 + CaCO3 + H2O} & \to & \ce{Na2CO3 + 2NH4Cl + CaO} & \dots(4)\\ \ce{2NH4Cl + CaO} & \to & \ce{2NH3 + H2O + CaCl2} & \dots(7) \end{matrix} \end{align*}

について,(4)+(7)とすれば,

\begin{align*} \ce{2NaCl + CaCO3 -> Na2CO3 + CaCl2} \end{align*}

となり,全体の反応式が得られます.

補足

最初に書いたように,この製法の利点は無駄が非常に少ない点にあります.

とくに,反応式(2)で使ったアンモニアを反応式(6)で全量回収でき,アンモニアを循環させるだけで新たにアンモニアを必要とせず,棄てることもない点には注目しておきましょう.

このことと副生成物が少ないということで,アンモニアソーダ法は効率的な製法だと言えます.

また,副生成物の塩化カルシウム$\ce{CaCl2}$は道路の凍結防止剤などに用いられることがありますが,用途はあまり多くありません.

そこで,あえてアンモニア$\ce{NH3}$を回収せず,化学肥料として重要な塩化アンモニウム$\ce{NH4Cl}$を取り出すこともあります.

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