酸化還元反応3
酸性条件と中性・塩基性条件で何が変わる?

酸化還元反応
酸化還元反応

例えば,過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$の半反応式を考えるとき,溶液が酸性の場合には

   \begin{align*}\mrm{H_2O_2 + 2H^+ + 2e^- \to 2H_2O}\end{align*}

の半反応式が起こり,溶液が中性または塩基性の場合には

   \begin{align*}\mrm{H_2O_2 + 2e^- \to 2OH^-}\end{align*}

の半反応式が起こります.

このように,同じ物質でも溶液が酸性のときと中性・塩基性のときで,半反応式が異なっているものがあります.

その典型的なものとして

  • 過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$
  • 過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$

があります.

酸性と中性・塩基性それぞれの場合でなぜ半反応式が変わるのかを理解して,きちんと使い分けられるようにしてください.

酸性条件と中性・塩基性条件

前回の記事で酸化剤の半反応式を一覧で紹介しましたが,この記事でも

過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$や過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$

の半反応式を見てみましょう.

酸性条件と中性・塩基性条件での半反応式
物質/化学式(条件)半反応式
過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$
(酸性)

   \begin{align*}\mrm{H_2O_2 + 2H^+ + 2e^- \to 2H_2O}\end{align*}

過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$
(中性・塩基性)

   \begin{align*}\mrm{H_2O_2 + 2e^- \to 2OH^-}\end{align*}

過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$
(酸性)

   \begin{align*}\mrm{MnO_4^- + 8H^+ + 5e^- \to Mn^{2+} + 4H_2O}\end{align*}

過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$
(中性・塩基性)

   \begin{align*}\mrm{MnO_4^- + 2H_2O + 3e^- \to MnO_2 + 4OH^-}\end{align*}

この表から明らかなように,過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$や過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$は「酸性」のときと,「中性・塩基性」ときで半反応式が変わっていますね.

酸性条件

化学反応の中には,硫酸$\mrm{H_2SO_4}$などの酸性溶液中で考えるものがあります.

酸性溶液中には水素イオン$\mrm{H^+}$が多く含まれているため,酸性溶液中の化学反応では水素イオン$\mrm{H^+}$をたくさん与えることができます.

このように「酸性溶液中で考える」というのが酸性条件の意味です.

実際,酸性条件下の過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$, 過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$の半反応式はそれぞれ

   \begin{align*} &\mrm{H_2O_2 + 2H^+ + 2e^- \to 2H_2O}, \\&\mrm{MnO_4^- + 8H^+ + 5e^- \to Mn^{2+} + 4H_2O} \end{align*}

であり,確かに左辺に水素イオン$\mrm{H^+}$が与えられていますね.

中性・塩基性条件

一方で,中性溶液中や塩基性溶液中で化学反応を考えることもあります.

中性溶液中,塩基性溶液中には水素イオン$\mrm{H^+}$は微量しか含まれていいないため,酸性溶液中のように水素イオン$\mrm{H^+}$を与えることができません.

このように「中性・塩基性溶液中で考える」というのが中性・塩基性条件の意味です.

実際,酸性条件下の過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$, 過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$の半反応式はそれぞれ

   \begin{align*} &\mrm{H_2O_2 + 2e^- \to 2OH^-}, \\&\mrm{MnO_4^- + 2H_2O + 3e^- \to MnO_2 + 4OH^-} \end{align*}

であり,確かに左辺に水素イオン$\mrm{H^+}$はありませんね.

酸性条件と中性・塩基性条件の具体例

それでは具体例を考えてみましょう.

酸性条件下での半反応式

シュウ酸の硫酸酸性水溶液に過マンガン酸カリウム水溶液を加えると,どのような反応をするか?

問題に「硫酸酸性下」などと書いてあると,「硫酸を使わないといけないのかな?」と思ってしまいそうですが,「酸化還元反応自体」には硫酸は関係しません.

しかし,硫酸が存在することにより溶液は酸性となるため,この問題では酸性条件下での過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$の半反応式を使うわけですね.

酸性条件下で過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{MnO_4^- + 8H^+ + 5e^- \to Mn^{2+} + 4H_2O}\end{align*}

であり,シュウ酸$\mrm{(COOH)_2}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{(COOH)_2 \to 2CO_2 + 2H^+ + 2e^-}\end{align*}

である.

よって,過マンガン酸カリウム$\mrm{KMnO_4}$が酸化剤,シュウ酸$\mrm{(COOH)_2}$が還元剤として酸化還元反応が生じる.

これらを併せると

   \begin{align*} &\mrm{2KMnO_4 + 5(COOH)_2 + 3H_2SO_4} \\&\mrm{\to 2MnSO_4 + K_2SO_4 + 10CO_2 + 8H_2O} \end{align*}

となりますが,どのようにこの化学反応式を導くかは次の記事で解説しています.

大切なことは「硫酸酸性」という条件が「酸性条件下やから,半反応式の左辺で水素イオン$\mrm{H^+}$使えよ〜」という意味だということです.

なお,硫酸が水素イオン$\mrm{H^+}$を強く押し付ける性質を持つことは当たり前にしておいてください.

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中性・塩基性条件下での半反応式

中性条件の過酸化水素水にヨウ化カリウム水溶液を加えると,どのような反応をするか?

溶液が中性なので,この問題では中性・塩基性条件下での過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$の半反応式を使うわけですね.

中性・塩基性条件下で過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{H_2O_2 + 2e^- \to 2OH^-}\end{align*}

であり,ヨウ化カリウム$\mrm{KI}$の半反応式は

   \begin{align*}\mrm{2I^- \to I_2 + 2e^-}\end{align*}

である.

よって,過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$が酸化剤,ヨウ化カリウム$\mrm{KI}$が還元剤として酸化還元反応が生じる.

これらを併せると

   \begin{align*}\mrm{H_2O_2 + 2KI \to I_2 + 2KOH}\end{align*}

となりますが,どのようにこの化学反応式を導くかは次の記事で解説しています.

半反応式から化学反応式を導く方法

もともと半反応式を考えたのは,酸化還元反応を考えるためでした.

酸化剤の半反応式と還元剤の半反応式が分かれば,それらを組み合わせて化学反応式を作ることができます.

次の記事では,半反応式から酸化還元反応の化学反応式を導く方法を説明します.

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