酸化還元反応5
酸化数は8つの原則と2つの例外で求める

酸化還元反応
酸化還元反応

一連の記事で説明してきたように酸化還元反応では

  • 電子$\mrm{e^-}$を放出するとき酸化される
  • 電子$\mrm{e^-}$を受け取るとき還元される

というのでした.

さて,これまでの記事では「『どれくらい』酸化されているか?還元されているか?」ということは考えてきませんでした.

実は酸化され具合を示す指標として酸化数というものがあり,酸化数を計算することでどれくらい酸化されたのかを考えることができます.

この記事では

  • 酸化数の求め方
  • 酸化数の具体例

を順に説明します.

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酸化数の基本

大雑把に言えば,酸化数とは大雑把には「各元素がどれくらい酸化しているかの指標」を表すものです.

もう少し詳しく述べれば「物質に含まれる各元素の周囲の電子が,単体の時と比べてどれくらい増減しているか」を表したものです.

一般に酸化数が反応前より反応後の方が酸化数が大きければ元素は酸化された,小さければ元素は還元されたということができます.

酸化数は次の8つの原則と2つの例外により定められます.

[酸化数] 物質の酸化数に関して,次で酸化数を定める.

  1. 単体中の元素の酸化数は$0$
  2. 化合物中,イオン中の酸素$\mrm{O}$の酸化数は$-2$
  3. 化合物中,イオン中の水素$\mrm{H}$の酸化数は$+1$
  4. 化合物中,イオン中のハロゲンの酸化数は$-1$
  5. 化合物中,イオン中のアルカリ金属の酸化数は$+1$
  6. 化合物中,イオン中のアルカリ土類金属の酸化数は$+2$
  7. 化合物中のすべての元素の酸化数を足すと$0$
  8. $n$価のイオン中のすべての元素の酸化数を足すと$+n$($n>0$なら陽イオン,$n<0$なら陰イオン)

ただし,次は例外とする.

  1. 過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$中の酸素$\mrm{O}$の酸化数は$-1$
  2. 陽性の強い金属(主にアルカリ金属,アルカリ土類金属)の水素化物中の水素の酸化数は$-1$

酸化数はプラスでも$+1$, $+2$のように,数の前には必ず$+$が必要です.

酸化数の具体例

具体例を用いて酸化数を考えていきましょう.

単体の酸化数の例

単体(一種類の元素のみからなる物質)なら酸化数は$0$なので

  • 塩素$\mrm{Cl_2}$中の元素$\mrm{Cl}$の酸化数は$0$
  • 酸素$\mrm{O_2}$中の元素$\mrm{O}$の酸化数は$0$
  • 水素$\mrm{H_2}$中の元素$\mrm{H}4の酸化数は$0$
  • アルミニウム$\mrm{Al}$中の元素$\mrm{Al}$の酸化数は$0$

です.

このように,単体の酸化数は見た瞬間に$0$です.

酸化数の例外

次は例外なので,見た瞬間に答えが出ます.

  • 過酸化水素$\mrm{H_2O_2}$中の元素$\mrm{O}$の酸化数は$-1$,水素$\mrm{H}$の酸化数は原則通り$+1$
  • 水素化ナトリウム$\mrm{NaH}$中の元素$\mrm{H}$の酸化数は$-1$,ナトリウム$\mrm{Na}$の酸化数は原則通り$+1$
  • 水素化マグネシウム$\mrm{MgH_2}$中の元素$\mrm{H}$の酸化数は$-1$,マグネシウム$\mrm{Mg}$の酸化数は原則通り$+2$

です.

このように例外の酸化数も見た瞬間に分かります.

化合物,イオンの酸化数の例

単体でない場合は酸化数の決まっている元素を原則の2〜6でから決定し,残りの元素の酸化数は原則の7と8を用いて求めます.

例1:酸化マンガン(IV)

酸化マンガン(IV)$\mrm{MnO_2}$中のマンガン$\mrm{Mn}$の酸化数を求めよ.

マンガン$\mrm{Mn}$の参加数を$x$とする.

原則2から化合物中の$\mrm{O}$の酸化数は$-2$である.

また,原則7から化合物中の全ての元素の酸化数を足すと$0$となるので,

   \begin{align*}x\cdot1+(-2)\cdot2=0\Ra x=4\end{align*}

となって,マンガン$\mrm{Mn}$の酸化数は$+4$と分かる.

実は酸化マンガン(IV)のIVは酸化数を表しています.

例2:硫酸

硫酸$\mrm{H_2SO_4}$中の硫黄$\mrm{S}$の酸化数を求めよ.

硫黄$\mrm{S}$の酸化数を$x$とする.

  • 原則2から化合物中の$\mrm{O}$の酸化数は$-2$
  • 原則3から化合物中の$\mrm{H}$の酸化数は$+1$

である.

また,原則7から化合物中の全ての元素の酸化数を足すと$0$となるので,

   \begin{align*}(+1)\cdot2+x\cdot1+(-2)\cdot4=0\Ra x=6\end{align*}

となって,硫黄$\mrm{S}$の酸化数が$+6$と分かる.

例3:二クロム酸カリウム

二クロム酸カリウム$\mrm{K_2Cr_2O_7}$中のクロム$\mrm{Cr}$の酸化数を求めよ.

クロム$\mrm{Cr}$の酸化数を$x$とする.

  • 原則2から化合物中の$\mrm{O}$の酸化数は$-2$
  • 原則5から化合物中の$\mrm{K}$の酸化数は$+1$

である.

また,原則7から化合物中の全ての元素の酸化数を足すと$0$となるので,

   \begin{align*}(+1)\cdot2+x\cdot2+(-2)\cdot7=0\Ra x=6\end{align*}

となって,クロム$\mrm{Cr}の酸化数は$+6$と分かる.

なお,「二クロム酸カリウム」の初めの「二」は,カタカナの「ニ」ではなく漢数字の「二」です.つまり,「二クロム」は「2つのクロム」です.

カタカナで「ニクロム」は電気コンロなどに使われる抵抗の大きい熱源です(「ニクロム」という元素はありません).

例4:過マンガン酸イオン

過マンガン酸イオン$\mrm{MnO_4^-}$中のマンガン$\mrm{Mn}$の酸化数を求めよ.

マンガン$\mrm{Mn}$の酸化数を$x$とする.

原則2から化合物中の$\mrm{O}$の酸化数は$-2$である.

また,原則8からイオン中の全ての元素の酸化数を足すとそのイオンの価数と等しくなるので,

   \begin{align*}x\cdot1+(-2)\cdot4=-1\Ra x=7\end{align*}

となって,マンガン$\mrm{Mn}$の酸化数は$+7$と分かります.

例1の酸化マンガン(IV)$\mrm{MnO_2}$の酸化数が$+4$だったことを思い出すと,過マンガン酸イオン$\mrm{MnO_4^-}$のマンガン$\mrm{Mn}$の方がより酸化されているということができます.

電池と電気分解

電子$\mrm{e^-}$の受け渡しが起こる化学反応を酸化還元反応というのでしたから,この電子$\mrm{e^-}$をうまく取り出すことができれば電気エネルギーが利用できるようになります.

この発想から酸化還元反応を利用して電子$\mrm{e^-}$を取り出す装置を化学電池といいます.

そこで,酸化還元反応の次の分野として「電池と電気分解」があります.

酸化還元反応が応用される分野でとても面白いので,ぜひ続けて学んでみてください.

管理人

プロフィール

山本やまもと 拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

飛び級・首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.

現在はオンライン家庭教師,社会人向け数学教室での講師としての教育活動とともに,京都大学で数学の研究も行っている.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.

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