作図問題は,入試でもあまり出ないため,軽視されがちな分野でもあります.
そのため,「こうすればできる」と方法は知っているものの,なぜそれで良いのかという説明ができない生徒が多いです.
あくまで,高校数学までに出てくる作図では,平行線や合同などを利用する作図がほとんどです.
この記事では,意外と知られていない「線分を等分する作図」について説明します.
相似
「線分を等分する作図」では,次の相似が重要な役割をします.
[相似] $\tri{ABC}$に対して,線分AB上に点$\mrm{D}$を,線分AC上に点$\mrm{E}$をとる.このとき,$\mrm{BC}/\!/\mrm{DE}$なら,$\tri{ABC}\sim\tri{ADE}$となる.
ただし,$/\!/$は平行を,$\sim$は相似を表す.
一般に平行線の同位角は等しいから,$\mrm{BC}/\!/\mrm{DE}$により
- $\ang{ABC}=\ang{ADE}$
- $\ang{ACB}=\ang{AED}$
が成り立つ.
よって,$\tri{ABC}$と$\tri{ADE}$の対応する2角がそれぞれ等しいから,$\tri{ABC}\sim\tri{ADE}$が従う.
この[相似]は非常によく出てくるので,「ピラミッド型の相似」などと呼ばれることもありますね.
平行線が絡む相似の証明には,多くの場合で「平行線の錯角が等しい」や「平行線の同位角が等しい」などを用います.
線分を等分する
それでは,次の問題を考えます.
平面上の線分ABを作図により6等分せよ.
この[問]では6等分ですが,3等分でも4等分でも100等分でも同様に作図できます.
作図法
4つのステップに分けて作図する.
[ステップ1] 点Aを始点とし,点Bを通らない半直線$\ell$と引く.
[ステップ2] コンパスを勝手な半径にとり,針を点Aに刺して描かれる円と,半直線$\ell$との交点を$\mrm{C}_1$とする.
続いて,同じ半径のコンパスで針を点$\mrm{C}_1$に刺して描かれる円と,半直線$\ell$との交点のうちAではない方を$\mrm{C}_2$とする.
$\mrm{C}_3$, $\mrm{C}_4$, $\mrm{C}_5$, $\mrm{C}_6$を,この順になるように同様にとる.このとき,
となる.
[ステップ3] 点Bと点$\mrm{C_6}$を結ぶ直線を$\ell_6$とする.
[ステップ4] 直線$\ell_6$と平行で,点$\mrm{C_1}$, $\mrm{C_2}$, $\mrm{C_3}$, $\mrm{C_4}$, $\mrm{C_5}$を通る直線を,それぞれ$\ell_1$, $\ell_2$, $\ell_3$, $\ell_4$, $\ell_5$とする.
このとき,直線$\ell_1$, $\ell_2$, $\ell_3$, $\ell_4$, $\ell_5$と線分ABの交点をそれぞれ点$\mrm{D_1}$, $\mrm{D_2}$, $\mrm{D_3}$, $\mrm{D_4}$, $\mrm{D_5}$とすると,これらの点によって線分ABは6等分される.
作図が正しいことの証明
続いて,この[解答]によって,確かに線分ABが6等分されていることを証明します.
上の解答によってできた図は,相似により$\tri{AD_1C_1}$, $\tri{AD_2C_2}$, $\tri{AD_3C_3}$, $\tri{AD_4C_4}$, $\tri{AD_5C_5}$, $\tri{ABC_6}$は全て相似である.
よって,解答のステップ2より,
となる.
このように,作図であっても,しっかり根拠をもっていることは大切です.
コメント