小学校以来,我々は$30^\circ$のように「〜度」という単位で角度を表してきました.
この「〜度」という角度の表し方を「度数法」といいますが,度数法では三角関数のグラフを描くときなどに不都合があります.
そこで,より数学的に扱いやすい角度の単位として「弧度法」があります.
弧度法は度数法よりも都合が良いことが多く,例えば「扇型の面積」などの計算が簡単にできます.
この記事では,
- 「弧度法」の定義
- 弧度法に関する大切な公式
を説明します.
一連の記事はこちら
【三角関数1|三角関数/三角比の違いは?三角関数を定義しよう!】
【三角関数2|偏角の変換公式は覚えるな!簡単に導く方法!】
【三角関数3|「ラジアン」の考え方,公式はシンプル!】←今の記事
【三角関数4|有名角の三角関数は覚えるな!図で判断するコツ】
【三角関数5|三角関数のグラフは縦や横から見るべし!】
【三角関数6|三角関数の方程式や不等式は,点をグルグル回せ!】
【三角関数7|三角関数の加法定理の周辺を総まとめ】
【三角関数8|Asinθ+Bcosθの形は三角関数の合成!】
度数法から弧度法へ
小学校から使ってきた「〜度」という単位の角度を「度数法」と言い,この記事で導入する「弧度法」は「〜ラジアン」という単位の角度になります.
度数法
この記事の主役は「弧度法」ですが,「度数法」についてもさっと書いておきましょう.
[度数法] 円周を$360$等分した弧に対する中心角を$1^\circ$と定める.この角度の単位を度数法という.
これはみなさんご存知ですね.
さて,この「度数法」はあまりに普通に使われてきた角度の単位なので,あまり疑問に思わないかもしれませんが,どうして$360$等分なのでしょうか?
これは「1時間=60分」であることと同じ理由です.
実は$100$以下の自然数の中で最も約数が多いのは$60$であり,そのため時間の計算が簡単になるので「1時間=60分」となっています.
同じく「度数法」で$360$等分する理由は,「$360$は約数が多いから」であり,数学的な意味にはさほど重要な数字ではありません.
弧度法
「数学的に意味のある角度」を考えようということで,「弧度法」を考えましょう.
名前に「弧」とついているように,円の弧を使って定義します.
[弧度法] 半径1の扇形の弧の長さが$\theta$であるとき,この扇形の中心角の大きさを$\theta[\mrm{rad}]$と定める.ただし,$\mrm{rad}$は「ラジアン(radian)」と読む.
正確には,「円弧と半径が等しいときの中心角を$1[\mrm{rad}]$と定める」なのですが,ここでは同値な上の条件を定義としておきましょう.
この定義から,半径1の円においては,
- 中心角$\theta[\mrm{rad}]$
- 弧の長さが$\theta$
であることは全く同じということになります.
考え方はシンプルですね!
また,「弧度法」においては,単位の$[\mrm{rad}]$を省略することが多いです.
つまり,「中心角$\theta[\mrm{rad}]$」というのと「中心角$\theta$」というのは,同じことを意味します.
例1
半径1,中心角が$\dfrac{\pi}{3}$の扇形は下図のようになります.
半径1の円においては,「(中心角)=(弧の長さ)」なので弧の長さ$\ell$は$\ell=\dfrac{\pi}{3}$です.
例2
半径2,中心角が$\dfrac{\pi}{3}$の扇形は下図のようになります.
例1のように,半径1の円においては「(中心角)=(弧の長さ)」したが,半径が2になれば弧の長さも2倍になります.
ですから,半径2の場合の円周は
となります.
半径1の円においては,「中心角$[\mrm{rad}]$=(弧の長さ)」が成り立つ.半径が$r$の場合は,相似であることからこの長さも$r$倍となる.
度数法と弧度法の関係
実際に計算すれば分かりますが,[度数法]と[弧度法]の関係は下表のようになります.
度数法 | $0^\circ$ | $30^\circ$ | $45^\circ$ | $60^\circ$ | $90^\circ$ | $120^\circ$ | $135^\circ$ | $150^\circ$ | $180^\circ$ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
弧度法 | 0 | $\dfrac{\pi}{6}$ | $\dfrac{\pi}{4}$ | $\dfrac{\pi}{3}$ | $\dfrac{\pi}{2}$ | $\dfrac{2\pi}{3}$ | $\dfrac{3\pi}{4}$ | $\dfrac{5\pi}{6}$ | $\pi$ |
以上の有名角の$30^\circ$, $45^\circ$, $60^\circ$は,すぐに弧度法で考えられるようになっておいてください.特に,
- 度数法での$180^\circ$
- 弧度法での$\pi$
が一致することを意識しておけば,
- 6等分すれば$30^\circ=\dfrac{\pi}{6}$
- 4等分すれば$45^\circ=\dfrac{\pi}{4}$
- 3等分すれば$60^\circ=\dfrac{\pi}{3}$
となることが分かりますね.
[1] $30^\circ$の場合は6等分
[2] $45^\circ$の場合は4等分
[3] $60^\circ$の場合は3等分
弧度法の公式
弧度法について,以下が成り立ちます.
半径$r$,中心角$\theta$の扇形について,弧の長さを$\ell$,面積を$S$とすると,以下が成り立つ.
- $r\theta=\ell$
- $\dfrac{1}{2}r^{2}\theta=S$
弧の長さの公式
1つ目の公式$r\theta=\ell$は,上の例で見たように,相似の考え方を使うことで分かります.
- 半径1,中心角$\theta$の扇形
- 半径$r$,中心角$\theta$の扇形
の2つを考えると,下図のようになります.
先ほど説明したように,半径1の扇形においては(中心角)=(弧の長さ)なので$\theta$でした.
左の扇形(半径1)と右の扇形(半径$r$)の相似比は$1:r$ですから,弧の長さも当然$1:r$となります.
よって,半径$r$の扇形の弧の長さは$r\theta$となりますね.
面積の公式
まずは扇形の面積の公式を復習しておきましょう.
半径$r$,弧の長さ$\ell$の扇形の面積は$\dfrac{1}{2}r\ell$である.
詳しい説明は省略しますが,
- 高さ$r$,底辺の長さ$\ell$の三角形の面積
- 半径$r$,弧の長さ$\ell$の扇形の面積
はどちらも$\dfrac{1}{2}r\ell$ですね.
さて,これが分かっていれば,1つ目の公式から扇形の面積公式が得られます.
半径$r$,中心角$\theta$の扇形の弧の長さは$r\theta$でしたから,面積$S$は
となりますね.
扇形に関する公式は半径1,中心角$\theta$の扇形との相似を考えれば簡単に得られる.
【次の記事:三角関数4|有名角の三角関数は覚えるな!図で判断するコツ】
$0^\circ\leqq\theta\leqq90^\circ$の場合の三角関数$\sin{\theta}$, $\cos{\theta}$, $\tan{\theta}$の有名角の値をもとにすれば,他の範囲の有名角の三角関数も簡単に得られます.単位円を描いて視覚的に三角関数の値を求めるコツを身に付けてください.