試験前に掃除したくなる理由|セルフハンディキャッピングの罠

勉強法・マインド
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試験前に「無性に掃除をしたくなる」という話をよく聞きます.

掃除ではなく「漫画を読みたくなる」「録画していた番組を見たくなる」「寝てしまう」という人もいるかもしれません.

いずれにせよ目前の課題に対してすべき努力から逃げたくなる心理に陥っているわけですが,この心理現象をセルフハンディキャッピングといいます.

この記事では

  • セルフハンディキャッピングとは何か?
  • セルフハンディキャッピングの対策

を順に解説します.

セルフハンディキャッピングとは何か?

まずはセルフハンディキャッピングがどういうものか説明していきます.

具体例

セルフハンディキャッピングの例としては,次のような「試験前に掃除をしたくなる」ということが挙げられます.

日曜日の朝,A君は明日からテストです.A君は勉強をするつもりだったのですが,自分の部屋にホコリがたまっていることに気が付きました.

そこでA君は「最近,部屋を掃除してないな」と思い掃除を始めます.モップをかけていると部屋全体が何やら散らかっていることに気付き,いつのまにか本格的に掃除を始めます.

気付くと夕食の時間になり,食事を終えて自分の部屋に戻ってきたA君は自分がまったく勉強していないことに気付きます.

そこでA君は次のように考えました.

「今日は疲れた.疲れが残っていたら,試験ではいい結果が残せない.もう寝よう.」

ここで気にしたいことは「夜まで掃除に時間がかかるほど普段から掃除をしていないA君が,なぜ試験前に掃除をしようと思ったのか?」です.

心の防衛反応

このあと試験を受けたA君が良い結果を残せなかったとすると,A君は次のように思うことでしょう.

「試験前に掃除せずにちゃんと勉強していれば,良い点数を取れたかもしれないのに……」

確かにA君はちゃんと勉強していれば良い点数を取れたかもしれません.

しかし,もしA君が試験前にちゃんと勉強していて,良い結果が残せなかったとしたらどうでしょうか?

このとき,A君は点数が悪かった理由を掃除に押し付けることができなくなってしまいます.つまり,本気でやったにも関わらず上手くいかなかったとすると,その理由が自分の無力さによるものだということになってしまいます.

一方で本気にならないでいれば,失敗したとしても「本気を出さなかったからだ」という言い訳ができてしまうわけです.

A君は掃除を言い訳にして「やっていればできたかもしれない」という可能性を残したわけです.たとえ自分が無力であったとしても,「掃除をしたこと」を成績が悪い理由にできるので大して傷付かずに済みます.

結果が悪い理由が「自分の無力さ」にならないように保険をかけてしまうわけで,これがセルフハンディキャッピングの正体です.

そのためセルフハンディキャッピングは「自分が失敗した場合に備えて,失敗の理由を外的条件に求めるような行動をすること」と表現されます.

無意識という罠

セルフハンディキャッピングのタチの悪いところは,無意識であるというところです.

A君は大真面目に「部屋が汚れているから掃除をしよう」という考えのもとでA君は勉強より掃除を優先しました.

決してA君は「自分が失敗したときに傷付かないために掃除をしよう」と考えていたわけではありません.

これはもしA君が「可能性を残そう」と考えている自分に気付いてしまうと,言い訳ができなくなってしまうためです.「部屋が汚れていたから」という理由が,全くの嘘っぱちであることを自ら認めてしまうことになるからです.

このようにセルフハンディキャッピングは「無意識」という罠があるので,なかなか自分では気付けないものになっています.

「可能性を残そう」と考えていることに自分で気づいていないからこそ,「部屋が汚れていたから」という理由が正当性をもつと思えるわけですね.

セルフハンディキャッピングの対策

ここからはセルフハンディキャッピングに惑わされないためのマインドの持ち方を解説します.

自覚すること

セルフハンディキャッピングを防ぐためには,セルフハンディキャッピングを自覚することが大切です.

例えば私はとてもプライドが高いので,傷付くことを恐れる傾向にあります.そのため,自分のプライドを無意識に守ろうとして,セルフハンディキャッピングに陥りやすいことも自覚しています.

そうすると「あ,いまの自分は言い訳して逃げようとしているぞ」ということに気付くことができるようになってきます.

もし,あなたがこれまでのようにセルフハンディキャッピングを知らずにいたなら,これからもずっとA君と同じようなことをしてしまっていたかもしれません.

しかし,実際にはあなたはセルフハンディキャッピングを知りましたから,それだけでセルフハンディキャッピングを自覚できるようになります.

「いまの自分は逃げようとしているのかも知れない」と気付くことができれば,ちゃんと勉強できるのではないでしょうか.

この気付きが大切なのです.

失敗してもいい

仮にちゃんと勉強して成績が良くなかったとしても,努力した分あなたが成長していることは間違いありません.

セルフハンディキャッピングの罠にかかって勉強しないよりも,間違いなく良い方向に向かっています.

多くの人は失敗を恐れますが,むしろ失敗を恐れてチャレンジしない方がそもそも失敗していることに気付きましょう.

チャレンジせずに失敗して自分の中で言い訳する方がよっぽどダサいことに気付いてください.

ちゃんとやって結果が出なかったとしても,それは恥ずかしいことではありません.

失敗は自分ができていないところを洗い出してくれるので,むしろ自分の伸びしろを発見するチャンスです.

人は言い訳の天才

人間は神懸かり的に言い訳を思い付きます.それはもう芸術的なほど多彩な言い訳を思い付きます.

ときには真にやむを得ないこともありますが,「いま自分が考えた理由は本当にどうしようもなかったのか?」「自分を正当化しようとしている言い訳に過ぎないのではないか?」と自問自答するようにしてください.

人間は失敗の理由を求めたがるものです.失敗の理由が見つかれば,自分は無力でないと思えるからです.

しかし,繰り返すように失敗してしまうことは全く悪いことではありません.

セルフハンディキャッピングという偽物の意識に惑わされずに,しっかり前に進んでください.

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