電池と電気分解2
イオン化傾向から電流の向きを判断する

電池と電気分解
電池と電気分解

前回の記事で説明したように,電池とは「酸化還元反応を利用して,電子$\mrm{e^-}$の移動を生じさせる装置」のことをいうのでした.

そのことを見るために,シンプルな電池であるボルタ電池を例に挙げて,電子$\mrm{e^-}$が導線を流れる様子を考えました.

さて,電池では電子$\mrm{e^-}$がどの向きに流れるかを理解することは重要で,そのために金属のイオン化傾向というものを理解する必要があります.

この記事では

  • イオン化傾向
  • イオン化列
  • イオン化傾向の応用例

を順に説明します.

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イオン化傾向とイオン化列

まずはイオン化傾向イオン化列について説明します.

イオン化傾向

イオン化傾向とは次の性質のことを言います.

「溶液中に電子を放出して陽イオンになろうとする性質」をイオン化傾向という.

多くの単体の金属はイオン化傾向を持ちます.

例えば,希硫酸$\mrm{H_2SO_4}$に亜鉛$\mrm{Zn}$をボチャンと浸けると,

   \begin{align*} \mrm{Zn + H_2SO_4 \to ZnSO_4 + H_2} \end{align*}

の反応が起こるのですが,実はこれは亜鉛$\mrm{Zn}$が

   \begin{align*} \mrm{Zn + 2H^+ \to Zn^{2+} + H_2} \end{align*}

と陽イオン$\mrm{Zn^+}$化することが背景にあります.

このように,多くの単体の金属はイオン化傾向をもち,これを用いることで酸化還元反応が引き起こされ,電子$\mrm{e^-}$の移動が起こるわけですね.

イオン化列

実はイオン化傾向には金属によって強さがあります.

つまり,めちゃくちゃ陽イオンになりたい金属もあれば,それほど陽イオンになりたいわけでもない金属もあります.

そこで,金属をイオン化傾向の強さの順に並べたものをイオン化列といい,具体的には次のようになっています.

   \begin{align*} \mrm{K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb(>H)>Cu>Hg>Ag>Pt>Au} \end{align*}

つまり,この中ではカリウム$\mrm{K}$が最もイオン化傾向が強い(最も陽イオンになりやすい)物質で,金$\mrm{Au}$が最もイオン化傾向が弱い(最も陽イオンになりにくい)物質です.

もちろん,この他にも金属はありますが,高校化学ではこれらだけでほとんど十分です.

よくある覚え方としては「借りよかな,まあアテにすんな,ひどすぎる借金」というものがあります.これは

借り($\mrm{K}$)よか($\mrm{Ca}$)な($\mrm{Na}$),
ま($\mrm{Mg}$)あ($\mrm{Al}$)ア($\mrm{Zn}$)テ($\mrm{Fe}$)に($\mrm{Ni}$)すん($\mrm{Sn}$)な($\mrm{Pb}$),
ひ($\mrm{H}$)ど($\mrm{Cu}$)すぎ($\mrm{Hg}$)る借($\mrm{Pt}$)金($\mrm{Au}$)

となっています.電池の反応がどのように進むかを判断するためにイオン化列は重要なので,きちんと覚えておいてください.

電池の仕組み

前回の記事ボルタ電池を例に簡単に説明しましたが,ここでもボルタ電池を例に説明します.

ボルタ電池は亜鉛$\mrm{Zn}$と銅$\mrm{Cu}$を導線で結び,ボチャッと希硫酸$\mrm{H_2SO_4}$に浸ければ完成です.

Rendered by QuickLaTeX.com

図の導線の途中にある〇は抵抗で,たとえば豆電球だと思えばイメージとしては十分です.

亜鉛$\mrm{Zn}$側では,亜鉛$\mrm{Zn}$が溶液中に亜鉛イオン$\ce{Zn^2+}$として溶け出し,そのときに残された電子$\mrm{e^-}$が導線を通って銅$\mrm{Cu}$側へ移動します:

   \begin{align*} \mrm{Zn \to Zn^{2+} + 2e^-} \end{align*}

一方,銅$\mrm{Cu}$側では,導線を通してやってきた電子$\mrm{e^-}$が,溶液中の水素イオン$\mrm{H^+}$とくっついて水素$\mrm{H_2}$になっています:

   \begin{align*} \mrm{2H^+ + 2e^- \to H_2} \end{align*}

Rendered by QuickLaTeX.com

さて,ここで次の問題を考えましょう.

ボルタ電池において,銅$\mrm{Cu}$ではなく亜鉛$\mrm{Zn}$が陽イオン化する理由を答えよ.

銅$\mrm{Cu}$も亜鉛$\mrm{Zn}$も単体の金属ですから,どちらにも陽イオンになる可能性があります.それではなぜ亜鉛$\mrm{Zn}$の方が陽イオンかするのでしょうか,という問題ですね.

この問題に答えるために活きてくるのがイオン化列です.もう一度イオン化列は

   \begin{align*} \mrm{K>Ca>Na>Mg>Al>{\color{blue}\bold{Zn}}>Fe>Ni>Sn>Pb(>H)>{\color{blue}\bold{Cu}}>Hg>Ag>Pt>Au} \end{align*}

でしたから,陽イオンへのなりやすさは$\mrm{Zn>Cu}$となっていますね.つまり,亜鉛$\mrm{Zn}$の方が陽イオンになりやすいわけです.

2つの単体の金属を繋いで電池を作るとき陽イオン化するのはイオン化傾向の強い方のみであり,イオン化傾向の弱い方は陽イオンにならず電子を受け取る役割をします.

そのため,上の問題には次のように答えることができますね.

銅$\mrm{Cu}$のイオン化傾向と亜鉛$\mrm{Zn}$のイオン化傾向を比較すると,亜鉛$\mrm{Zn}$のイオン化傾向の方が大きいため亜鉛$\mrm{Zn}$が陽イオン化する.

ボルタ電池とダニエル電池

前回の記事と今回の記事で登場したボルタ電池は基本的な電池として重要です.しかし,基本的であるが故に分極という不具合が生じてしまうという欠点があります.

そこで,ボルタ電池に工夫を加えることで,この不具合を解消したダニエル電池があります.

次の記事では,ボルタ電池とダニエル電池の仕組みと違いを説明していきます.

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