論理と集合2
和集合・共通部分の補集合はド・モルガンの法則

論理と集合
論理と集合

前回の記事では集合の基礎知識として

  • 集合とは何か?
  • 集合の表し方
  • さまざまな集合

について説明しました.今回の記事では,これらをもとにして

  • 重要な集合(空集合,和集合,共通部分,補集合)
  • ベン図
  • ド・モルガンの法則

を順に説明します.

重要な集合

まずは

  • 空集合
  • 和集合
  • 共通部分
  • 補集合

を説明します.

空集合

ここで,重要な集合である空集合くうしゅうごうを説明しておきます.

要素を1つももたない集合を空集合といい$\emptyset$と表す.

空集合$\emptyset$を無理矢理書くなら$\{\quad\}$ということですね.

また,空集合$\emptyset$は任意の集合の部分集合であるということに注意しましょう.つまり,どんな集合$A$に対しても$\emptyset\subset A$が成り立ちます.

和集合と共通部分

2つの集合から,以下のように新しい集合を定義します.

集合$A$, $B$を集合とする.

  • 「$A$, $B$の少なくとも一方に属する要素全部の集合」を$A$と$B$の和集合といい$A\cup B$と表す.
  • 「$A$, $B$の両方に属する要素全部の集合」を$A$と$B$の共通部分といい$A\cap B$と表す.

和集合$A\cup B$と$A\cap B$はそれぞれ

  • $A\cup B=\{x|x\in A$または$x\in B\}$
  • $A\cup B=\{x|x\in A$かつ$x\in B\}$

とも表せますね.

日常での「または」は「どちらか一方」という意味で用いることが多いですが,数学での「または」は「少なくとも一方」の意味で用いることに注意してください.

そのため,数学の「または」は両方満たしていてもOKです.

次のそれぞれの集合$A$, $B$に対して,和集合$A\cup B$と共通部分$A\cap B$を求めよ.

  1. $A=\{1,2,3,4,5\}$, $B=\{2,4,6\}$
  2. $A=\{2n|n=1,2,3\}$, $B=\{2n-1|n=1,2,3\}$

(1) $A=\{1,2,3,4,5\}$, $B=\{2,4,6\}$に対して,$A\cup B=\{1,2,3,4,5,6\}$である.

Rendered by QuickLaTeX.com

また,$A\cap B=\{2,4\}$である.

Rendered by QuickLaTeX.com

(2) $A=\{2,4,6\}$, $B=\{1,3,5\}$だから,$A\cup B=\{1,2,3,4,5,6\}$である.

Rendered by QuickLaTeX.com

また,$A\cap B=\emptyset$である.

Rendered by QuickLaTeX.com

(1)のように和集合$A\cup B$において,$A$にも$B$にも属している元は1つにまとめて表します.

補集合

最後に,補集合について説明します.

集合$U$と$U$の部分集合$A$を考える.$A$に属さない$U$の要素全部の集合を$U$における$A$の補集合といい$\overline{A}$と表す.また,このときの$U$を全体集合という.

すなわち,$U$における$A$の補集合は

    \begin{align*}\overline{A}=\{x|x\in U,\ x\not\in A\}\end{align*}

となりますね.

補集合を考える上でで大切なことは「どの集合の中での補集合なのか」ということです.これは常に意識しておきましょう.

集合$A=\{1,3,5\}$に対して,次のそれぞれの集合$U$における補集合$\overline{A}$を求めよ.

  1. $U=\{0,1,2,3,4,5\}$
  2. $U=\{1,3,5,7\}$

(1) $U=\{0,1,2,3,4,5\}$での$A$の補集合は$\overline{A}=\{0,2,4\}$である.

Rendered by QuickLaTeX.com

(2) $U=\{1,3,5,7,9\}$での$A$の補集合は$\overline{A}=\{7\}$である.

Rendered by QuickLaTeX.com

ベン図

数のように閉じた曲線で集合を模した図をベン図といいます.べン図は集合を視覚的に表す際によく用いられます.

Rendered by QuickLaTeX.com

全体集合$U$と集合$A$, $B$に対して

  • 共通部分$A\cap B$
  • 和集合$A\cup B$
  • $A$の補集合$\overline{A}$

は下図のようになりますね.

Rendered by QuickLaTeX.com

ド・モルガンの法則

和集合の補集合,共通部分の補集合に対して,次のド・モルガンの法則が成り立ちます.

[ド・モルガンの法則] 全体集合が同じ集合$A$, $B$に対し,次の等式が成り立つ.

  1. $\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup\overline{B}$
  2. $\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap\overline{B}$

それぞれ

  1. 共通部分の補集合は,補集合の和集合
  2. 和集合の補集合は,補集合の共通部分

ということができますね.

形式的には$\overline{\cap}=\cup$, $\overline{\cup}=\cap$ということですね.

以下,全体集合を$U$とし,ド・モルガンの法則が成り立つことをベン図から考えてみましょう.

$\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup\overline{B}$の考え方

$\overline{A}$と$\overline{B}$をそれぞれベン図で表せば,下図のようになりますね.

Rendered by QuickLaTeX.com

よって,これらの和集合$\overline{A}\cup \overline{B}$は下図のようになります.

Rendered by QuickLaTeX.com

これは$A\cap B$の補集合$\overline{A\cap B}$なので,

    \begin{align*}\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup\overline{B}\end{align*}

が成り立つことが分かりますね.

$\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap\overline{B}$の考え方

同様の考え方により,$\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap\overline{B}$が成り立つことも分かります.

$\overline{A}$と$\overline{B}$をそれぞれベン図で表せば,

Rendered by QuickLaTeX.com

なので,この共通部分$\overline{A}\cap \overline{B}$は下図のようになりますね.

Rendered by QuickLaTeX.com

これは$A\cup B$の補集合$\overline{A\cup B}$なので,

    \begin{align*}\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap\overline{B}\end{align*}

が成り立つことが分かりました.

コメント