
集合は数学の基礎で,全ての数学の基礎は集合にあるといってよいほど大切な概念です.
しかし,高校数学の中で集合をハッキリと意識することはそれほどないと思いますし,大学で専門的に数学をする場合以外でそこまで意識しなくてもそれほど問題はない場合が多いのも事実です.
しかし,高校数学でも「場合の数」や「確率」などの分野で積極的に集合を扱うことになるため,集合の扱いには慣れておく必要があります.
この記事では,集合の基礎知識(集合の和集合,共通部分,補集合など)を整理します.
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集合
集合とは「数学的な対象の集まり」のことをいいます.たとえば,「1以上10以下の整数の集合」や「自然数全部の集合」などがあります.集合はいろいろ考えることができます.
もしかすると,今の説明で
「……あれ?集合の定義って曖昧じゃない?」
と思った人もいるかもしれません.実はその感覚は正しく,厳密に集合を定義するには「公理的集合論」を学ぶ必要があります.
ですから,集合の定義についてはこれ以上は触れませんが,集合とは「数などの数学的なモノの集まり」とざっくり思っていても,殆どの場合で問題は起こらないので大丈夫でしょう.
集合の要素と部分集合
集合を構成している1つ1つの対象を「要素」といいます.「要素」のことは「元(ゲン)」ともいいますが,どちらの言葉を使っても同じです.
が集合
が要素であるとき,
と書き「
は
に属する」という.また,
が
に属さないとき,
と書く.
集合の要素が全て集合
の要素でもあるとき,
と書き「
は
に含まれる」または「
は
を含む」という.
が
に含まれないとき,
と書く.
“,
“と”
,
“の使い分けに注意して下さい.
,
は「集合と要素の関係」を表し,
,
は「集合と集合の関係」を表します.この違いはハッキリさせておいてください.
また,「集合と集合
が等しい」つまり
とは「
かつ
であること」をいいます.
ここで注意したいことは,と書くと
がすっぽり
の中に入っていなければならないと思う人もいますが,それは間違いで
のときでも
は正しいです.
集合の例と表し方
「集合」は中カッコで表します.たとえば,
は「と
と
と
を要素とする集合」ですし,
は「の約数全部の集合」です.また,集合は有限個の要素からなる集合だけではなく,自然数全部の集合
や正の偶数全部の集合
のように無限個の要素からなる集合も考えることができます.
また,集合の表し方として,次のような表し方もします.たとえば,「の約数全部の集合」
は
は
の約数
とも表します.これはどういう表し方かというと,前の
の部分で,まず「この集合は全部の集合である」と宣言しています.これだけでは意味が分かりませんが,後ろの
は
の約数
の部分で,「は
の約数である」と宣言しています.併せて,「
は
の約数であり,この集合は
全部の集合である」という意味を持ちます.
たとえば,
は
以上の整数
は「は
以上の整数であり,この集合は
全部の集合である」という意味になります.実際に要素を書き並べると,
ですから,「正の奇数全部の集合」です.また,
は整数
は「は整数であり,この集合は
全部の集合である」という意味で,「偶数全部の集合」ということもできます.実際に要素を書き並べると,
となります.
このように,集合は「要素を書き並べて表す」こともできますし,「のように表す」こともできます.前者の「要素を書き並べて表す表し方」を「内包的記法」といい,後者の「
の表し方」を「外延的記法」といいます.
「内包的記法」,「外延的記法」という言葉は覚える必要はありません.
内包的記法で書かれていても,外延的記法で書かれていても,どのような集合かが分かるようになっておく必要があります.
空集合
ここで,「空集合」という特別な集合を説明しておきます.なお,「空集合」の読み方は「クウシュウゴウ」です.
「要素を1つももたない集合」を「空集合」という.
内包的記号で無理矢理書けばということになります.
空集合は記号でと書きます.ゼロ
を串刺しにした記号です.空集合としてギリシャ文字の
(
)を使うこともありますが,私個人としては
の方が好きです.
どちらを用いるかは趣味の問題なので,あまり気にする必要はありません.
また,空集合について重要な点は,「空集合は任意の集合の部分集合とする」ということです.つまり,「集合がどんな集合であっても,
とする」のです.
和集合と共通部分
,
を集合とします.このとき,
,
の和集合
と共通部分
を次のように定義します.
,
を集合とする.
「,
の少なくとも一方に属する要素全部の集合」を「
と
の和集合」といい,
と表す.
また,「,
の両方に属する要素全部の集合」を「
と
の共通部分」といい,
と表す.
和集合と
は外延的記法をもちいて次のように表せます.
または
,
かつ
ここで注意ですが,日常では「または」は「どちらか一方」という意味で用いることが多いですが,数学では「または」は「少なくとも一方」の意味で用います.
ですから,数学の「または」は両方に含まれていてもOKです.
例1
集合,
に対しては,
,
です.
例2
偶数全部の集合は整数
,奇数全部の集合
は整数
に対しては,
は整数
,
です.なお,の
は整数
は「整数全部の集合」ですね.
「どうして空集合という概念を考えるのか」と疑問に思った人もいるかもしれませんが,この例2のように,共通部分の要素が存在しない場合などに,空集合が自然に使えて便利だからです.
補集合
「集合の補集合」とは,簡単には「集合
に含まれていない要素全部の集合」のことをいいます.しかし,実はこれだけの説明では不十分です.
補集合を考えるときは,「どの集合の中での話なのか」ということは意識しておかなければなりません.
たとえば,集合を
以上
以下の整数からなる集合とします.すなわち,
です.「このとき,
の補集合は?」と聞かれても,全体集合が分からないので,これだけでは答えようがありません.
そこで,たとえば以上
以下の整数からなる集合を
とし,「このとき,
の
における補集合は?」という質問には
と答えることができます.
もし,以上
以下の整数からなる集合を
とし,「このとき,
の
における補集合は?」という質問には
と答えることができます.
このように,「どの集合の中での話なのか」が変わると「補集合」も変わってきます.
この「今考えている全体の集合」のことを「全体集合」といいます.この全体集合という言葉を用いて,「補集合」は次のように定義されます.
全体集合をとし,
を
の部分集合とする.このとき,
に属さない
の要素全部の集合を「
における
の補集合」といい,
と表すことが多い:
「全体集合」はいつでも意識してください.
じつは,数学には「閉包」という概念があり,大学に入るとで「集合
の閉包」を表すことが多く,補集合は
という記号を使うことが多くなります(cはcomplementの頭文字).
しかし,高校生のうちに「閉包」を習うことはないので,という記号で問題ないでしょう.
【論理と集合の基本2|ド・モルガンの法則】に続きます.
たとえば,
は「
は0以上の整数であり,この集合は
全部の集合である」という意味になります.実際に要素を書き並べると,
について,1が入るなら、なぜ2は入らないのかの質問に応えられませんでした
コメントをありがとうございます
集合
は0以上の整数
は,おっしゃる通り,「
は0以上の整数であり,この集合は
全部の集合である」という意味になります.
となるのは,
に
を順に代入してできたものだからですね.
この集合が
逆に言えば,これらを代入して表し得ないものは集合に含まれません.
いま,帰納的に集合が定義されているわけではありませんから,この集合に属するか属さないかは1つずつ検証するしかありません.
ですから,「1が入るなら,なぜ2は入らないのか」という質問に対しては,
となる0以上の整数
が存在する(
)から1は集合に属する.
となる0以上の整数
は存在しない(
)から2は集合に属さない.
「
一方で,
これだけの話で,隣のヤツが集合に属しているかどうかは関係ない.」
という説明になるでしょうか.
もしくは,直感的に
は奇数なので,少なくとも
しか表し得ず,
は0以上だから
となるという説明でも良いかと思います.