前回の記事では,条件$p$と$q$に対して,命題$p\Ra q$の
- 必要条件
- 十分条件
について説明しました.
さて,「$x$の条件」は「$x$の集合」と対応させて考えることができ,命題の真偽を考える際に集合を使って考えるとスッキリ分かる場合があります.
この記事では
- 「$x$の条件」とそれに対応する「$x$の集合」
- 命題と集合の関係
を説明します.
一連の記事はこちら
【論理と集合1|「集合」は数学の共通語!集合の基礎知識】
【論理と集合2|補集合の計算は「ド・モルガンの法則」】
【論理と集合3|「必要条件」「十分条件」は論理のド基本】
【論理と集合4|命題を集合を使って考える超便利な方法】←今の記事
【論理と集合5|対偶はどういう時に使う?対偶の性質】
条件と集合
条件と集合の関係を考えます.
真理集合
たとえば,まず次の条件$p$と$q$を考えます.
- $p$:$x$は4の倍数である
- $q$:$x$は偶数である
このとき,条件$p$と$q$は「$x$の条件」ですね.
このとき,
- 集合$P=\{\dots,-8,-4,0,4,8,\dots\}$
- 集合$Q=\{\dots,-4,-2,0,2,4,\dots\}$
はそれぞれ条件$p$, $q$をみたす$x$全体の集合です.
これについて,以下のように用語を定義します.
$x$の条件$p$に対して,条件$p$をみたす$x$全体の集合を条件$p$の真理集合という.
この「真理集合」という言葉を使うと,
- 集合Pは条件$p$の真理集合
- 集合Qは条件$p$の真理集合
ということになりますね.
「命題の真偽」と「集合の包含関係」
さて,真理集合と命題には次の関係があります.
[命題と集合の関係] 条件$p$, $q$に対して,$p$, $q$の真理集合をそれぞれ$P$, $Q$とする.このとき,次は同値である.
- $p\Ra q$は真である
- $P\subset Q$である
上の例
- $p$:$x$は4の倍数である
- $q$:$x$は偶数である
を考えると命題$p\Ra q$は真で,それぞれの条件の真理集合
- $P=\{\dots,-8,-4,0,4,8,\dots\}$
- $Q=\{\dots,-4,-2,0,2,4,\dots\}$
の包含関係$P\subset Q$が成り立つので,確かに定理が成り立っていますね.
「命題と集合の関係」のイメージ
「命題と集合の関係」をベン図を使って表すことを考えます.
$p$, $q$を条件とし,$p$, $q$の真理集合をそれぞれ$P$, $Q$とします.このとき,集合$P$, $Q$の関係を
- $P\subset Q$のとき
- $P\subset Q$でないとき
の2パターンに分けて考えます.
パターン1
$P\subset Q$のとき,下図のようになりますね.
$P$, $Q$の定め方から,
- 条件$p$をみたす$x$はPに属し,
- 条件$q$をみたす$x$はQに属します.
したがって,$P\subset Q$より条件$p$をみたす$x$は必ず条件$q$をみたすことになり,これは$p\Ra q$が真であるということに他なりませんね.
上に挙げた
- $p$:$x$は4の倍数である
- $q$:$x$は偶数である
はまさにこの状態ですね.
パターン2
$P\subset Q$でないとき,下図のいずれかになりますね.
この場合も
$P$, $Q$の定め方から,
- 条件$p$をみたす$x$はPに属し,
- 条件$q$をみたす$x$はQに属します.
したがって,$P\subset Q$より条件$p$をみたす$x$は必ずしも条件$q$をみたしませんから,これは$p\Ra q$が偽であるということに他なりませんね.
条件$p$をみたしているのに条件$q$をみたしていない場合が1つでもあれば偽なのでしたから,集合Pが少しでも集合Qからはみ出していれば偽というわけですね.
「真理集合の包含関係」から「命題の真偽」が分かる.
条件$p$, $q$に対して,条件$p$, $q$の否定をそれぞれ$\bar{p}$, $\bar{q}$で表すとき,命題$\bar{q}\Ra\bar{p}$を命題$p\Ra q$の対偶といいます.
実は元の命題$p\Ra q$と対偶$\bar{q}\Ra\bar{p}$の真偽は一致するという便利な性質があります.
この性質は証明問題に対して有効な場合があり,次の記事では具体的にそのような証明問題を解説します.