前回の記事の中で
- 和集合
- 共通部分
- 補集合
について説明しました.これらを組み併せた
- 共通部分の補集合$\overline{A\cap B}$
- 和集合の補集合$\overline{A\cup B}$
がどうなるのかを教えてくれる定理として「ド・モルガンの法則」があります.
「ド・モルガンの法則」は補集合を考える際に基本的な定理なので,当たり前に使えるようになっておいてください.
一連の記事はこちら
【論理と集合1|「集合」は数学の共通語!集合の基礎知識】
【論理と集合2|補集合の計算は「ド・モルガンの法則」】←今の記事
【論理と集合3|「必要条件」「十分条件」は論理のド基本】
【論理と集合4|命題を集合を使って考える超便利な方法】
【論理と集合5|対偶はどういう時に使う?対偶の性質】
準備
まずはいくつか準備をしておきましょう.
共通部分,和集合,補集合の復習
念のために,共通部分,和集合,補集合の定義を確認しておきましょう.
$A$, $B$を集合とする.このとき,
- $A$と$B$の両方に含まれる要素全部の集合を$A$と$B$の共通部分といい,$A\cap B$で表す.
- $A$と$B$の少なくとも一方に含まれる要素全部の集合を$A$と$B$の和集合といい,$A\cup B$で表す.
また,集合$C$が集合$U$の部分集合であるとき,$C$に属さない$U$の要素全部の集合を$U$における$C$の補集合といい,$\overline{C}$と表す.
たとえば,集合$A=\{1,3,4\}$, $B=\{0,1,2,3\}$に対して,
- $A\cap B=\{1,3\}$
- $A\cup B=\{0,1,2,3,4\}$
です.さらに,$U=\{1,2,3,4,5\}$に対して,$U$における$A$, $B$の補集合は
- $\overline{A}=\{0,2,5\}$
- $\overline{B}=\{4,5\}$
となります.記号の上では全体集合$U$を明示しないことが多いですが,全体集合が何かは常に意識しておくことが必要です.
ベン図
円のような閉曲線で集合を表した図をベン図といい,べン図は集合を視覚的に表す際に非常によく用いられます.
たとえば,上のベン図は全体集合が$U$で,赤丸の内部が$A$で,青丸の内部が$B$となっています.よって,
- 共通部分$A\cap B$
- 和集合$A\cup B$
- $A$の補集合$\overline{A}$
は下図のようになりますね.
ド・モルガンの法則
それでは,「ド・モルガンの法則」の説明に移ります.
ド・モルガンの法則
[ド・モルガンの法則] 全体集合が同じ集合$A$, $B$に対し,次の等式が成り立つ.
- $\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup\overline{B}$
- $\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap\overline{B}$
それぞれ
- 共通部分の補集合は,補集合の和集合
- 和集合の補集合は,補集合の共通部分
ですね.形式的に書けば,
- $\overline{\cap}=\cup$
- $\overline{\cup}=\cap$
というわけですね.
ド・モルガンの法則が成り立つことの説明
さて,全体集合を$U$とし,「ド・モルガンの法則」の意味をベン図から考えてみましょう.
公式1
まずは$\overline{A\cap B}=\overline{A}\cup\overline{B}$を考えます.
[1] $\overline{A\cap B}$について
$A\cap B$をベン図で表せば
であり,$\overline{A\cap B}$は$A\cap B$の補集合なので,$\overline{A\cap B}$をベン図で表せば
となります.
[2] $\overline{A}\cup\overline{B}$について
$\overline{A}$と$\overline{B}$をベン図で表せば
なので,この和集合$\overline{A}\cup \overline{B}$をベン図で表せば
となります.
[1], [2]より,$\overline{A\cap B}$と$\overline{A}\cup\overline{B}$が同じ集合であることが分かるので,
が成り立つことが分かりました.
公式2
同様の考え方により,$\overline{A\cup B}=\overline{A}\cap\overline{B}$が成り立つことも分かります.
[1] $\overline{A\cup B}$について
$A\cup B$をベン図で表せば
であり,$\overline{A\cup B}$は$A\cup B$の補集合なので,$\overline{A\cup B}$をベン図で表せば
となります.
[2] $\overline{A}\cap\overline{B}$について
$\overline{A}$と$\overline{B}$をベン図で表せば
なので,この共通部分$\overline{A}\cap \overline{B}$をベン図で表せば
となります.
[1], [2]より,$\overline{A\cup B}$と$\overline{A}\cap\overline{B}$が同じ集合であることが分かるので,
が成り立つことが分かりました.
次の記事では,数学において重要な「必要条件」と「十分条件」について説明します.
また,「必要条件」「十分条件」の考え方を理解していれば一瞬で答えが求まるが,知らなければ非常に難しい問題も実際の入試では出題されます.