2020年度の京都大学の前期入試の理系数学を全問(問1〜問6)解説します.
各問を考え方から解説しています.
「大学入試数学解説」の一連の記事
第1問
$a,b$は実数で,$a>0$とする.$z$に関する方程式
は3つの相異なる解を持ち,それらは複素数平面上で一辺の長さが$\sqrt{3}a$の正三角形の頂点となっているとする.このとき,$a,b$と$(*)$の3つの解を求めよ.
3次方程式と絡めた複素数の問題ですね.
解答への筋道
解と係数の関係を使うことはすぐに気付きたい問題で
- 方程式$(*)$が実数係数で虚数解をもつこと
- 3つの解が複素平面上で正三角形をなすという条件を立式できるか
がポイントです.
問題の捉え方
一般に$(z-\gamma)^n=c$型の方程式の解の表す複素数平面上の点が,$\gamma$中心,半径$\sqrt[n]{|c|}$の円周を$n$等分することは知っておいて良いでしょう.また,この逆も成り立ちます.
よって,本問では
- 方程式$(*)$の解が表す点が複素平面上で正三角形をなすこと
- 方程式$(*)$左辺の2次の項が$3az^2$であること
から,方程式$(*)$は$(z+a)^3=k$と変形できるはずなので
となります.よって,これを解くと$a=\sqrt[3]{\dfrac{1}{2}}$, $b=3\sqrt[3]{\dfrac{1}{4}}$, $k=-\dfrac{1}{2}$となり,これを方程式$(*)$に代入して解も得られます.
しかし,「$z^n=c$型の方程式の解が,原点中心,半径$\sqrt[n]{c}$の円周上に等間隔に並ぶ」ことを試験で証明なしに用いるのは少々怖いので,実際の答案では以下のように平易に解くのが無難でしょう.
実数係数$n$次方程式の虚数解
実数係数の$n$次方程式の虚数解に関して,次の定理が成り立つことは大切ですね.
実数係数の$n$次方程式が虚数解$\alpha$をもてば,その共役複素数$\overline{\alpha}$も解となる.
この定理は実数係数でなければ成り立たないので,答案の中でこの定理を用いる際には「実数係数だから」などと一言書いておきましょう.
例えば,方程式$x^2-ix=0$は$x=0,i$と解けますが,虚数解$i$の共役複素数$-i$は解ではありませんから,定理が成り立っていませんね.
本問では3つの複素数の表す複素平面上の点が正三角形をなすことから,解のうち少なくとも1つは実数ではありません.
よって,この虚数解を$\alpha$とすると,$\alpha$の共役複素数$\overline{\alpha}$も方程式$(*)$の解であることが分かりますね.
複素数平面と共役複素数
方程式$(*)$の虚数解$\alpha,\overline{\alpha}$でない実数解を$p$とすると,解と係数の関係から
が得られますが,いま未知数は$\alpha,p,a,b$の4つなのでこれら3本の等式だけでは解けません.
そこで,まだ使っていない「3つの解が表す複素数平面上の点が正三角形をなす」という条件から,等式をもう1本作ることを考えます.
複素数$\alpha,\overline{\alpha}$の表す点は実軸対称ですから,3つの解の表す複素数平面上の点がなす正三角形は例えば下図のようになります.
この図の場合,正三角形の一辺の長さが$\sqrt{3}a$なので,
となって,4つ目の等式が得られましたね.
ただし,$\alpha$の実部が$p$より小さい場合もあることに注意が必要です.
解答例
方程式$(*)$の相異なる3解の表す複素数平面上の3点が正三角形をなすことから,少なくとも1解は虚数解である(もし3解とも実数なら全て実軸上に存在し,三角形をなさない).
この虚数解を$\alpha$とすると,方程式$(*)$が実数係数であることから$\alpha$の共役複素数$\overline{\alpha}$も方程式$(*)$の解となる.
また,$\operatorname{Im}(\alpha)>0$としてよい.ただし,$\operatorname{Im}(\alpha)$は$\alpha$の虚部を表す.
さらに,もし残りの1解が虚数なら,その共役複素数も解となって解を4つもつことになり矛盾するから,残りの1解は実数である.この実数解を$p$とする.
このとき,解と係数の関係より
が成り立つ.ただし,$\operatorname{Re}(\alpha)$は$\alpha$の実部を表す.
[1] $\operatorname{Re}(\alpha)>p$のとき,$\tri{ABC}$の一辺の長さが$\sqrt{3}a$であることより
なので,$(1),(2),(3),(4)$を連立させて解けば良い.$(4)$より$\operatorname{Re}(\alpha)=p+\dfrac{3a}{2}$なので,$(1)$に代入して
となり,これを$(4)$に代入して$\alpha=-\dfrac{a}{2}+\dfrac{\sqrt{3}a}{2}i$を得る.よって,$a>0$に注意して
となるから,$(3)$に代入して
を得る.よって,$p=-\sqrt[3]{4}$であり,$(2)$に代入して
を得る.
[2] $\operatorname{Re}(\alpha)<p$のとき,$\tri{ABC}$の一辺の長さが$\sqrt{3}a$であることより
なので,$(1),(2),(3),(4)’$を連立させて解けば良い.$(4)’$より$\operatorname{Re}(\alpha)=p-\dfrac{3a}{2}$なので,$(1)$に代入して
となるが,このとき
だから,$p$は方程式$(*)$の解になり得ず不適である.
[1], [2]より,$a=\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}}$, $b=\dfrac{3}{\sqrt[3]{4}}$であり,方程式$(*)$の解は
である.
第2問
$p$を正の整数とする.$\alpha$, $\beta$は$x$に関する方程式$x^2-2px-1=0$の2つの解で,$|\alpha|>1$であるとする.
- すべての正の整数$n$に対し,$\alpha^n+\beta^n$は整数であり,さらに偶数であることを証明せよ.
- 極限$\lim\limits_{n\to\infty}(-\alpha)^n\sin{(\alpha^{n}\pi)}$を求めよ.
整数と極限の融合問題ですね.
解答への筋道
(1)では$\alpha^n+\beta^n$が対称式であること,(2)では$\lim\limits_{x\to0}\dfrac{\sin{x}}{x}=1$の公式にどう持ち込むかがポイントです.
問題の捉え方
単純に方程式$x^2-2px-1=0$を解くと,
で,$|\alpha|>1$と$p>0$に注意すると
となります.
$|\beta|<1$より$\lim\limits_{n\to\infty}\beta^n=0$なので,$\alpha^n+\beta^n$が整数であれば$n$が十分に大きいとき$\alpha^n$はほとんど整数となり,したがって$\sin{(\alpha^n \pi)}$はほとんど0となります.
これより$\lim\limits_{n\to\infty}(-\alpha)^n\sin{(\alpha^{n}\pi)}$は
- $\alpha^n$の大きくなる力
- $\sin{(\alpha^n \pi)}$の0に近付く力
の関係を問われているわけですね.
対称式と解と係数の関係
$\alpha^n+\beta^n$が対称式で,$\alpha,\beta$が2次方程式$x^2-2px-1=0$の2解であることから,解と係数の関係を用いることにはすぐ気付きたいところです:
しかし,一般の$n$に対して$\alpha^n+\beta^n$を基本対称式$\alpha+\beta$, $\alpha+\beta$で表すのは少々大変です.
そこで,任意の正の整数$n$に対して,
が成り立つことから,数学的帰納法により示すことができそうですね.
$\sin$が絡む極限
$\sin$が絡む極限として
はよく用いる公式ですね.
ただし,本問の$\sin{(\alpha^{n}\pi)}$において,$\alpha^{n}\pi$は0に収束しないのでこの公式を直接は使えません.
一方,$\beta^{n}\pi$は0に収束するので,$\sin{(\alpha^{n}\pi)}$を$\beta^{n}\pi$を用いて書き直すことで,公式が使えるかもしれません.そこで,(1)より$\alpha^n+\beta^n$は偶数なので
となることを用います.
解答例
解と係数の関係より,
が成り立つ.
(1) 任意の正の整数$n$に対して$\alpha^n+\beta^n$が偶数であることを数学的帰納法により示す.
[1] $n=1$のとき,$p$が整数であることから,
は整数である.
[2] $n=2$のとき,$p$が整数であることから,
は整数である.
[3] $n=k,k+1$のとき$\alpha^n+\beta^n$が偶数であると仮定すると,$p$が整数であることから,
は偶数である.
[1]-[3]より,任意の正の整数$n$に対して$\alpha^n+\beta^n$が偶数である.
(2) $\alpha^n+\beta^n=2m$ ($m$は整数)と表せるから,
を得る.ここで,$\alpha\beta=-1$の両辺で絶対値をとると$|\alpha||\beta|=1$となり,$1<|\alpha|$と併せると
となるから,$\lim\limits_{n\to\infty}\beta^n=0$となり$\lim\limits_{n\to\infty}\beta^n\pi=0$を得る.さらに,$\alpha\beta=-1\neq0$より$\beta\neq0$に注意して,
を得る.
第3問
$k$を正の実数とする.座標空間において,原点$\mrm{O}$を中心とする半径1の球面上の4点$\mrm{A},\mrm{B},\mrm{C},\mrm{D}$が次の関係式を満たしている.
このとき,$k$の値を求めよ.ただし,座標空間の点$\mrm{X},\mrm{Y}$に対して,$\Ve{OX}\cdot\Ve{OY}$は,$\Ve{OX}$と$\Ve{OY}$の内積を表す.
空間ベクトルの問題ですね.
解答への筋道
問題には「座標空間において」とありますが,具体的に座標が設定されている点が原点だけなので,計算しやすいようにうまく座標において解きましょう.
問題の捉え方
中心$\mrm{O}$の球面上の点は$\mrm{O}$と距離が一定なので,$\mrm{OA}=\mrm{OB}=\mrm{OC}=\mrm{OD}=1$であることは見落とせませんね.
これと1つ目の条件$\Ve{OA}\cdot\Ve{OB}=\Ve{OC}\cdot\Ve{OD}=\dfrac{1}{2}$を併せると$\ang{AOB}=\ang{COD}=60^\circ$なので,$\tri{AOB}$, $\tri{COD}$はともに正三角形です.
また,2つめの条件$\Ve{OA}\cdot\Ve{OC}=\Ve{OB}\cdot\Ve{OC}=-\dfrac{\sqrt{6}}{4}$より点$\mrm{A},\mrm{B}$は直線$\mrm{OC}$に関して対称で,同様に3つめの条件より点$\mrm{A},\mrm{B}$は直線$\mrm{OD}$に関して対称ですから,$\tri{AOB},\mrm{COD}$は垂直ですね.
このことから,$\tri{AOB}$と$\tri{COD}$が垂直を保った状態で,$\Ve{OA}\cdot\Ve{OC}=\Ve{OB}\cdot\Ve{OC}=-\dfrac{\sqrt{6}}{4}$が成り立つような位置になったときの$\Ve{OA}\cdot\Ve{OD}=\Ve{OB}\cdot\Ve{OD}$の値を問われているわけですね.
このとき,問題の条件から$\Ve{OA}\cdot\Ve{OC}=\Ve{OB}\cdot\Ve{OC}<0$, $\Ve{OA}\cdot\Ve{OD}=\Ve{OB}\cdot\Ve{OD}>0$なので,
- $\Ve{OA},\Ve{OB}$と$\Ve{OC}$のなす角は鈍角
$\Ve{OA},\Ve{OB}$と$\Ve{OD}$のなす角は鋭角
であることに注意しましょう.
点の座標を設定する
本問では$\tri{AOB},\tri{COD}$を考えやすいように座標におきましょう.設定の仕方は色々考えられますが,
と2点$\mrm{A},\mrm{B}$を$xy$平面上におくと,対称的なので考えやすいでしょう.
$\tri{AOB},\tri{COD}$が垂直だから,2点$\mrm{C},\mrm{D}$は$xz$平面上に存在するので,
とおけますね.
解答例
条件$\Ve{OA}\cdot\Ve{OB}=\dfrac{1}{2}$と$\mrm{OA}=\mrm{OB}=1$を併せて,
が成り立つから$\ang{AOB}=60^\circ$である.よって,$\mrm{OA}=\mrm{OB}$と併せて$\tri{AOB}$は正三角形である.同様に,$\tri{COD}$も正三角形である.
ここで,3点$\mrm{A},\mrm{B},\mrm{C}$の座標をそれぞれ$\biggl(\dfrac{\sqrt{3}}{2},\dfrac{1}{2},0\biggr)$, $\biggl(\dfrac{\sqrt{3}}{2},-\dfrac{1}{2},0\biggr)$, $(a,b,c)$とおくと,$\Ve{OA}\cdot\Ve{OC}=\Ve{OB}\cdot\Ve{OC}$より,
となるから,$\mrm{OC}=1$と併せて$\mrm{C}(\cos{\theta},0,\sin{\theta})$とおける.同様に$\mrm{D}(\cos{\phi},0,\sin{\phi})$とおけ,$\tri{COD}$が正三角形であることから$\phi=\theta\pm60^\circ$が成り立つ.
よって,$\Ve{OA}\cdot\Ve{OC}=-\dfrac{\sqrt{6}}{4}$より
となる.よって,
である(複号同順).$k>0$より$k=\dfrac{3\sqrt{2}-\sqrt{6}}{8}$を得る.
第4問
正の整数$a$に対して,
$a=3^{b}c$ ($b,c$は整数で$c$は3で割り切れない)
の形に書いたとき,$B(a)=b$と定める.例えば,$B(3^{2}\cdot5)=2$である.
$m$, $n$は整数で,次の条件を満たすとする.
(i)$1\leqq m\leqq 30$.
(ii)$1\leqq n\leqq 30$.
(iii)$n$は3で割り切れない.
このような$(m,n)$について,
とするとき,
の最大値を求めよ.また,$A(m,n)$の最大値を与えるような$(m,n)$をすべて求めよ.
整数問題ですね.
解答への筋道
問題文が長く複雑そうな設定に見えますが,きちんと読んでみると単純な問題設定であることが分かります.
また,大学入試の整数問題の典型的な手法である「余りで場合分け」で解けます.
問題の捉え方
まず「$a=3^{b}c$($b,c$は整数で$c$は3で割り切れない)の形」とは「$a$を素因数3で因数分解し切ると$3^{b}$となる」ということに他なりません.
つまり,関数$B(a)$は$a$の素因数3の個数を教えてくれる関数というわけですね.
したがって,$A(m,n)=B(f(m,n))$で定まる関数$A(m,n)$は,$f(m,n)$の素因数3の個数を教えてくれる関数ということになります.
つまり,$f(m,n)$が最も多く素因数3をもつのはいつか,ということを問われているわけですね.
余りで場合分け
整数$\ell$に対して
- $(3\ell)^2=9\ell^2$を3で割った余りは0
- $(3\ell+1)^2=9\ell^2+6\ell+1$を3で割った余りは1
- $(3\ell+2)^2=9\ell^2+12\ell+4$を3で割った余りは1
となるので,整数の2乗を3で割った余りは0または1になる(2にはなりえない)ことは知っておいて良いでしょう.
いま問題の条件より$n$は3の倍数でないので,$n^2$を3で割った余りは1になることが分かります.
同様に整数の2乗を3で割った余りが0または1になる(2と3にはなりえない)ことも知っておいて良いでしょう.
さて,$m^3+n^2+n$が3の倍数とならない場合は$f(m,n)=m^3+n^2+n+3$の素因数3の個数は0個なので,$m^3+n^2+n$が3の倍数となる$(m,n)$を考えればよいですね.
$m=3m’+1,3m’,3m’+2$, $n=3n’+1, 3n’+2$($m’,n’$は整数)を考えることになりますが,例えば$m=3m’$, $n=3n’+1$のときは
となり$m^3+n^2+n$は3の倍数ではありませんね.
このように,3で割った余りを考えることで考える必要のないパターンが見つかり,考えるべき$m,n$を絞ることができるわけですね.
また,3で割った余りは3を法として($\operatorname{mod}\ 3$を)考えることと同じですね.
解答例
$f(m,n)$の素因数3の個数が$k$であることと$A(m,n)=k$であることは同値だから,$f(m,n)$の素因数3の個数が最大になるような$(m,n)$と,そのときの$A(m,n)$を求めればよい.
以下では全て3を法とする.$f(m,n)\not\equiv0$のとき$A(m,n)=0$である.また,
である(条件(iii)から$n\not\equiv0$).$m^3\equiv m$, $n^2\equiv1$なので
だから,$f(m,n)\equiv0$となるには$m\equiv1$, $n\equiv1$または$m\equiv0$, $n\equiv2$であることが必要である.
[1] $(m,n)\equiv(1,1)$のとき,$m=3m’+1$, $n=3n’+1$ ($m’$, $n’$は整数で,$0\leqq m’\leqq9$, $0\leqq n’\leqq9$)とおくと,
であり,
だから,$A(m,n)=1$である.
[2] $(m,n)\equiv(0,2)$のとき,$m=3m’$, $n=3n’-1$($m’,n’$は整数で,$1\leqq m’\leqq10$, $1\leqq n’\leqq10$)とおくと,
なので,$9m’^3+3n’^2-n’+1$の素因数3の個数を考えれば良い.
$9m’^3+3n’^2-n’+1\equiv0$であるためには$n’\equiv1$が必要なので,$n’=3n^{\prime\prime}-2$($n^{\prime\prime}=1,2,3,4$)とおくと,
なので,さらに$3m’^3+9{n^{\prime\prime}}^2-13n^{\prime\prime}+5$の素因数3の個数を考えれば良い.
$3m’^3\equiv0$と
より$n^{\prime\prime}=2$のときを考えればよく,このとき
であり,$m’^3+5\equiv0\iff m’\equiv1$なので,$1\leqq m’\leqq10$と併せて$m’=1,4,7,10$を考えればよい.いずれの場合も
と素因数3の個数は1なので,$f(m,n)$の素因数3の個数は4である.
以上より,$(m,n)=(3,11),(12,11),(21,11),(30,11)$のとき,$A(m,n)$は最大値4をとる.
第5問
縦4個,横4個のマス目のそれぞれに1, 2, 3, 4の数字を入れていく.このマス目の横の並びを行といい,縦の並びを列という.どの行にも,どの列にも同じ数字が1回しか現れない入れ方は何通りあるか求めよ.下図はこのような入れ方の一例である.
場合の数の問題は「もれなく重複なく数え上げる」のが基本です.
解答への筋道
問題で挙げられている例について,列をどのように入れ替えても条件を満たす異なる入れ方になることに気付けるかどうかが分かれ目です.
つまり,以下の2つは2列目と3列目を入れ替えただけですが,どちらも条件を満たしていますね.
よって,一番上の行が$1,2,3,4$と並んでいる場合で有り得るパターンを網羅すれば,列を入れ替えがあることから$\times4!$すればよいですね.
同様に列をどのように入れ替えても条件を満たすので,さらに一番左の列が$1,2,3,4$と並んでいる場合で有り得るパターンを網羅すれば,$2,3,4$列を入れ替えがあることから$\times3!$すればよいですね.
解答例
上から$i$行目を第$i$行,左から$j$列目を第$j$列ということにし,第$i$行第$j$列のマスの数字を$a_{ij}$と書くことにする.
まず,$a_{1j}=j$ $(j=1,2,3,4)$かつ$a_{i1}=i$ $(i=2,3,4)$のときを考える.
このとき,$a_{12}=a_{21}=2$より「2」のマスへの入れ方は,以下の2パターンがある.
[パターン1]
[パターン2]
[パターン1]について,残りのマスのうち「3」が入るのは$a_{22}$, $a_{24}$, $a_{42}$に限る.もし$a_{22}=3$なら4つめの「3」を入れられないから,$a_{22}\neq3$である.
よって,$a_{24}=a_{42}=3$であり,同様に$a_{23}=a_{32}=4$である.
したがって,[パターン1]は下図の1通りに定まる.
[パターン2]について,「3」の入れ方は以下の2パターンがある.
[パターン2-1]
[パターン2-2]
[パターン2-1]は「1」の入れ方が1通りに定まり,結局[パターン2-1]は下図のようになる.
[パターン2-2]は$a_{44}=1$が決まり,中央の4マスは下図の2通りの入れ方がある.
よって,$a_{1j}=j$ $(j=1,2,3,4)$かつ$a_{i1}=i$ $(i=2,3,4)$のとき,マスへの入れ方は4通りである.
$a_{i1}$の入れ替え$3!$通りのそれぞれの場合で同様に考えられ,さらに$a_{1j}$の入れ替え$4!$通りのそれぞれの場合で同様に考えられるから,求める場合の数は
である.
第6問
$x,y,z$を座標とする空間において,$xz$平面内の曲線
を$z$軸のまわりに1回転させるとき,この曲線が通過した部分よりなる図形を$S$とする.この$S$をさらに$x$軸のまわりに1回転させるとき,$S$が通過した部分よりなる立体を$V$とする.このとき,$V$の体積を求めよ.
与えられた式は少々複雑で不気味ですが,定石通り積分法により回転体の体積を求める問題です.
解答への筋道
図形$S$を$x$軸周りの回転体を考えるので,回転体$S$の$x$軸に垂直な断面を捉えられるかがポイントです.
問題の捉え方
$xz$平面での曲線$z=\sqrt{\log{(1+x)}}$ $(0\leqq x\leqq1)$は下図のグラフをもちますね.
このグラフの$z$軸のまわりに回転させてできる図形が$S$なので,$S$は原点で尖った図形になりますね.
本問では,この図形$S$を$x$軸の周りに回転させてできる回転体$V$の体積を問われているわけですね.
$xyz$空間上の体積は断面積に注目
立体$V$は$x$軸の周りに回転させてできる回転体なので,$x$軸に垂直な平面$x=t$($-1\leqq t\leqq1$)での図形$S$の断面を考えることが大切ですね.
立体$V$の対称性から$x\geqq0$での体積を2倍すればよいので,$0\leqq t\leqq1$で考えれば十分ですね.
$xz$平面内の曲線$z=\sqrt{\log{(1+x)}}$上の点$\mrm{P}(s,0,\sqrt{\log{(1+s)}})$($0\leqq s\leqq 1$)を$z$軸周りに回転させましょう.
この回転で点$\mrm{P}$が平面$x=t$を通るのは$t\leqq s\leqq 1$のときで,このとき点$\mrm{P}$は$(t,\pm\sqrt{s^2-t^2},\sqrt{\log{1+s}})$を通ります.
この$x=t$での断面は$xz$平面に関して対称なので$y\geqq0$で考えればよく,$s$を$t\leqq s\leqq 1$で動かせば$x=t$での図形$S$の断面が下図のようになることが分かりますね.
回転体の体積
$x=t$での図形$S$の断面は
- $y=0$のときが$x$軸に最も近い
- $y=\sqrt{1-t^2}$のときが$x$軸から最も遠い
ので,$x=t$での立体$V$の断面は下図のようになりますね.
よって,この面積を$0\leqq t\leqq1$で積分すれば回転体$V$の体積が得られますね.
解答例
回転体$V$は$yz$平面に関して対称なので,$x\leqq0$での$V$の体積を2倍すればよい.また,図形$S$は$xz$平面に関して対称だから,$y\leqq0$での図形$S$の回転体が$x\leqq0$での$V$となる.
任意に$0\leqq t\leqq 1$なる実数$t$をとる.また,$xz$平面内の曲線$z=\sqrt{\log{(1+x)}}$上の点$\mrm{P}(s,0,\sqrt{\log{(1+s)}})$($t\leqq s\leqq 1$)をとる.
点$\mrm{P}$を$z$軸の周りで回転させたとき,$x=t$上の点$(t,b,\sqrt{\log{(1+s)}})$($b\geqq0$)を通るとすると
である.
点$(t,b,\sqrt{\log{(1+s)}})$と$x$軸との距離は
である.$f(s)=\sqrt{s^2-t^2+\log{(1+s)}}$とすると,$f$は単調増加なので$x=t$での$V$の断面積は
である.
よって,$V$の体積は
となる.
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