対称式は基本対称式を使え!対称式のコツを例題から解説

多項式
多項式

次の問題はどのように解きますか?

実数$x$, $y$が$x+y=3$, $xy=1$を満たすとき,$x^4+y^4$の値を求めよ.

「$x+y=3$, $xy=1$を連立方程式だと思って,$x$, $y$を求めて代入!」という方法でも確かに解けますが,実際に$x$, $y$を求めると

    \begin{align*}x,y=\frac{3\pm\sqrt{5}}{2}\end{align*}

なので,これを$x^4+y^4$に代入して計算するのはかなり面倒です.

そこで上手い方法を考えたいわけですが,$x^4+y^4$が対称式であることを利用する方法があります.

この記事では

  • 対称式とは何か?
  • 対称式を利用する問題
  • 3次以上の対称式

を順に解説します.

対称式とは何か?

まずは対称式について基本事項を解説します.

対称式の定義と重要性質

$x$, $y$の多項式が対称式であるとは,$x$と$y$を入れ替えても元の多項式に等しい多項式のことをいう.

「$x$, $y$の多項式$f(x,y)$が対称式であるとは,$f(x,y)=f(y,x)$が成り立つことをいう」といっても同じことですね.

例えば

    \begin{align*}&xy,\quad x+y,\quad x^2+y^2,\quad (x-y)^2 \\&2x+2y-xy,\quad x^3+98x^2y^2+y^3+7\end{align*}

などはいずれも$x$, $y$の対称式です.例えば

    \begin{align*}xy=yx,\quad y^2+x^2=x^2+y^2,\quad (x-y)^2=(y-x)^2\end{align*}

といった具合ですね.

さて,$x$, $y$の対称式の中でも$x+y$, $xy$は基本対称式とよばれる特別な対称式です.

この2つの対称式がどのように特別かというと,実は次の定理が成り立ちます.

任意の$x$, $y$の対称式は基本対称式$x+y$, $xy$の和,差,積で表すことができる.

この定理から基本対称式は対称式の基本単位であるといえますね.

この定理はとても強力で,この定理を背景とした問題は大学入試でも頻出です.

3文字以上の多項式についても対称式は定義されますが,これについてはこの記事の最後を参照してください.

基本対称式で対称式を表す例

それでは実際に$x$, $y$の対称式をいくつか基本対称式$x+y$, $xy$の和,差,積で表してみましょう.

次の$x$, $y$の対称式を基本対称式$x+y$, $xy$の和,差,積で表せ.

  1. $x^2+y^2$
  2. $(x-y)^2$
  3. $x^3+y^3$

(1) $(x+y)^2$を展開すると,$(x+y)^2=x^2+2xy+y^2$なので,$2xy$を移項して

    \begin{align*}x^2+y^2=(x+y)^2-2xy\end{align*}

と$x^2+y^2$が基本対称式$x+y$, $xy$の和,差,積で表せる.

(2) $(x-y)^2$を展開すると,$(x-y)^2=x^2-2xy+y^2$であり,(1)と併せると

    \begin{align*}(x-y)^2=\{(x+y)^2-2xy\}-2xy=(x+y)^2-4xy\end{align*}

と$(x-y)^2$が基本対称式$x+y$, $xy$の和,差,積で表せる.

(3) $(x+y)^3$を展開すると,$(x+y)^3=x^3+3x^2y+3xy^2+y^3$なので,$3x^2y+3xy^2$を$3xy$でくくって移項して

    \begin{align*}x^3+y^3=(x+y)^3-3xy(x+y)\end{align*}

と$x^3+y^3$が基本対称式$x+y$, $xy$の和,差,積で表せる.

対称式を利用する問題

次の問題は対称式を用いる典型的な問題です.

$t$の方程式$t^2-3t+1=0$の2解を$x$, $y$とするとき,次の値を求めよ.

  1. $x^2y+x^2y$
  2. $x^2+y^2$
  3. $x^4+y^4$

この問題ではいずれの多項式も対称式なので「$x+y$と$xy$が求まるのではないか」と考えたいところです.

2次方程式の解と係数の関係から$x+y$, $xy$の値が求まるので,対称式であることを利用しましょう.

解と係数の関係から,$x+y=3$, $xy=1$である.

(1) $x^2y+x^2y=xy(x+y)$だから,この右辺に$x+y$, $xy$を代入して

    \begin{align*}x^2y+x^2y=1\cdot3=3\end{align*}

である.

(2) $x^2+y^2=(x+y)^2-2xy$だから,この右辺に$x+y$, $xy$を代入して

    \begin{align*}x^2+y^2=3^2-2\times1=7\end{align*}

である.

(3) $(x+y)^4=x^4+4x^3y+6x^2y^2+4xy^3+y^4$だから,$4x^3y+6x^2y^2+4xy^3$を移項して

    \begin{align*}x^4+y^4=&(x+y)^4-(4x^3y+6x^2y^2+4xy^3)\\=&(x+y)^4-\{4xy(x^2+y^2)+6(xy)^2\}\end{align*}

である.この右辺に$x+y$, $xy$と(2)で求めた$x^2+y^2$を代入して

    \begin{align*}x^4+y^4=3^4-(4\cdot1\cdot7+6\cdot1^2)=47\end{align*}

である.

$x$, $y$を具体的に求めて代入するよりもよっぽど速いですね.

この問題のように,解と係数の関係と絡めて対称式が出題されることはよくあるので,意識しておくと気付きやすいでしょう.

3変数以上の対称式

3変数以上でも同様に対称式が定義されます.

$x_1,x_2,\dots,x_n$の多項式が対称式であるとは,$x_1,x_2,\dots,x_n$をのように入れ替えても元の多項式に等しい多項式のことをいう.

例えば,3変数$x,y,z$の対称式は

    \begin{align*}&x+y+z,\quad xyz(x+y+z), \\&x^2y+y^2z+z^2x+xy^2+yz^2+zx^2\end{align*}

などですね.

また,$x$, $y$, $z$の基本対称式は$x+y+z$, $xy+yz+zx$, $xyz$で,やはり任意の$x$, $y$, $z$の対称式は基本対称式の和,差,積で表すことができます.

例えば,$x^2y+y^2z+z^2x+xy^2+yz^2+zx^2$は

    \begin{align*}&x^2y+y^2z+z^2x+xy^2+yz^2+zx^2\\=&(xy+yz+zx)(x+y+z)-3xyz\end{align*}

と表せます.

一般に$n$次方程式$(t-x_1)(t-x_2)\dots(t-x_n)$を展開したときの係数に現れるもの(符号を全て$+$にしたもの)が基本対称式となります.

例えば,4変数$x,y,z,w$の基本対称式は

    \begin{align*}&(t-x)(t-y)(t-z)(t-w) \\=&t^4-(x+y+z+w)t^3 \\&+(xy+yz+zw+wx)t^2 \\&-(xyz+xyw+xzw+yzw)t+xyzw\end{align*}

の係数をみて$x+y+z+w$, $xy+yz+zw+wx$, $xyz+xyw+xzw+yzw$, $xyzw$の4つとなります.

管理人

プロフィール

山本やまもと 拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

飛び級・首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.

現在はオンライン家庭教師,社会人向け数学教室での講師としての教育活動とともに,京都大学で数学の研究も行っている.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.

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