前回の記事では,展開と因数分解について4つの基本公式
の公式について説明しました.
これら4つの公式は,$x^2$の係数が1の場合にしか適用できませんでした.
そこで,この記事では,$x^2$の係数が1でない場合にも使えるたすきがけ因数分解の公式とよばれる
について説明します.
一連の記事はこちら
【多項式の基本1|「展開」と「因数分解」の4つの基本公式】
【多項式の基本2|たすきがけ因数分解の公式の使い方】←今の記事
【多項式の基本3|2次式の最小値・最大値は平方完成が鉄板!】
【多項式の基本4|2次方程式の[解の公式]の導出と使い方】
【多項式の基本5|2次方程式の判別式と,2次方程式の虚数解】
【多項式の基本6|3次以上の展開と因数分解の公式の総まとめ】
【多項式の基本7|[多項式の割り算]を考え方から理解しよう】
【多項式の基本8|[因数定理]と[剰余の定理]は当たり前!】
【多項式の基本9|[解と係数の関係]は覚える必要なし!】
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たすきがけ因数分解の公式
前回の記事で説明した4つの公式
はこれらの中でも$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$が使えれば,十分であると書きました.
この記事で扱うたすきがけ因数分解の公式
で$a=c=1$とすれば,公式$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$が出るため,$(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$よりも強い公式となっています.
公式$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$に比べて,[たすきがけ因数分解の公式]が優れている点は,$x^2$の係数が1でない場合にも使えるところです.
たとえば,$2x^2+7x+3$, $6x^2+7x-3$などは[たすきがけ因数分解の公式]を用いて因数分解することになります.
その代わり,公式$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$を用いるときには,「かけて定数,和が1次」と標語的に考えることで因数分解できましたが,[たすきがけ因数分解の公式]は他にも考えることがあります.
そのため,実際に自分の手で問題を解いて感覚を身につけてください.
[たすきがけ因数分解の公式]は$x^2$の係数が1でない場合に使えると言う点が優れている.その反面,$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$の公式より考えることが増えるので,しっかり問題を解いて慣れたい.
たすきがけ因数分解の公式の例
[たすきがけ因数分解の公式]では,「2次の係数から候補を絞って考える」という考え方がポイントです.
例1
$2x^2+7x+3$ですが,2次の係数が2であることから
と因数分解できることが期待できます.
さらに,定数項が3であることから,因数分解の候補として
- $(x+3)(2x+1)$
- $(x+1)(2x+3)$
- $(x-3)(2x-1)$
- $(x-1)(2x-3)$
が挙げられます.
これらの1次の係数は順に7,5,$-7$, $-5$ですから,$2x^2+7x+3$と等しいのは1次の係数が7で等しい$(x+3)(2x+1)$です.よって,
と因数分解できます.
例2
$6x^2+7x-3$ですが,2次の係数が6であることから
または
と因数分解できることを期待します.
さらに,定数項が$-3$であることから,因数分解の候補として
- $(x+1)(6x-3)$
- $(x-1)(6x+3)$
- $(x+3)(6x-1)$
- $(x-3)(6x+1)$
- $(2x+1)(3x-3)$
- $(2x-1)(3x+3)$
- $(2x+3)(3x-1)$
- $(2x-3)(3x+1)$
が挙げられます.
これらの1次の係数は順に3,$-3$, $17$, $-17$, $-3$,3,7,$-7$ですから,$6x^2+7x-3$と等しいのは1次の係数が7で等しい$(2x+3)(3x-1)$です.よって,
と因数分解されることが分かります.
[たすきがけ因数分解の公式]では,「2次の係数」と「定数項」から候補を絞り一つ一つ検証すればよい.
【次の記事:多項式の基本3|2次式の最小値・最大値は平方完成が鉄板!】
2次式の変形の1つである[平方完成]はとても重要で,[平方完成]を用いると2次関数のグラフを$xy$平面上に描くことができます.これにより,2次式の最大値・最小値を求めることができます.