例えば,2次方程式$x^2-2x-3=0$は左辺を因数分解して$(x-3)(x+1)=0$となるので,解が$x=3,-1$と分かります.
一方,2次方程式$x^2-2x-2=0$のように簡単には因数分解できない2次方程式を解くには別の方法を採る必要があります.
実は,前回の記事で説明した[平方完成]を用いることで,どんな2次方程式も解くことができる2次方程式の解の公式を導くことができます.
また,因数分解が難しい2次式$ax^2+bx+c$であっても,2次方程式$ax^2+bx+c=0$の解を求めることができれば,2次式$ax^2+bx+c$を因数分解できるようになります.
この記事では,
- 2次方程式の解の公式
- 因数分解が難しい2次式の因数分解
を説明します.
一連の記事はこちら
【多項式の基本1|「展開」と「因数分解」の4つの基本公式】
【多項式の基本2|たすきがけ因数分解の公式の使い方】
【多項式の基本3|2次式の最小値・最大値は平方完成が鉄板!】
【多項式の基本4|2次方程式の[解の公式]の導出と使い方】←今の記事
【多項式の基本5|2次方程式の判別式と,2次方程式の虚数解】
【多項式の基本6|3次以上の展開と因数分解の公式の総まとめ】
【多項式の基本7|[多項式の割り算]を考え方から理解しよう】
【多項式の基本8|[因数定理]と[剰余の定理]は当たり前!】
【多項式の基本9|[解と係数の関係]は覚える必要なし!】
2次方程式の解の公式
[2次方程式の解の公式]は以下の通りです.
[2次方程式の解の公式] $x$の2次方程式の$ax^2+bx+c=0$の解は
である.これを2次方程式の解の公式という.
以下では,これを早速導出していきますが,そのためには[平方完成]を用います.
[平方完成]については,前回の記事を参照してください.
【前回の記事:多項式の基本3|2次関数の最小値・最大値は平方完成が鉄板!】
[平方完成]は2次式の変形として基本的なものであり,[平方完成]を用いれば2次関数のグラフを描くことができます.その結果として,2次関数の最大値・最小値も求められるようになります.
2次方程式の解の公式の導出
$ax^2+bx+c$を[平方完成]すると,
となります.よって,2次方程式$ax^2+bx+c=0$は
となります.ここで,左辺のカッコの中身を$X=x+\frac{b}{2a}$と一まとまりに考えると,
となります.もともと$X=x+\frac{b}{2a}$だったので,
となり,「2次方程式の解の公式」が得られました!
この「2次方程式の解の公式」は必ずさっと使えるくらいに覚えておいてください.
2次方程式の解の公式の例1
2次方程式$2x^2+x-3=0$は,解の公式で$(a,b,c)=(2,1,-3)$の場合なので,解の公式より,
です.このように,解の公式を用いてもいいですが,実は$2x^2+x-3$は
と因数分解から解くこともできます.
この因数分解に気付かなくても,解の公式を使えば2次方程式は解けてしまうという意味で解の公式は優秀ですが,単純に因数分解できる場合には因数分解で解いた方が計算ミスは少ないですね.
2次方程式の解の公式の例2
2次方程式$x^2+2x-2=0$は,解の公式で$(a,b,c)=(1,2,-2)$の場合なので,解の公式より,
ですから,解は$-1+\sqrt{3}$と$-1-\sqrt{3}$です.
なお,解の公式を用いてもいいですが,平方完成に慣れていれば,
と計算できます.
「2次方程式の解の公式」が平方完成から導ける以上,平方完成から2次方程式が解けるのも当たり前ですね.この程度の2次方程式なら,私は平方完成を使って暗算で解きます.
2次方程式の解の公式の例3
2次方程式$2x^2+x-2=0$は,解の公式で$(a,b,c)=(2,1,-2)$の場合なので,解の公式より,
ですから,解は$\dfrac{-1+\sqrt{17}}{2}$と$\dfrac{-1-\sqrt{17}}{2}$です.これくらいになると,因数分解による解法も平方完成による解法も面倒ですから解の公式を使うのが最も速いでしょう.
2次方程式の解の公式は万能であるが,因数分解の方が計算ミスは少なくなるので,因数分解できるときには因数分解でできるようにする.
因数分解と解の公式
それでは,上の例2,例3で登場した
- $x^2+2x-2$
- $2x^2+x-2$
などのように,因数分解の公式を適用するのが難しい場合を考えましょう.
しかし,公式は使えなくても,次のことを用いれば因数分解することができます.
[因数分解] 方程式$ax^2+bx+c=0$が解$\alpha$, $\beta$をもてば,$ax^2+bx+c$は
と因数分解できる.
この事実は[因数定理]から直ちに導かれますが,多項式は少し先の内容なので,ここではあまり触れないでおきます.
【多項式の基本6|[因数定理]と[剰余の定理]は当たり前!】
[因数定理]や[剰余の定理]に苦手意識を持つ人は少なくありませんが,イメージが分かれば「当たり前やん」と納得できる内容です.[因数定理]と[剰余の定理]を具体例を用いてイメージから説明します.
この定理を用いて
- $x^2+2x-2$
- $2x^2+x-2$
を因数分解しましょう.
$x^2+2x-2=0$と$2x^2+x-2=0$の解は上の例2,例3から
と解けましたから,
と因数分解できます.このように
- 解の公式で$ax^2+bx+c=0$の解$\alpha$, $\beta$を求める
- 因数定理から$ax^2+bx+c=(x-\alpha)(x-\beta)$と因数分解
という流れで,全ての2次式が因数分解できます.
しかし,あくまでこの方法を使うべきなのは[因数分解の公式]で因数分解できない場合です.というのも,この方法は計算ミスを起こしやすいからです.
やはり計算ミスの危険が少ない「因数分解の公式」もしっかり身につけておくべきで,どちらの方法にも対応できるようにしておいて下さい.
因数分解が難しい2次式は[2次方程式の解の公式]から解を求めることで因数分解できる.
【次の記事:多項式の基本5|2次方程式の判別式と,2次方程式の虚数解】
2次方程式の実数解の個数は0個,1個,2個のいずれかであり,この2次方程式の[実数解の個数]が簡単に求められるものとして[判別式]があります.また,2次方程式が実数解をもたない場合にも虚数解を考えることができます.