2次方程式$x^2-2x-3=0$は左辺を因数分解して$(x-3)(x+1)=0$となるので,解が$x=3,-1$と分かります.
では,次の方程式はどのように解けば良いでしょうか?
$x$の2次方程式$x^2-2x-2=0$を解け.
この方程式は簡単には因数分解できないので,この2次方程式を解くには別の方法を採る必要がありますが,実は前回の記事で紹介した平方完成を用いることで解くことができます.
どのような2次方程式も平方完成を用いれば原理的には必ず解くことができますが,平方完成が面倒な場合も少なくありません.
そのような場合には2次方程式の解の公式を用いることで解を求めることもできます.
この記事では,
- 平方完成による2次方程式の解法
- 2次方程式の解の公式
- 2次式の因数分解
を順に説明します.
「多項式」の一連の記事
平方完成による2次方程式の解法
あえて何も言わず冒頭の問題を平方完成により解いてみましょう.
平方完成については以下の前回の記事を参照してください.

(再掲)$x$の2次方程式$x^2-2x-2=0$を解け.
左辺$x^2-2x-2$は
と平方完成できる.
よって,方程式は
である.$X=x-1$とおくと$X^2=3$なので$X=\pm\sqrt{3}$となる.$X$を$x$に戻して
と解ける.
つまり,平方完成を用いることで,2次方程式は
の形に変形することができ,ここから$x-A=\pm\sqrt{B}$となって$x=A\pm\sqrt{B}$が得られるわけですね.
2次方程式の解の公式
いまの平方完成による2次方程式の解法はどんな2次方程式に対しても用いることができます.
そのため,2次方程式$ax^2+bx+c=0$の解を求めておけば,その式に$a,b,c$を代入することで解が得られることになりますね.
このようにして得られる公式を2次方程式の解の公式といいます.
導出
[2次方程式の解の公式] $x$の2次方程式の$ax^2+bx+c=0$の解は
である.
2次式$ax^2+bx+c$は
と平方完成できます.よって,2次方程式$ax^2+bx+c=0$は
となる.よって,両辺で平方根をとって
を得る.
2次方程式の解の公式はさっと使えるくらいに覚えておいてください.
いま私が早口で言ってみると3秒で言えました.ここまで速く言えなくても,スラスラ感があるくらいにはしっかり覚えてください.
例1
2次方程式$2x^2+x-3=0$を解け.
上の2次方程式の解の公式の$(a,b,c)=(2,1,-3)$の場合なので,解の公式より,
である.
このように解の公式を用いてもいいですが,因数分解$2x^2+x-3=(2x+3)(x-1)$に気付けば
とも解けます.
因数分解に気付かなくても解の公式を使えば解けてしまうという意味で解の公式は優秀ですが,因数分解できる場合には因数分解で解いた方が計算ミスは少ないですね.
例2
2次方程式$x^2+2x-2=0$を解け.
上の2次方程式の解の公式の$(a,b,c)=(1,2,-2)$の場合なので,解の公式より,
ですから,解は$-1+\sqrt{3}$と$-1-\sqrt{3}$です.
このように解の公式を用いてもいいですが,平方完成から
とも解けます.
これくらいの2次方程式なら平方完成の方が速いし計算ミスも少ないでしょう.
例3
2次方程式$2x^2+x-2=0$を解け.
上の2次方程式の解の公式の$(a,b,c)=(2,1,-2)$の場合なので,解の公式より,
ですから,解は$\dfrac{-1+\sqrt{17}}{2}$と$\dfrac{-1-\sqrt{17}}{2}$です.
これくらいの2次方程式になると,解の公式を使うのが良いでしょう.
公式に頼らない2次式の因数分解
最後に因数分解公式からは簡単に因数分解できない2次式を平方完成する方法を紹介します.
それでは,上の例2,例3で登場した
- $x^2+2x-2$
- $2x^2+x-2$
などのように,基本の因数分解の公式を適用するのが難しいですね.
しかし,実は解が先に分かっている2次方程式は次のように因数分解することができます.
2次方程式$ax^2+bx+c=0$が解$\alpha$, $\beta$をもてば,$ax^2+bx+c$は
と因数分解できる.
これは解が$\alpha,\beta$なら因数分解したときに$(x-\alpha)(x-\beta)$が現れるはずで,加えて2次の係数が$a$だからですね.
この定理を用いて次の問題を解きましょう.
$x$の2次式$x^2+2x-2$, $2x^2+x-2$をそれぞれ因数分解せよ.
$x^2+2x-2=0$と$2x^2+x-2=0$の解は上の例より
だったから,
と因数分解できる.
この考え方を一般化した因数定理という定理があります が,少し先の話なのでここではこれ以上触れないでおきます.

因数定理・剰余の定理は当たり前!
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