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多項式の基本8|[因数定理]と[剰余の定理]は当たり前!

3次以上の多項式の因数分解を考えるとき,公式が使えれば簡単ですが,公式を適用できないことも多くあります.

その場合には[因数定理]による因数分解を考えるのが定石です.

[因数定理]は決して難しいものではなく,一度分かってしまえばアタリマエにすら思えるものです.

また,似た定理に[剰余の定理]があり,[因数定理]のイメージがつかめていれば,[剰余の定理]も同様に考えることができやはり当たり前に思えることでしょう.

この記事では

  • 因数定理
  • 剰余の定理

を説明します.

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因数定理

まず,確認しておきたいのは次の[事実1]です.

[事実1] 多項式$f(x)$と定数$a$を考える.$f(x)$が$x-a$を因数にもつとき,$f(a)=0$となる.

言い換えれば,多項式$g(x)$を用いて

\begin{align*} f(x)=(x-a)g(x) \end{align*}

と表せるとき,$f(a)=0$となる.

たとえば,$f(x)=(x-1)(x^2+x+1)$のとき,$x=1$で$x-1=0$となるので$f(1)=0$ですね.

このように,「$f(x)=(x-a)g(x)$と表せていれば$f(a)=0$となる」という[事実1]はアタリマエですね.

さて,[因数定理]はこの[事実1]の逆です.

[因数定理] 多項式$f(x)$と定数$a$を考える.$f(a)=0$となるとき,$f(x)$は$x-a$を因数にもつ.

多項式$f(x)$に$a$を代入して0になるなら,そりゃあ$f(x)$は$x-a$を因数にもっていそうですよね.

[因数定理]はただこれだけのことなのです.

「多項式$f(x)$が$f(x)=(x-a)g(x)$と表せるなら,$f(a)=0$が成り立つ」は当たり前である.この逆の「多項式$f(x)$が$f(a)=0$を満たすなら,$f(x)=(x-a)g(x)$と表せる」が[因数定理]である.

因数定理の例1

3次以上の多項式を因数分解するときは,最初に公式で因数分解できないかを考えます.

それでも,公式を使って因数分解できない時には,因数定理を使うのが定石です.

$x^3-6x^2+11x-6$を因数分解します.この3次式に$x=1$を代入すると,

\begin{align*} 1^3-6\cdot1^2+11\cdot1-6=1-6+11-6=0 \end{align*}

となるので,[因数定理]より$x^3-6x^2+11x-6$は$x-1$を因数にもつことが分かります.

$x^3+4x^2-5$を$x-1$で割ると,

\begin{align*} \begin{matrix} &&x^2&-5x&-6&\\ \cline{2-6} x-1&\!\!\!\big)&x^3&-6x^2&11x&-6\\ &&x^3&-x^2&&\\ \cline{2-6} &&&-5x^2&11x&-6\\ &&&-5x^2&5x&\\ \cline{2-6} &&&&6x&-6\\ &&&&6x&-6\\ \cline{2-6} &&&&&0 \end{matrix} \end{align*}

なので,商は$x^2-5x-6$,余りは0となります(既に$x-1$を因数にもつことが分かっているので,余りが0なのは当たり前です).すなわち,

\begin{align*} x^3-6x^2+11x-6=(x^2-5x-6)(x-1) \end{align*}

が成り立ちます.

さらに,2次式$x^2-5x-6$は

\begin{align*} x^2-5x-6=(x-3)(x-2) \end{align*}

と因数分解できます.したがって,

\begin{align*} x^3-6x^2+11x-6=(x-3)(x-2)(x-1) \end{align*}

が得られます.

因数定理の例2

$3x^3-7x^2-7x+3$を因数分解します.この3次式に$x=-1$を代入すると,

\begin{align*} 3\cdot(-1)^3-7\cdot(-1)^2-7\cdot(-1)+3=-3-7+7+3=0 \end{align*}

となるので,[因数定理]より$3x^3-7x^2-7x+3$は$x+1$を因数にもつことが分かります.$3x^3-7x^2-7x+3$を$x+1$で割ると,

\begin{align*} \begin{matrix} &&3x^2&-10x&3&\\ \cline{2-6} x+1&\!\!\!\big)&3x^3&-7x^2&-7x&3\\ &&3x^3&3x^2&&\\ \cline{2-6} &&&-10x^2&-7x&3\\ &&&-10x^2&-10x&\\ \cline{2-6} &&&&3x&3\\ &&&&3x&3\\ \cline{2-6} &&&&&0 \end{matrix} \end{align*}

なので,

\begin{align*} 3x^3-7x^2-7x+3=(3x^2-10x+3)(x+1) \end{align*}

です.さらに,2次式$x^2-5x-6$は次のように因数分解できます.

\begin{align*} 3x^2-10x+3=(3x-1)(x-3) \end{align*}

したがって,

\begin{align*} 3x^3-7x^2-7x+3=(3x-1)(x-3)(x+1) \end{align*}

が分かります.

$f(a)=0$となる数$a$を具体的に見つけることで,[因数定理]から$f(x)$が$x-a$を因数にもつことが分かる.

因数定理の証明

[因数定理]の証明はとても簡単で,多項式の割り算が分かっていればすぐに導出できます.

[因数定理(再掲)] 多項式$f(x)$と定数$a$に対して$f(a)=0$となるとき,$f(x)$は$x-a$を因数にもつ.

[証明]

$f(x)$を$x-a$で割った商を$g(x)$とし,余りを$c$とする(1次式で割った余りは定数となるから,$c$は定数である).このとき,

\begin{align*} f(x)=(x-a)g(x)+c \end{align*}

だから,

\begin{align*} 0=f(a)=(a-a)g(a)+c=c \end{align*}

となって,$c=0$を得る.よって,$f(x)=(x-a)g(x)$が成り立つ.すなわち,$f(x)$は$x-a$を因数にもつ.

[証明終]

剰余の定理

次に,[剰余の定理]の説明に移ります.

[因数定理]は,以下の当たり前な[事実1]の逆なのでした.

[事実1] 多項式$f(x)$と定数$a$を考える.$f(x)$が$x-a$を因数にもつとき,$f(a)=0$となる.

言い換えれば,多項式$g(x)$を用いて

\begin{align*} f(x)=(x-a)g(x) \end{align*}

と表せるとき,$f(a)=0$となる.

この[事実1]と同様に,以下の[事実2]も当たり前です.

[事実2] 多項式$f(x)$と定数$a$, $c$を考える.$f(x)$を$x-a$で割った余りが$c$であるとき,$f(a)=c$となる.

言い換えれば,多項式$g(x)$を用いて

\begin{align*} f(x)=(x-a)g(x)+c \end{align*}

と表せるとき,$f(a)=c$となる.

[事実1]と[事実2]の違いは,余りが0なのか$c$なのかという点ですね.

そして,[因数定理]が[事実1]の逆であったように,[剰余の定理]は[事実2]の逆です.

[剰余の定理] 多項式$f(x)$と定数$a$, $c$を考える.$f(a)=c$となるとき,$f(x)$を$x-a$で割った余りは$c$である.

[事実1]と[因数定理]の関係と,[事実2]と[剰余の定理]の関係が同じであることが納得できるでしょうか?

さて,1次式で割ったときの余りを求める問題では「剰余の定理」は非常に強力な武器になります.

実際に多項式の割り算をして余りを求めるのと,[剰余の定理]を用いてあまりを求めるのとでは天と地ほどのスピードの差が出ます.

「多項式$f(x)$が$f(x)=(x-a)g(x)+c$と表せるなら,$c=f(a)$が成り立つ」は当たり前である.一方,この逆の「多項式$f(x)$が$f(a)=c$を満たすなら,$f(x)=(x-a)g(x)+c$と表せる」が[剰余の定理]である.

剰余の定理の例1

$x^3-6x^2+4x+3$を$x-5$で割った余りは,[剰余の定理]より,

\begin{align*} 5^3-6\cdot5^2+4\cdot5+3=125-150+20+3=-2 \end{align*}

と分かります.

[剰余の定理]を使わなくても,具体的に$x^3-6x^2-4x+3$を$x-5$で割って

\begin{align*} x^3-6x^2+4x+3=(x-5)(x^2-x-1)-2 \end{align*}

となることから,余りが$-2$であることは分かりますが,余りを求めるだけなら代入してすぐに求まる[剰余の定理]がいかに強力か分かりますね.

剰余の定理の例2

$3x^4-4x^2-2x+7$を$x-2$で割った余りは,[剰余の定理]より,

\begin{align*} 3\cdot2^4-4\cdot2^2-2\cdot2+7=48-16-4+7=35 \end{align*}

である.

多項式を1次式で割ったときの余りを求める際には,[剰余の定理]が非常に強力である.

剰余の定理の証明

[剰余の定理]は[因数定理]を用いれば,簡単に証明できます.

[剰余の定理(再掲)] 多項式$f(x)$と定数$a$, $c$に対して$f(a)=c$となるとき,$f(x)$を$x-a$で割った余りは$c$である.

[証明]

$F(x)=f(x)-f(a)$とする.

$F(a)=f(a)-f(a)=0$だから,[因数定理]より$F(x)$は$x-a$を因数にもつ.よって,$F(x)=(x-a)g(x)$が成り立つ.左辺は$f(x)-f(a)$だから,$f(a)$を移項して

\begin{align*} f(x)-f(a)=(x-a)g(x) \end{align*}

となるから,$f(a)$を移項して$f(x)=(x-a)g(x)+f(a)$を得る.

すなわち,$f(x)$を$x-a$で割った余りは$f(a)$である.

[証明終]

要は,[剰余の定理]は$f(x)-f(a)$に[因数定理]を適用した場合に相当するというわけですね.

因数定理と剰余の定理の関係

この記事では

  • 先に[因数定理]を証明し,[因数定理]を用いて[剰余の定理]を証明しましたが,
  • [剰余の定理]を先に証明し,[剰余の定理]を用いて[因数定理]を証明することも

できます.

おまけとして,[剰余の定理]→[因数定理]の順の証明を書いて終わります.

[剰余の定理(再掲)] 多項式$f(x)$と定数$a$, $c$に対して$f(a)=c$となるとき,$f(x)$を$x-a$で割った余りは$c$である.

[証明]

$f(x)$を$x-a$で割った商を$g(x)$とし,余りを$b$とする.このとき,

\begin{align*} f(x)=(x-a)g(x)+b \end{align*}

だから,

\begin{align*} c=f(a)=(a-a)g(a)+b=b \end{align*}

となって,$c=f(a)$を得る.よって,$f(x)=(x-a)g(x)+f(a)$が成り立つ.すなわち,$f(x)$を$x-a$で割った余りは$f(a)$である.

[証明終]

次に,[剰余の定理]を用いて[因数定理]を証明します.

[因数定理(再掲)] 多項式$f(x)$と定数$a$に対して$f(a)=0$となるとき,$f(x)$は$x-a$を因数にもつ.

[証明]

[剰余の定理]から,$f(x)$を$x-a$で割った余りは$f(a)$なので,$f(a)=0$のときは$f(x)$を$x-a$で割った余りは0となる.

すなわち,$f(a)=0$のときは$f(x)$は$x-a$を因数にもつ.

[証明終]

要は,[因数定理]は[剰余の定理]の余りが0の場合に相当するというわけですね.

このことが分かっていれば,[剰余の定理][因数定理]が密接に関わっていることが納得できますね.

[剰余の定理]は$f(x)-f(a)$に[因数定理]を適用した場合に相当する.一方,[因数定理][剰余の定理]の余りが0の場合に相当する.

すなわち,[因数定理][剰余の定理]は同じことを述べている.

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