多項式1
「展開」「因数分解」の基本の4公式

多項式
多項式

算数と数学との大きな違いの1つに,文字式を使うか使わないかということが挙げられます.

中学1年生の数学では最初に文字の計算を学び始め,特定の数字ではなく「文字」で計算することにより多くのことが分かるようになるのでした.

そのため,数学を学ぶにあたって文字の計算がきちんとできることは必須になるわけですが,その中でも展開因数分解は数学のいたるところに現れるので,確実にできるようになっておく必要があります.

この記事では,中学の復習として

  • 展開と因数分解
  • 4つの基本公式
  • 図形から直感的に公式を理解する考え方

を順に復習します.

展開と因数分解

まずは展開と因数分解がどのようなものだったかを復習しましょう.

展開

例えば,$(x+2)(x-4)$は

   \begin{align*} (x+2)(x-4) =&x(x-4)+2(x-4) \\=&(x^2-4x)+(2x-8) =x^2-2x-8 \end{align*}

と計算することができますね.このように,多項式の積などの括弧$(\quad)$を外す計算を展開というのでした.

展開については次の公式が基本的なのでしたね.

実数$x$, $a$, $b$に対して,次の等式が成り立つ.

   \begin{align*} (x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab \end{align*}

これは上の例のように単純に左辺を展開して$x$でまとめれば等しいことが分かりますね.

次の式を展開せよ.

  • $(x+2)(x+3)$
  • $(x+2)^2$
  • $(x-3)^2$
  • $(x+5)(x-5)$

(1) $a=2$, $b=3$の場合なので

   \begin{align*} (x+2)(x+3) =&x^2+(2+3)x+2\times3 \\=&x^2+5x+6. \end{align*}

(2) $a=2$, $b=2$の場合なので

   \begin{align*} \\(x+2)^2 =&(x+2)(x+2) \\=&x^2+(2+2)x+2\times2 \\=&x^2+4x+4. \end{align*}

(3) $a=-3$, $b=-3$の場合なので

   \begin{align*} \\(x-3)^2 =&(x-3)(x-3) \\=&x^2+(-3-3)x+(-3)\times(-3) \\=&x^2-6x+9. \end{align*}

(4) $a=5$, $b=-5$の場合なので

   \begin{align*} \\(x+5)(x-5) =&x^2+\{5+(-5)\}x+5\times(-5) \\=&x^2-25. \end{align*}

因数分解

展開とは逆に多項式を積の形に書き直すことを因数分解というのでした.

展開では分配法則でただ計算するだけなのでそれほど難しいことではありませんが,$x^2-2x-8$を因数分解して$(x+2)(x-4)$に戻すことは少し難しいのでした.

そこで,先ほどの展開公式を因数分解公式として左辺と右辺を入れ替えて眺めてみましょう.

実数$x$, $a$, $b$に対して,次の等式が成り立つ.

   \begin{align*} x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) \end{align*}

つまり

  • $ab$が定数項
  • $a+b$が1次の係数

と表せるような$a$, $b$を見つけてくれば,$(x+a)(x+b)$と因数分解できるわけですね.

展開公式からすぐに導出できますが,標語的にも「積が定数,和が1次」と当たり前にしておきましょう.

次の多項式を因数分解せよ.

  • $x^2-x-20$
  • $x^2+18x+81$
  • $x^2-12x+36$
  • $x^2-49$

(1) $ab=-20$, $a+b=-1$となる$a$, $b$として,$a=-5$, $b=4$が見つかるので

   \begin{align*} x^2-x-20=(x-5)(x+4). \end{align*}

(2) $ab=81$, $a+b=18$となる$a$, $b$として,$a=9$, $b=9$が見つかるので

   \begin{align*} x^2+18x+81=(x+9)^2. \end{align*}

(3) $ab=36$, $a+b=-12$となる$a$, $b$として,$a=-6$, $b=-6$が見つかるので

   \begin{align*} x^2-12x+36=(x-6)^2. \end{align*}

(4) $ab=-49$, $a+b=0$となる$a$, $b$として,$a=7$, $b=-7$が見つかるので

   \begin{align*} x^2-49=(x+7)(x-7). \end{align*}

これらの問題は$a$, $b$が簡単に見つかる問題を考えましたが,一般には簡単にいかないことも多いです.

例えば,$x^2-2x-2$を因数分解すると

   \begin{align*} x^2-2x-2=(x-1+\sqrt{3})(x-1-\sqrt{3}) \end{align*}

となりますが,$ab=-2$, $a+b=-2$から$a=-1+\sqrt{3}$, $b=-1-\sqrt{3}$を見つけるのは難しいですね.

このような場合にどうすれば因数分解できるかについては,のちの記事で説明しています.

展開と因数分解の4つの基本公式

上では基本公式

   \begin{align*} x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) \end{align*}

のみを考えました.

この公式は万能なのですが,$(x+a)^2$, $(x-a)^2$, $(x+a)(x-a)$の形もよく出てくるので,次の4つで併せて当たり前にしておきましょう.

実数$x$, $a$, $b$に対して,次の等式が成り立つ.

   \begin{align*} &x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b), \\&x^2+2ax+a^2=(x+a)^2, \\&x^2-2ax+a^2=(x-a)^2, \\&x^2-a^2=(x+a)(x-a) \end{align*}

2つ目〜4つ目の公式はいずれも1つ目の公式の特別な場合で,右辺を展開すれば同様に証明できますね.

これらの公式から先ほどの因数分解の問題の2つ目〜4つ目をもう一度解いておきましょう.

[再掲] 次の多項式を因数分解せよ.

  • $x^2+18x+81$
  • $x^2-12x+36$
  • $x^2-49$

(2) 公式$x^2+2ax+a^2=(x+a)^2$で$a=9$だから,

   \begin{align*} x^2+18x+81=(x+9)^2 \end{align*}

(3) 公式$x^2-2ax+a^2=(x-a)^2$で$a=-6$だから,

   \begin{align*} x^2-12x+36=(x-6)^2 \end{align*}

(4) 公式$x^2-a^2=(x+a)(x-a)$で$a=7$だから,

   \begin{align*} x^2-49=(x+7)(x-7) \end{align*}

慣れてくればパッと答えを出せるようになります.

展開と因数分解の図形的意味

$x>0$, $a$, $b>0$なら,次の図から$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$は直感的に理解することもできます.

Rendered by QuickLaTeX.com

この図で,全体の面積は

  • 分けられた4つの部分の面積の和で考えると,長方形の面積は$x^{2}+ax+bx+ab=x^{2}+(a+b)x+ab$
  • 縦の長さが$x+a$,横の長さが$x+b$の長方形の面積は$(x+a)(x+b)$

と2通りで考えることができます.

これらは,どちらも同じ長方形の面積を表しているので,

   \begin{align*} x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) \end{align*}

が従いますね.他の3つの公式についても同様に考えられるので,是非紙に描いて考えてみてください.

たすきがけ因数分解の公式

この記事で説明した公式

   \begin{align*} x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) \end{align*}

は$x^2$の係数が$1$の場合にしか使えません.そこで,$x^2$の係数が$1$でない

  • $2x^2+7x+3$
  • $6x^2+7x-3$

を因数分解するには新しい公式が必要となります.

そこで,次の記事では$x^2$の係数が$1$出ない場合にも使えるたすきがけ因数分解の公式を具体例から使い方とともに説明します.

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