中学校では「方程式$y=ax+b$は$xy$平面上の直線を表す」と学びます.
実際,$xy$平面上の傾き$a$,切片$b$の直線は$y=ax+b$となります.
しかし,実は$y=ax+b$が$xy$平面上の全ての直線を表せるわけではないことは知っておく必要があります.つまり,$y=ax+b$の形の方程式では表せない$xy$平面上の直線が存在します.
高校数学では,$y=ax+b$では表せない$xy$平面上の直線も表すことができる一般の直線の方程式を学びます.
直線の方程式は「図形と方程式」の分野の基本ですから,確実に押さえてください.
一連の記事はこちら
【図形と方程式1|座標の超基本「内分点」と「外分点」の計算】
【図形と方程式2|「方程式が表すグラフ」ってそもそも何?】←今の記事
【図形と方程式3|直線の「傾き」の考え方を理解しよう!】
【図形と方程式4|一般の直線の方程式と[平行・垂直条件]】
【図形と方程式5|[2点間の距離]と[点と直線の距離]】
【図形と方程式6|2種類の[円の方程式]をマスターしよう】
【図形と方程式7|円と直線の共有点の個数の2つの考え方】
【図形と方程式8|円の接線の方程式は一発で求めよう!】
【図形と方程式9|2円の共有点を通る円と直線はどう求める?】
方程式の表す図形
「直線の方程式」を学ぶ前に,そもそも「方程式の表す図形(グラフ)」というものが何かを知っておく必要があります.
方程式と恒等式
未知数を含んだ等式には
- 方程式
- 恒等式
の2種類があります.
任意の未知数に対して成り立つ等式を恒等式といい,特定の未知数に対してのみ成り立つ等式を方程式という.
具体的には,
- $(x+1)(x-2)=x^2-x-2$
- $x^2+xy+y^2+2=(x+y)^2-xy+2$
は任意の$x$, $y$に対して成り立つので恒等式で,
- $x^2-2x-3=0$
- $x^2+y^2=1$
は特定の$x$, $y$に対してのみ成り立つので方程式です.
「方程式」といえば,1次方程式$2x+6=0$や2次方程式$x^2+5x+6=0$のような未知数が1つしか含まれていない等式のことをイメージしがちですが,実は$y=2x+1$や$x^3+y^2=5$といった未知数が2つ含まれている等式も方程式と呼びます.
さて,「$x$と$y$の方程式の表す図形」は次のように定義されます.
$x$と$y$の方程式$f(x,y)=0$に対して,$f(a,b)=0$を満たす点$(a,b)$の全体からできる$xy$平面上の図形を,方程式$f(x,y)=0$の表す図形(グラフ)という.
逆に,$xy$平面上の図形$C$があり,この図形$C$を表す$x$と$y$の方程式を図形$C$の方程式という.
例1
ここで,$x$と$y$の方程式$y=2x+1$について考えましょう.たとえば,
- 点$(0,1)$
- 点$(1,3)$
- 点$(\pi,2\pi+1)$
などは方程式$y=2x+1$を満たすので,これらは方程式$y=2x+1$の表す図形上の点です.一方,
- 点$(0,2)$
- 点$(0,100)$
- 点$(\pi,5)$
などは方程式$y=2x+1$を満たさないので,これらは方程式$y=2x+1$の表す図形上の点です.
このように,方程式$y=2x+1$を満たす点$(x,y)$を$xy$を図示すると,下図のようになります.
方程式$y=4x+3$を満たす点,満たさない点はともに無限にありますが,全ての$(x,y)$で方程式$y=2x+1$を満たすか否かを確認していき,方程式$y=2x+1$をみたす$(x,y)=(a,b)$全部からできる図形を「方程式$y=2x+1$の表す図形(グラフ)」というわけですね.
例2
方程式$x^3+y^2=5$を考えましょう.
例1と同じく,全ての$(x,y)$で方程式$x^3+y^2=5$をみたすか否かを確認していき,方程式$x^3+y^2=5$をみたす点全部からできる図形を「方程式$x^3+y^2=5$の表す図形」といいます.
よって,方程式$x^3+y^2=5$の表す図形がどんな形か分からなくても,点$(1,-2)$や点$(-2,1)$がこの図形上にあるかどうかということは,実際に代入してみれば分かります.
方程式$x^3+y^2=5$の左辺に$(x,y)=(1,-2)$を代入すると,
だから,方程式$x^3+y^2=5$を満たし,点$(1,-2)$は方程式$x^3+y^2=5$の表す図形上の点であることが分かります.
一方,方程式$x^3+y^2=5$の左辺に$(x,y)=(-2,1)$を代入すると,
となって,方程式$x^3+y^2=5$を満たし,点$(-2,1)$は方程式$x^3+y^2=5$の表す図形上の点ではないことが分かります.
グラフの平行移動
図形と方程式の分野では,$xy$平面上のグラフを平行移動させることはよくあります.
平行移動
$xy$平面上のグラフの平行移動について,次が成り立ちます.
[グラフの平行移動] $xy$平面上の$f(x,y)=0$のグラフ$\ell$を$x$軸方向,$y$軸方向にちょうど$a$, $b$だけ平行移動させたグラフ$m$の方程式は$f(x-a,y-b)=0$である.
点$(x,y)$をグラフ$\ell$上の点とする.このとき,$f(x,y)=0$が成り立つ.
点$(X,Y)=(x+a,y+b)$はグラフ$m$上の点なので,$f(x,y)=0$に代入して,
が成り立つ.すなわち,グラフ$m$上の点$(x,y)$は$f(x-a,y-b)=0$を満たす.
具体例
それでは,具体的にグラフの平行移動をみましょう.
- 放物線$y=2x^2$を$x$軸方向,$y$軸方向にそれぞれちょうど2,3だけ平行移動させたグラフの方程式は
- 放物線$y=-5x^2$を$x$軸方向,$y$軸方向にそれぞれちょうど2,$-3$だけ平行移動させたグラフの方程式は
- 曲線$x^3-x^2y+2y=3x$も$x$軸方向,$y$軸方向にちょうど$-1$,2だけ平行移動させたグラフの方程式は
となりますね.
【次の記事:図形と方程式3|直線の「傾き」の考え方を理解しよう!】
上では方程式を与え,その方程式が$xy$平面上のどのような直線を表すかを考えました.次の記事では,$xy$平面上の直線を与え,その直線を表す方程式の求め方を考えます.