中学校で学ぶように,$y=2x+1$や$y=-x+3$のような$x$, $y$の等式は$xy$平面上の直線を表しますね.
このように,一般に$x$, $y$の等式は$xy$平面上のグラフを表しますが,そもそもグラフとはなんでしょうか?
この記事では,
- 方程式が表すグラフ
- グラフの平行移動
を順に説明します.
「図形と方程式」の一連の記事
方程式が表すグラフ
方程式が表すグラフが何かを考えるために,方程式がそもそもなんなのかをきちんと確認しておきましょう.
方程式と恒等式
文字を含んだ等式には
- 方程式
- 恒等式
の2種類があります.
文字$x$に関する等式について,
- 特定の$x$に対してのみ成り立つ等式を方程式
- 任意の$x$に対して成り立つ等式を恒等式
という.
文字が$x$, $y$など複数になった場合も同様に$x$, $y$の方程式,$x$, $y$の恒等式という.
具体的には,実数$x$, $y$に対して,
- $x^2-2x-3=0$はたとえば$x=0$では成り立たないので方程式
- $(x+1)(x-2)=x^2-x-2$は任意の$x$で成り立つので恒等式
- $x^2+y^2=1$はたとえば$(x,y)=(0,0)$では成り立たないので方程式
- $x^2+xy+y^2=(x+y)^2-xy$は任意の$(x,y)$で成り立つので恒等式
というわけですね.
方程式といえば1次方程式$2x+6=0$や2次方程式$x^2+5x+6=0$のような未知数が1つしか含まれていない等式のことをイメージしがちですが,実は$y=2x+1$や$x^3+y^2=5$といった未知数が2つ含まれている等式も方程式と呼ぶことに注意しましょう.
方程式の解
次に,方程式の解について確認しておきましょう.
文字$x$に関する方程式$f(x)=0$について,$x$を方程式の未知数という.
また,等号$f(a)=0$を満たす$a$をその方程式$f(x)=0$の解といい,方程式の解を全て見つけることを方程式を解くという.
未知数が$x$, $y$など複数になった場合も同様に$x$, $y$を未知数といい,等式を満たす$x$, $y$を解という.
要するに,方程式$f(x)=0$の未知数$x$に代入して等号が成り立つ$a$を解というだけのことですね.
たとえば,「2次方程式$x^2-2x-3=0$を解け」と言われたときは$(x-3)(x+1)=0$と左辺を因数分解して
- $x=3,-1$のときは$(x-3)(x+1)=0$を満たす
- $x\neq3,-1$のときは$(x-3)(x+1)=0$を満たさない
ということから,$x=3,-1$と答えるわけですね.
方程式の解とはただ「その等式を満たすもの」であって,因数分解などは解を見つけるための手段でしかないことに注意してください.
これは未知数が複数になっても同じです.たとえば,方程式$x^2+y^2=1$を考えたとき
- $(x,y)=(1,0)$は$x^2+y^2=1$を満たすから解
- $(x,y)=\bra{-\dfrac{\sqrt{3}}{2},\dfrac{1}{2}}$は$x^2+y^2=1$を満たすから解
- $(x,y)=(1,-2)$は$x^2+y^2=1$を満たさないから解でない
というわけですね.
やはりあくまで方程式を満たせば解で,満たさなければ解でないというだけのことですね.
方程式が表すグラフ
それでは$x$,$y$の方程式が表すグラフについて説明しましょう.
$x$, $y$の方程式$f(x,y)=0$の解を表す$xy$平面上の点を全てとってできる図を方程式$f(x,y)$が表すグラフという.
具体例をみていきましょう.
例1
$x$, $y$の方程式$y=\dfrac{1}{2}x+1$に対して,たとえば
- $(x,y)=(0,1)$
- $(x,y)=(2,2)$
- $(x,y)=\bra{-\pi,-\dfrac{1}{2}\pi+1}$
は全て代入すれば方程式の等号を満たすので解です.
このように,方程式$y=\dfrac{1}{2}x+1$を満たす$(x,y)$を全て$xy$平面上に図示したものが方程式$y=\dfrac{1}{2}x+1$のグラフで,中学で学ぶように直線になりますね.
このグラフからも分かるように,方程式$y=\dfrac{1}{2}x+1$の解は無数にあることが分かります.
そのため,解を挙げていくとキリはありませんが,このようにグラフに図示すれば解を「視覚的に」「全て」表すことができるのでグラフは便利なわけですね.
例2
$x$, $y$の方程式$x^2+y^2=1$に対して,たとえば
- $(x,y)=(1,0)$
- $(x,y)=\bra{-\dfrac{\sqrt{3}}{2},\dfrac{1}{2}}$
- $(x,y)=\bra{\dfrac{\sqrt{2}}{2},-\dfrac{\sqrt{2}}{2}}$
- $(x,y)=(0,-1)$
は全て代入すれば方程式の等号を満たすので解です(実際に代入して確かめてみてください).
このように,方程式$x^2+y^2=1$を満たす$(x,y)$を全て$xy$平面上に図示したものが方程式$x^2+y^2=1$のグラフで,実は下図のように円になります.
実は一般に$a$, $b$は実数,$r>0$に対して,
の形をした$x$と$y$の方程式の$xy$平面上のグラフは
- 中心$(a,b)$
- 半径$r$
の円となります.この例では$(a,b)=(0,0)$, $r=1$なので,上図のようになるわけですね.
円のグラフについて詳しくはのちの記事で説明します.

2種類の円の方程式をマスターしよう
グラフの平行移動
$x,y$の方程式の$xy$平面上のグラフを平行移動させてできるグラフを表す方程式がどうなるかを考えましょう.
$xy$平面上の$f(x,y)=0$のグラフを$x$軸方向,$y$軸方向にちょうど$a$, $b$だけ平行移動させたグラフの方程式は$f(x-a,y-b)=0$である.
これを示すには,
- 点$(p,q)$が方程式$f(x,y)=0$のグラフ上の点である
- 点$(p+a,q+b)$が方程式$f(x-a,y-b)=0$のグラフ上の点である
が同値であることを示せば良い.
グラフの定義より
- (1)と$f(p,q)=0$を満たすことは同値
- (2)と$f((p+a)-a,(q+b)-b)=0$を満たすことは同値
であり,
だから$(1)\iff(2)$は同値である.
要するに,$f(x,y)=0$の解が$(x,y)=(p,q)$であれば$(x,y)=(p+a,q+b)$は$f(x-a,y-b)=0$の解で,この逆も成り立つので上のように平行移動が成り立つわけですね.
たとえば,放物線$y=x^2$のグラフを
- $x$軸方向にちょうど$+2$
- $y$軸方向にちょうど$+1$
平行移動させたグラフの方程式は$y-1=(x-2)^2$ですね.
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