前回の記事までで,$xy$平面上の円と直線について説明してきました.
この記事では,$xy$平面上の円と直線の関係について説明します.
円と直線の位置関係は,
- 直線と円がちょうど2つ共有点をもつ
- 直線と円がちょうど1つ共有点をもつ(接する)
- 直線と円が共有点をもたない
の3種類あります.
直線の方程式と円の方程式が与えられたとき,これら1~3のいずれになるのかを考える方法には
- 判別式
- 点と直線の距離
の2種類あり,これらはそれぞれ得意な場合が異なります.
この記事では,この2種類の考え方とそれぞれの得意な場合を説明します.
一連の記事はこちら
【図形と方程式1|座標の超基本「内分点」と「外分点」の計算】
【図形と方程式2|「方程式が表すグラフ」ってそもそも何?】
【図形と方程式3|直線の「傾き」の考え方を理解しよう!】
【図形と方程式4|一般の直線の方程式と[平行・垂直条件]】
【図形と方程式5|[2点間の距離]と[点と直線の距離]】
【図形と方程式6|2種類の[円の方程式]をマスターしよう】
【図形と方程式7|[円と直線の共有点]の2つの考え方とコツ】←今の記事
【図形と方程式8|円の接線の方程式は一発で求めよう!】
【図形と方程式9|2円の共有点を通る円と直線はどう求める?】
判別式による判定法
まずは判別式の復習をしておきましょう.
判別式
2次方程式の実数解の個数は0個,1個,2個のいずれかで,これのいずれになるのかは以下のように判定できるのでした.
2次方程式$ax^2+bx+c=0\dots(*)$に対して,$D=b^2-4ac$とすると,次が成り立つ.
- $D>0$と方程式$(*)$が実数解をちょうど2個もつことは同値
- $D=0$と方程式$(*)$が実数解をちょうど1個もつことは同値
- $D<0$と方程式$(*)$が実数解をもたないことは同値
この$b^2-4ac$を2次方程式$ax^2+bx+c=0$ (2次式$ax^2+bx+c$)の判別式というのでした.
なお,判別式については以下の記事を参照してください.
【多項式の基本5|2次方程式の判別式と,2次方程式の虚数解】
2次方程式の実数解の個数は0個,1個,2個のいずれかであり,この2次方程式の[実数解の個数]が簡単に求められるものとして[判別式]があります.また,2次方程式が実数解をもたない場合にも虚数解を考えることができます.
円と直線の位置関係1
$xy$平面上の
- 原点中心,半径$r$の円$C$の方程式$x^2+y^2=r^2$
- 直線$\ell$の方程式$y=ax+b$
を考えます.
円$C$と直線$\ell$の共有点$(x,y)$は$x^2+y^2=r^2$と$y=ax+b$の両方を同時にみたすので,共有点は連立方程式
を解くことで得られます.$y$を消去すると,$x$の2次方程式
ができます.この2次方程式の解を$y=ax+b$に代入すると,$y$座標が求まり,またこの点は$x^2+y^2=r^2$をみたすことも分かります.
$x$の2次方程式の解の個数は判別式を用いて考えられることに注意すると,次が成り立つことが分かります.
[円と直線の位置関係1] 円$C:x^2+y^2=r^2$と,直線$\ell:y=ax+b$について,この2式から$y$を消去してできる2次方程式の判別式を$D$とする.
このとき,次が成り立つ.
- 直線と円がちょうど2つ共有点をもつことと,$D>0$は同値
- 直線と円がちょうど1つ共有点をもつ(接する)ことと,$D=0$は同値
- 直線と円が共有点をもたないことと,$D<0$は同値
実際に共有点の座標を求めたい場合には,$y$を消去してできる2次方程式を解く必要があります.
具体例
それでは具体例を見ていきましょう.
$xy$平面上の次の円と直線の共有点は何個存在するか.また,共有点が存在するとき,その共有点を全て求めよ.
- 円$x^2+y^2=5$,直線$y=x+1$
- 円$x^2+y^2=2$,直線$y=x-2$
- 円$x^2+y^2=3$と,直線$y=x+5$
(1) 共有点$(x,y)$は$x^2+y^2=5$と$y=x+1$の両方を同時にみたすから,連立方程式
の解が共有点である.$y$を消去して,
である.変形すると$(x+2)(x-1)=0$なので,共有点の$x$座標は$x=1,-2$である.
$x=1,-2$のそれぞれに対応する$y$座標は$x=2,-1$だから,共有点は$(1,2)$, $(-2,-1)$の2個存在する.
(2) 共有点$(x,y)$は$x^2+y^2=2$と$y=x-2$の両方を同時にみたすから,連立方程式
の解が共有点である.$y$を消去して,
である.変形すると$(x-1)^2=0$なので,共有点の$x$座標は$x=1$である.
$x=1$に対応する$y$座標は$-1$だから,共有点は$(1,-1)$の1個存在する.
(3) 共有点$(x,y)$は$x^2+y^2=3$と$y=x+5$の両方を同時にみたすから,連立方程式
の解が共有点である.$y$を消去して,
である.変形すると$x^2+5x+11=0$であり,この判別式は
なので,共有点は存在しない.
単に円と直線の共有点の個数を求めるだけであれば判別式を用いれば十分です.
しかし,実際に共有点の座標を求めるなら,具体的に方程式を解く必要があります.そのため,
- (1), (2)では方程式を解いており,
- (3)では判別式で共有点がないことを示している
というわけですね.
直線の方程式$y=ax+b$を円の方程式に代入して$y$を消去し,$x$の2次方程式の判別式を考えれば円と直線の共有点の個数が分かる.具体的に交点が必要な場合は,その2次方程式を解けば良い.
点と直線の距離による判定法
さて,いま考えた判別式による判定法では,円の方程式と直線の方程式から文字を消去して計算する必要があったので,
- 円が原点中心でなかったり
- 直線が$y=$の形でなかったり
すると,計算が面倒になりがちです.
その場合には,点と直線の距離を考えることで,共有点の個数を求めることができます.
円と直線の位置関係2
結論からいえば
- 円の半径$r$
- 円の中心と直線の距離$d$
を比べることで,以下のように共有点の個数が得られます.
[円と直線の位置関係2] 円$C$と直線$\ell$について,
- 円$C$の半径を$r$
- 円$C$の中心と直線$\ell$の距離を$d$
とすると次が成り立つ.
- 直線と円がちょうど2つ共有点をもつことと,$d<r$は同値
- 直線と円がちょうど1つ共有点をもつ(接する)ことと,$d=r$は同値
- 直線と円が共有点をもたないことと,$d>r$は同値
これらはそれぞれ以下の図を考えれば当たり前ですね.
具体例
[点と直線の距離]の公式を復習しておきましょう
[点と直線の距離] 点$(p,q)$と直線$ax+by+c=0$の距離$d$は次で表される:
なお,点と直線の距離について,詳しくは以下の記事を参照してください.
$xy$平面上の「距離」で大切なものは「2点間の距離」と「点と直線の距離」です.これらのうち,「点と直線の距離」は少し複雑な形をしているので,しっかり使えるように練習してください.
それでは具体例を見ていきましょう.
$xy$平面上の次の円と直線の共有点は何個存在するか.
- 円$x^2+(y+1)^2=1$,直線$x-3y+2=0$
- 円$(x-4)^2+(y+3)^2=25$,直線$3x-4y+1=0$
- 円$(x-1)^2+(y+3)^2=3$と,直線$x-2y+3=0$
(1) 円の半径は1で,円の中心$(0,-1)$と直線$x-3y+1=0$との距離は,
なので,直線と円の共有点はちょうど2個存在する.
(2) 円の半径は5で,円の中心$(4,-3)$と直線$3x-4y+1=0$との距離は,
なので,直線と円の共有点はちょうど1個存在する.
(3) 円の半径は$\sqrt{3}$で,円の中心$(1,-3)$と直線$x-2y+3=0$との距離は,
なので,直線と円の共有点は存在しない.
このように,[点と直線の距離]を考えれば,計算は2次方程式を考えるよりもずっと楽ですね.
ただし,この方法では共有点の座標を求めることができないのがこの方法の欠点で,共有点の座標を求めるなら基本的には2次方程式を解くことになります.
「円の半径$r$」と「円の中心と直線の距離$d$」の大小を比較することで,円と直線の共有点の個数が得られる.
【次の記事:図形と方程式8|円の接線の方程式は一発で求めよう!】
「円$C$の方程式」と「円周上の点A」が与えられれば,点Aにおける円$C$の接線の方程式は瞬時に求めることができます.次の記事では,円の接線の方程式の求め方を説明します.