【図形と方程式の基本6|円の方程式】の続きです.
前回までの記事で,直線の方程式と円の方程式について一通り書きました.
次は,直線と円の関係について考えます.円と直線の位置関係は,
- 直線と円がちょうど2つ共有点をもつ
- 直線と円がちょうど1つ共有点をもつ(接する)
- 直線と円が共有点をもたない
の3種類あり,直線の方程式と円の方程式が与えられたとき,上の1~3のどれになるのかを判別出来るようになっておかなければなりません.
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目次
判別式による判定法
原点中心,半径の円
の方程式
と,直線
の方程式
を考えます.
円と直線
の共有点
は
と
の両方を同時にみたすので,共有点は連立方程式
の解です.を消去すると,
の2次方程式
ができます.この2次方程式の解をに代入すると,
座標が求まり,またこの点は
をみたすことも分かります.
の2次方程式の解の個数は判別式を用いて考えられることに注意すると,次が成り立つことが分かります.
[円と直線の位置関係1] 円
:
と,直線
:
について,この2式から
を消去してできる2次方程式の判別式を
とする.
このとき,次が成り立つ.
- 直線と円がちょうど2つ共有点をもつことと,
は同値
- 直線と円がちょうど1つ共有点をもつ(接する)ことと,
は同値
- 直線と円が共有点をもたないことと,
は同値
なお,念のため書いておくと,2次方程式の判別式について,
- 2次方程式が実数解をちょうど2個もつことと,
は同値
- 2次方程式が実数解をちょうど1個もつことと,
は同値
- 2次方程式が実数解をもたないことと,
は同値
が成り立つことを用いました.
直線と円がちょうど2つ共有点をもつ例
平面上の円
と,直線
は共有点を何個持つか.また,共有点が存在するとき,その共有点をすべて求めよ.
共有点は
と
の両方を同時にみたすから,連立方程式
の解が共有点である.を消去して,
である.変形すると,なので,共有点の
座標は1,
である.それぞれに対応する
座標は,
に代入して2,
である.
よって,共有点は,
の2個存在する(この2点は円の方程式もみたす).
直線と円がちょうど1つ共有点をもつ(接する)例
平面上の円
と,直線
は共有点を何個持つか.また,共有点が存在するとき,その共有点をすべて求めよ.
共有点は
と
の両方を同時にみたすから,連立方程式
の解が共有点である.を消去して,
である.変形すると,なので,共有点の
座標は1である.対応する
座標は,
に代入して
である.
よって,共有点はの1個存在する(この点は円の方程式もみたす).
直線と円が共有点をもたない例
平面上の円
と,直線
は共有点を何個持つか.また,共有点が存在するとき,その共有点をすべて求めよ.
共有点は
と
の両方を同時にみたすから,連立方程式
の解が共有点である.を消去して,
である.変形すると,であり,判別式は
なので,共有点は存在しない.
点と直線の距離による判定法
念のため,点と直線の距離の公式を書いておきます.
[点と直線の距離] 点
と直線
(
,
の少なくとも一方は0でない)の距離
は次で表される:
【参考記事:図形と方程式の基本5|2点間の距離,点と直線の距離】
点中心,半径
の円
の方程式
と,直線
の方程式
を考えます.
図形的に考えると,円と直線の共有点は「円の中心と直線
の距離」と「円
の半径」の大小で判別することができます.
すなわち,次が成り立ちます.
[円と直線の位置関係2] 中心
の円と,直線
:
について,円
の中心と直線
の距離を
とすると次が成り立つ.
- 直線と円がちょうど2つ共有点をもつことと,
は同値
- 直線と円がちょうど1つ共有点をもつ(接する)ことと,
は同値
- 直線と円が共有点をもたないことと,
は同値
これら1~3はそれぞれ以下の図をイメージすれば簡単に分かることでしょう.
1のとき
2のとき
3のとき
直線と円がちょうど2つ共有点をもつ例
平面上の円
と,直線
は共有点を何個持つか.
円の半径は1で,円の中心と直線
との距離は,
なので,直線と円の共有点はちょうど2個存在する.
直線と円がちょうど1つ共有点をもつ(接する)例
平面上の円
と,直線
は共有点を何個持つか.
円の半径は5で,円の中心と直線
との距離は,
なので,直線と円の共有点はちょうど1個存在する.
直線と円が共有点をもたない例
平面上の円
と,直線
は共有点を何個持つか.
円の半径はで,円の中心
と直線
との距離は,
なので,直線と円の共有点は存在しない.
まとめ
円と直線の共有点の個数の判定法は
- 判別式による判定法
- 点と直線の距離による判定法
の2つがあるわけですが,「共有点の個数の判定法」という観点だけで見ると,2の「点と直線の距離による判定法」の方が汎用性もあり,計算量が圧倒的に少なく便利です.
2は円の中心が原点でなくても,また直線がの形でなくても使えることを考えても,「共有点の個数の判定法」としては1の「判別式による判定法」よりも優秀です.
しかし,1は共有点の個数を判定するだけでなく,そのあとに共有点の座標を求めることができることにメリットがあります.2を使えば共有点の個数を調べることは簡単にできますが,そのあとに共有点の座標を求めることには結びつきません.
このように,それぞれの判定法は便利に使える場面が異なるので,場合に応じて使い分けることが大切です.
【図形と方程式の基本8|円の接線の方程式】に続きます.